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・情報を集めよう(2)
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その後私たちは蜂蜜酒も買うと広場の隅にある石の段差に腰を下ろした。
椅子ではないけれど、ちょうどよく座れる高さだ。
「それで、どうやって探すんだ?」
「後継者のことね。とりあえず他の巡礼者や教会の修道女に、何か奇跡のようなことを起こせる女性がいないか聞いてみようと思ってる」
私はパンにかぶりついた。
温かいパンが柔らかくて美味しい。お肉も口に運んでみると塩気のきいた味付けだった。
「おいしい!」
「本当に。歩き疲れたので濃い味がたまらないですね」
カーラも微笑んでいる。
私はオリーブもつまんで口に入れた。
「ま、それしかないか」
ジュストは既に食べ終えていて、お代わりをどの露店で買おうかと考えているようだった。
私の考えに何か気になることがあるようだったけど、反対する気はないようだ。
私は鞄からオレンジを出すとジュストに渡して、蜂蜜酒のビンに口をつけた。
「蜂蜜酒、甘くて美味しいわ。これもメモしておかなきゃね」
手帳を開いて羽ペンも取り出す。
ハーブの味もする。何のハーブかはわからないけれど爽やかで美味しい。
「アリーチェ、あの方たちはどうでしょう? 話しやすそうな雰囲気の修道女に見えます」
カーラの言った方向には、ケープのフードをかぶった荷物を持った二人組の女性たちがいた。
靴が擦り切れてボロボロだったので、恐らく彼女たちも巡礼者だ。
「聞いてみましょう。南東から来てくれてたら都合が良いんだけど」
私とカーラは食べかけをジュストに預けて近寄っていった。
知らない人に自分から話しかけるのは緊張してしまう。私は何度も頭の中で繰り返し練習してきた言葉で挨拶をした。
続けて大聖堂に所属する修道女であること。聖女セレスの予言を受けてこの町に来たことと、話しかけた理由を伝える。
「――ですから、何かの不思議な奇跡ですとか、治癒の力を持つ女性等ご存じありませんでしょうか?」
すると、女性達はお互いに顔を見合わると少しこわばった顔で瞳を伏せた。
「申し訳ございません。私たちでは聖女セレス様のお耳に入れることができるような話は何もございません。どうぞご容赦ください」
「そのように堅苦しく考えずに、旅の途中であった気になることでもよろしいのですよ?」
カーラに優しく問われても、彼女たちは申し訳ございませんと繰り返すだけだった。
どうやら情報を持ってなさそうだと思った私は、ここでお礼を言って切り上げることにした。
立ち上がったついでにと、私は他にも露店の女性や町娘にも聞いてみたのだが、結果はさっきとほぼ変わらずだった。
何の収穫もなくとぼとぼと歩いて戻って来た私たちにジュストが首を傾げる。
「何かわかったのか?」
「何も。ちょっと疲れたから休憩するわ。カーラも休みましょう」
「なかなか聞き込みって難しいのですねぇ」
カーラも少し疲れた顔をして石の上に腰を下ろす。
私はすっかり冷めたパンをかじっているとジュストが立ち上がった。
「じゃあ次は俺が聞き込みして来る。ふたりはそこで大人しく待ってろよ」
「期待してるわ」
軽く手を振って見送る。
すると数分もしないうちに、片手に肉を串に刺した料理を持って戻ってきた。
「いやだ、ジュストったら聞き込みに行ったんじゃなかったの?」
「姉さんそのしかめっ面やめてくれよ。ちゃんと聞き込みしてきたからさ」
「こんな短時間で?」
「アリーチェにそんな疑いの目で見られると結構キツイんだが」
「あ、ごめんなさい」
私たちがあんなに苦労して何も聞けなかったのに、ジュストは聞き込みをした後に串焼きまで買っている。
会話力の差?
