Arachne ~君のために垂らす蜘蛛の糸~

文字の大きさ
19 / 54
Q2・差異の要因を説明せよ

不仲疑惑

しおりを挟む

   *

「あとは……海洋生物の観察をメインに活動なさっているチャンネル、『アクアビジョン』さんとのコラボの件ね」

 蜂須の言葉が耳に入り、俺は思わず振り返った。そんなコラボの予定があるのか。少し前から視聴を始め、面白いと感じていたチャンネルだった。ここで話すということは、公表してもいい段階まで進んでいるはず。どんなことをするのだろう。会議をずっと眺めているわけにもいかないので、視線は戻して耳だけを傾けた。

 マリアが手帳を捲る音を立てながら、端的に説明をする。

「生物をテーマにしたクイズ対決を企画してくださっています。実際にそれらを観察できる浜辺で、ビーチフラッグを取り合って解答権を得る形式のクイズです。司会はあちらのメンバーが務めてくださるので、アラクネからは最低二名が来てほしい、とのことですが……。誰が参加しますか?」

 浜辺のビーチフラッグ・クイズ対決か。夏だし映えるだろうな。両者とも健全なチャンネルだから、メンバーの水着姿を冷やかしたりはしないはず。誰が参加しても問題はなさそうだ。今までのコラボを踏まえると、社長の蜂須自ら参加する可能性も十分にある。案外とあの人は運動できるタイプだ。

「ビーチフラッグ形式ね……。解答方法は口頭かしら?」

 蜂須はマリアに尋ねる。彼女がコラボ企画の窓口になっているのだろう。マリアは手帳をまた捲ると、明瞭な声で答えた。

「いえ。ボードに書く形式、となっていますね。なので厳密には、旗ではなくボードを取り合う形でしょうか。砂浜を走って、最初にボードとペンを手にした者が解答権を得る、というような」

 足を取られがちな砂浜でどれだけ速く走れるか、というのがビーチフラッグ・クイズの醍醐味だ。『アクアビジョン』のメンバーは普段の採集活動で鍛えられているはずだから、いくらかハンデを付けてもらえるのではなかろうか。とはいえ、花房なんかは若いだけあってかなりすばしっこい。彼が参加するなら体力面での調整は必要ないかも。マリアも「何でもできる」と宣言するだけあってスポーツは得意だ。このふたりが参加するのが妥当か? でも、蜂須が走るところも見たい……。

 いや、俺が決めることじゃないんだから先走ってどうする。胸中で苦笑しつつ、話し合いの続きを聞いた。

「ボード形式ね……。それなら私は辞退するわ。ちなみに、口頭形式に変更はできないの?」
「以前に似たような企画をしたところ、風の音にかき消されて解答が聞こえづらかったそうです。なので、今回はボード形式になります」

 理由はよく分からないが、蜂須は参加できないようだった。意欲はある口ぶりだったので残念だ。さて、残りの四名のうち誰が選ばれることになるのだろう。ついつい作業の手を止めて聞き入ってしまう。

「スケジュールとしては、全員空いていますよね?」

 マリアが顔を見渡しながら確認する。メンバーはそれぞれ手帳やスマホを確かめつつ、肯定の返事をした。しかし蝶野だけはどこか渋い顔をしている。しばらく何か考えた後、彼にしては珍しく控えめに手を挙げた。

「僕はちょっとパスかも。暑いの苦手……」

 驚いた。人懐こい彼のことだから、コラボ企画に参加したがると思ったのに。しかし色白で日光に弱そうだし、今回は場所が悪かったか。真夏のビーチ。暑さに弱い人間にとっては地獄へ突撃するようなものだ。

 マリアも彼の事情を把握しているのか、素直に頷く。

「そうですね。蝶野さんはやめておきましょう」

 女性であるマリア自身も嫌がるかと思ったが、そこはプロだ。汗や日焼けから逃げるつもりはないらしい。残った候補――花房の方へ視線を向けると、彼の反対がないことを確かめてから結論を出した。

「参加するのは私と花房くん、ということでいいかしら?」
「うん」

 短く返事をして、花房は手帳に予定を書き込む。ふたりとも俊敏だし、映える絵面になりそうだ。話もひと区切りついたので、俺は姿勢を正して自分の仕事に戻ろうとした。気になっているチャンネルとのコラボとはいえ、すっかり真剣に聞き入ってしまった。手を止めていた時間を取り返さなければ。

 だが、キーボードに指を置いたとき、何とも言えない違和感が満ちてくる。
 何か大事なことを忘れているような……?

