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〖第14話〗
しおりを挟む私は力なく笑いました。
「なら……何故待っていた?屋敷を守り、この庭の手入れをし、こんなに痩せ細って。どうして、どうしてだ!」
「………もう一度、もう一度で良かった。会いたくて……貴方に会いたかったんです。恋とは不可解な感情ですね。捨てられた身だとは、ずっと前から解っていました。惨めでも、無様だとも解っているんです。それでも、貴方に、会いたかった……。だから、最期のアップルパイです。なのに、いらないなんて……酷いひとです。貴方はいつでも酷い。いつの間にか私を抱いた後、微睡む私の頬を撫でながら必ず『愛している、エリアラ』と仰っていましたね……私は、貴方の中で私ですらなかった……私は確かに貴方を愛したのに」
「イル………」
ジルベルト様が泣きそうな顔をなさっていました。そんな顔をなさらないで下さい。卑怯です。全てを許して差し上げたくなります。それに、最期くらい『私』だけを見て欲しい。エリアラ様でもなく、昔の輝きの中の私でもなく、今の、ただの痩せ細ったみずぼらしい私を。
「さよなら、ジル……たとえ貴方が誰を愛していても、私は確かに貴方を愛していました……ああ、やっと言えた………」
ああ、思い残すことなく死ねる。視界が暗くなっていきます。私は確かにあの方を愛していました。憎しみなんかありません。蒼い薔薇の庭でのティータイム。罪の林檎に禁断の庭。
「私のお墓はこの蒼い薔薇の庭に」
「しっかりしろ、イル!」
「ジル……さよなら。ずっとあなたを──」
風が吹きます。ジルベルト様は私を抱きしめて下さいました。愛しい者を守るような、私を愛しているような。今更どうして?それほど私はは可哀相ですか?
「アップルパイ、二人で食べよう?君の淹れる紅茶は逸品だ。まだ伝えてないことがたくさんある。話したいことも、たくさんある!だから、イル、駄目だ!私が悪かった。お願いだ!」
『ジル……貴方を待っているだけで私は幸せだったんです』
私はそう言うと、木々がざわめきました。森から漏れる差し込む光。くらりと眩暈がして私はその場に倒れ混みました。
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