ジュストは精悍な顔にニヤリと笑みを浮かべた。
「この先の大通りに、怪我も治せる占いの女がいるらしい」
「ちゃんと聞いてきたのね。串焼きの店主から聞いたの?」
「ああ。何か女神様も驚くようなことあるかって聞いただけだが、悪くなさそうな手がかりだったから」
カーラが驚いているような、呆れているような複雑な表情をしている。
私もあんなに苦労したのに、とやるせないような気持になってしまった。
「治癒なのか占いなのか、両方なのかよくわからないわね。占いって聖女セレスと同じ系統かしら?」
「どっかで噂が混ざったのかもな。店主もよくわからないらしい」
大きな口を開けて肉にかぶり付くジュスト。
「占いと予言は違う気がしますが、どうでしょうね。でも聖女セレスももう30歳近くですし、後継者が現れてもおかしくありませんね」
私は目を見開いてしまった。
「え? 年齢が何か関係あるの? 探すのは私の後継者よ。予言や占いの力を持っている人がふたり聖女にいてもいいじゃない」
「それはそうですけど、普通に考えたらまだ20歳のアリーチェよりも、30歳近くの聖女を引退させるんじゃないかと穿った見方をしてしまっただけですわ」
黙った私にカーラは続ける。
「それに聖女セレスは孤児院出身でしょう。戻る場所がない彼女は聖女を引退しても修道院に住むでしょうけれど、アリーチェや聖女リーベラは引退したらもう呼び戻せません。特にリーベラ様は侯爵家ですから。後々のことを考えて、限界までアリーチェとリーベラ様の時間を使うのではないでしょうか?」
「そ、そんなこと考えた事なかったわ……。つまり、聖女の交代も教会の都合で操作されてるかもしれないってことよね?」
目をきょろきょろと動かして動揺を隠せない私に、カーラは瞳を柔らかく細めた。
「驚かせてしまいましたね、ごめんなさい。アリーチェももしかして私と同じように考えていたから、今回の旅に出たのかと思ったんです。さっきまでのはただの私の想像ですから忘れてくださいね?」
なんとなく微妙な沈黙がふたりの間に流れる。
すると黙って聞いていたジュストが咳払いをした。
「あー、あれこれ考えるのはその治癒の占い師に会ってみてからでいいんじゃないか? 聖女になるには能力の強さも関係あるんだろう? 肉屋の親父が言ってたのをそのまま信じるのもな」
「そうね」
「じゃ、今から行ってみるか」
私は残っていた蜂蜜酒を一気に煽ると、差し出されたジュストの手を掴んで立ち上がった。
椅子ではないけれど、ちょうどよく座れる高さだ。
「それで、どうやって探すんだ?」
「後継者のことね。とりあえず他の巡礼者や教会の修道女に、何か奇跡のようなことを起こせる女性がいないか聞いてみようと思ってる」
私はパンにかぶりついた。
温かいパンが柔らかくて美味しい。お肉も口に運んでみると塩気のきいた味付けだった。
「おいしい!」
「本当に。歩き疲れたので濃い味がたまらないですね」
カーラも微笑んでいる。
私はオリーブもつまんで口に入れた。
「ま、それしかないか」
ジュストは既に食べ終えていて、お代わりをどの露店で買おうかと考えているようだった。
私の考えに何か気になることがあるようだったけど、反対する気はないようだ。
私は鞄からオレンジを出すとジュストに渡して、蜂蜜酒のビンに口をつけた。
「蜂蜜酒、甘くて美味しいわ。これもメモしておかなきゃね」
手帳を開いて羽ペンも取り出す。
ハーブの味もする。何のハーブかはわからないけれど爽やかで美味しい。
「アリーチェ、あの方たちはどうでしょう? 話しやすそうな雰囲気の修道女に見えます」
カーラの言った方向には、ケープのフードをかぶった荷物を持った二人組の女性たちがいた。
靴が擦り切れてボロボロだったので、恐らく彼女たちも巡礼者だ。
「聞いてみましょう。南東から来てくれてたら都合が良いんだけど」
私とカーラは食べかけをジュストに預けて近寄っていった。
知らない人に自分から話しかけるのは緊張してしまう。私は何度も頭の中で繰り返し練習してきた言葉で挨拶をした。
続けて大聖堂に所属する修道女であること。聖女セレスの予言を受けてこの町に来たことと、話しかけた理由を伝える。