「あれっ、風見さんは候補に入っていないんですか?」

 浮かんだ言葉が口を突いて飛び出す。すぐ近くにいた蝶野が振り返り、連鎖的に幹部メンバー全員の視線がこちらへ向いた。申し訳ないし恥ずかしい。俺は小さく頭を下げつつ、しかし今さら取り消せないので質問を続けた。

「さっきの話、風見さんの名前があがらなかったのはどうしてかな、って。予定は皆さん空いているようですし、何か事情でもあるんですか?」

 まさか『アクアビジョン』側から出禁を食らっているわけではないだろう。風見はそんな人間ではない。蝶野のように暑さが苦手という理由なら、彼に便乗して辞退を宣言していたはずだ。まるで最初から存在しないかのように、誰も風見を候補に入れていない。生物といえば理科の管轄であるし、体格も恵まれている彼こそが向いていると俺は思うのだが……。

「そっか、まだ知らないのね」

 妙な沈黙があった後、マリアがぽつりと呟いた。以前も彼女にこんなことを言われたな、と思い返す。トウキ大に小論文形式の入学試験があったことを、俺は知らなかった。だから蝶野が抱える事情をひとつ知りそびれていた。風見に関しても、同じような現象が起きているのだろうか。

 「知らないのね」と言ったからには説明が始まるかと思ったが、誰も口火を切ろうとしない。当の風見ですら何だか言い出しづらそうにしている。そんな張りつめた空気の中、蝶野がメモ用紙をくしゃくしゃに丸め始めた。
会議に飽きてしまったのか。野球ボールくらいの大きさになったそれをどうするのかと眺めていれば、唐突にポンと放り投げる。

 円卓の向こう側。最も遠い位置にいる風見へと。

 急にどうしたんだ。空中に投げ出されたボールは放物線を描き、受け止めやすそうな角度で落ちてくる。コントロールはばっちりだ。ターゲットにされた風見はひょいと手を伸ばし、たやすくそれを掴み、呆れた顔で奇行を嗜める――と、思っていたのだが。

「あたっ」

 それは顔面にバウンドして落ちた。手を伸ばしてはいるが、明らかに間に合っていない。子供でも取れそうな角度とスピードだったのに。それでいて、自分では掴んだ気でいるから重症だ。空っぽの手元を見て首を捻り、まるで見当違いの場所に落ちてはいないかと探している。

 そうか、実はこの男――絶望的なまでに運動音痴なのだ。

「分かった?」

 蝶野がこちらを向いて尋ねる。ああ、分かった。あまりにも分かりやすい実演だった。風見はようやく机の下の紙ボールを見つけると、そのまま蝶野の席まで歩み寄って軽く小突いた。

「だからって実際にやって見せることないだろ」

 もちろん、運動音痴な者を笑う趣味なんてない。蝶野を含め、誰も忍び笑いすらしていない。あくまでこれは情報の共有であり、俺の疑問に対する回答だったのだ。
たかが円卓の向こう側から投げられたものすらキャッチできない人間が、ビーチフラッグ・クイズに参加できるはずがない。いや、どんな勝負事もルール次第でどうにでもなるが、いかんせん風見は「いかにもスポーツができそう」な見目である。

「今さら面倒なんだよ。実は自転車すら乗れない運動音痴だと開示するのは」
「自転車、乗れないんですか」
「もう車の運転はできるんだから問題ない」

 片手を広げて風見は話す。事情を知ってから見ると、その手首も腕も、運動をしない人間特有の肉付きであるように思えた。とはいえ、今まですっかりスポーツマンだと思っていたのだから、前提知識で見え方も変わってくるということだ。

「車は良いものだな。足の速さも運動神経も関係なく、周りと同じスピードで移動できる」
「でも風見さん、車線合流ができないので高速道路は走れませんよね」

 さらりとマリアが付け足す。皮肉でも批判でもない、単なる注釈としての言葉だった。アラクネの講師陣という時点で十分すごいのだから、今さら苦手なことがひとつふたつ判明しても気にならない。風見も、マリアも、俺にとっては等しく雲の上の存在だ。

「風見さんが運動苦手だなんて、意外ですね」

 メンバー全員が俺の方を向き、俺を加えて話をする姿勢になっている。この際だから訊きたいことは訊いてしまおうと考え、質問を重ねた。

「小学生の頃、放課後に友達と遊んだりしなかったんですか? 近所の公園に集まってサッカーをしたり……」

 自身の幼少期を思い返しながら話す。あの頃は毎日馬鹿みたいに走り回っていた。立ち止まったら死ぬんじゃないかというほどに。だが、そんな経験が少しでもあるなら、今の風見のような運動神経には育たない気がする。子供の頃にできていた基本的な動作は、たいてい大人になっても反射的にこなせるものだ。