「――ですから、何かの不思議な奇跡ですとか、治癒の力を持つ女性等ご存じありませんでしょうか?」
すると、女性達はお互いに顔を見合わると少しこわばった顔で瞳を伏せた。
「申し訳ございません。私たちでは聖女セレス様のお耳に入れることができるような話は何もございません。どうぞご容赦ください」
「そのように堅苦しく考えずに、旅の途中であった気になることでもよろしいのですよ?」
カーラに優しく問われても、彼女たちは申し訳ございませんと繰り返すだけだった。
どうやら情報を持ってなさそうだと思った私は、ここでお礼を言って切り上げることにした。
立ち上がったついでにと、私は他にも露店の女性や町娘にも聞いてみたのだが、結果はさっきとほぼ変わらずだった。
何の収穫もなくとぼとぼと歩いて戻って来た私たちにジュストが首を傾げる。
「何かわかったのか?」
「何も。ちょっと疲れたから休憩するわ。カーラも休みましょう」
「なかなか聞き込みって難しいのですねぇ」
カーラも少し疲れた顔をして石の上に腰を下ろす。
私はすっかり冷めたパンをかじっているとジュストが立ち上がった。
「じゃあ次は俺が聞き込みして来る。ふたりはそこで大人しく待ってろよ」
「期待してるわ」
軽く手を振って見送る。
すると数分もしないうちに、片手に肉を串に刺した料理を持って戻ってきた。
「いやだ、ジュストったら聞き込みに行ったんじゃなかったの?」
「姉さんそのしかめっ面やめてくれよ。ちゃんと聞き込みしてきたからさ」
「こんな短時間で?」
「アリーチェにそんな疑いの目で見られると結構キツイんだが」
「あ、ごめんなさい」
私たちがあんなに苦労して何も聞けなかったのに、ジュストは聞き込みをした後に串焼きまで買っている。
会話力の差?
ジュストは精悍な顔にニヤリと笑みを浮かべた。
「この先の大通りに、怪我も治せる占いの女がいるらしい」
「ちゃんと聞いてきたのね。串焼きの店主から聞いたの?」
「ああ。何か女神様も驚くようなことあるかって聞いただけだが、悪くなさそうな手がかりだったから」
カーラが驚いているような、呆れているような複雑な表情をしている。
私もあんなに苦労したのに、とやるせないような気持になってしまった。
「治癒なのか占いなのか、両方なのかよくわからないわね。占いって聖女セレスと同じ系統かしら?」
「どっかで噂が混ざったのかもな。店主もよくわからないらしい」
大きな口を開けて肉にかぶり付くジュスト。
「占いと予言は違う気がしますが、どうでしょうね。でも聖女セレスももう30歳近くですし、後継者が現れてもおかしくありませんね」
私は目を見開いてしまった。
「え? 年齢が何か関係あるの? 探すのは私の後継者よ。予言や占いの力を持っている人がふたり聖女にいてもいいじゃない」
「それはそうですけど、普通に考えたらまだ20歳のアリーチェよりも、30歳近くの聖女を引退させるんじゃないかと穿った見方をしてしまっただけですわ」
黙った私にカーラは続ける。
「それに聖女セレスは孤児院出身でしょう。戻る場所がない彼女は聖女を引退しても修道院に住むでしょうけれど、アリーチェや聖女リーベラは引退したらもう呼び戻せません。特にリーベラ様は侯爵家ですから。後々のことを考えて、限界までアリーチェとリーベラ様の時間を使うのではないでしょうか?」
「そ、そんなこと考えた事なかったわ……。つまり、聖女の交代も教会の都合で操作されてるかもしれないってことよね?」
目をきょろきょろと動かして動揺を隠せない私に、カーラは瞳を柔らかく細めた。
「驚かせてしまいましたね、ごめんなさい。アリーチェももしかして私と同じように考えていたから、今回の旅に出たのかと思ったんです。さっきまでのはただの私の想像ですから忘れてくださいね?」
なんとなく微妙な沈黙がふたりの間に流れる。
すると黙って聞いていたジュストが咳払いをした。
「あー、あれこれ考えるのはその治癒の占い師に会ってみてからでいいんじゃないか? 聖女になるには能力の強さも関係あるんだろう? 肉屋の親父が言ってたのをそのまま信じるのもな」
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