 もしかして、ひどく病弱だったりして外で遊べない子供だったのか。だとすれば無神経な質問だったかもしれない。尋ねてから不安になったものの、風見の声色は変わらなかった。

「放課後に友達と遊ぶことなんて、ないだろ」

 不思議そうな顔をして、反対に質問を返される。

「クラスに仲の良い奴はいたが、基本的に学校の外で会うことなんてない。ばらばらの方向に帰っていくんだからな。休日に、自宅へ招待されて遊びに行くことはあったが……」

 まるでそれが当たり前であるかのような口ぶり。アニメなどで見る「放課後」の光景を、完全にフィクションだと思っているのだろうか。本来、通うべき小学校は校区で割り振られているため、クラスメイトはご近所さんばかりのはずだ。休んだ友達の家にプリントを届けるだとか、よくあることだと思っていたのだが。

 俺は、思いついた可能性のひとつを提示した。

「風見さん、小学校受験したんですか?」

 噂には聞いたことがある。世の中には、中学でも高校でも大学でもなく、小学校に入る時点で受験に挑むケースがあるということを。未就学児なんて右も左も分かっていない子供ばかりだが、その中から左右どころか上下前後まで分かるような優秀な者だけが、私立の小学校に入ることを認められるのだ。つまりエリート……と呼ぶのは気を悪くするかもしれない。かつて花房を傷つけてしまった経験を思い出し、俺は表現を変えた。

「私立の小学校って、県外からも児童が集まっていますもんね」
「そうだな。俺は比較的近い方だった。中には通学に二時間以上かけているクラスメイトもいたよ」

 そんなに時間がかかるなら全く遊べないじゃないか、という言葉を飲み込む。風見にとってはそれが当たり前だったのだ。電車の中、ランドセルを膝の上に置いて宿題をしている子供は稀に見かける。あの子たちの頭に放課後という概念はない。

「だから放課後に遊んだりはしないし、基本的に電車と車移動だから自転車なんて乗れなくても困らなかった。今でこそ、参加できるコラボが限られて多少不便だが、この歳になってスポーツを始めようとも思わないしな……」
「えー、自転車は乗れるようになろうよ。カッちゃんとサイクリングしたいな」

 蝶野が口を尖らせるが、風見は綺麗に無視をした。何度もせがまれ、その度に断っているのだろう。まあ、そうだよな。彼は運動を「やりたくてもできなかった」わけではなく、純粋に「興味すらない」のだ。今までの口ぶりからありありと伝わってくる。

「外で遊ばないのなら、どんなことをしていたんですか?」

 気になったので尋ねてみた。平日の放課後は勉強をしていたのだと思うが、全く娯楽がなかったわけでもないだろう。もし雁字搦めに束縛された幼少期を送っていたなら、現在の伸びやかな性格の風見はいなかったはずだ。

 俺の予想通り、彼は楽しげに過去を振り返りながら答える。充実した幼少期を過ごしたのだということが声色からも分かった。

「両親が運転の得意な人だったんで、休日はあちこちの博物館や科学館に連れて行ってもらったな。都内や隣県のハコモノはだいたい制覇したんじゃないか? 夏休みはイベントホールで科学の祭典があって、俺がブースを回っている間、親が交互に並んでワークショップの整理券を獲得してくれた記憶がある。ひとりっ子だからな、いま思えば、随分と贅沢に遊ばせてもらったものだ」

 そうか、彼にとってはこれが「遊び」なのか。良いですねぇ、と相槌を打ちながらも、俺は感性の違いを突き付けられていた。確かに博物館や科学館は面白い。科学雑誌の付録にあるチャチな実験道具にすら、目を輝かせていた頃もあった。しかしあくまで勉強は勉強。スポーツ観戦やテーマパークの方が魅力的、というのが普通の子供の常識だ。

「まあ、そんな子供時代を経て今の俺があるわけだ。だから俺も、今の子供たちに理科の魅力を伝えたくてこの仕事をしている。教科書に載っていることは難しそうに見えるかもしれないが、本当は夢中になれるほど面白いことなんだよ」

 それは、友達と走り回って遊ぶことよりも? 遊園地、スポーツ観戦、キャンプや海水浴。そんな遊びをひと通り経験した上で思っているのか? はなはだ怪しい。もしかすると風見の両親は、そういった場所へは彼を一切連れて行っていないのかもしれない。話題に上がりすらしないのだから――

 つい詮索してしまう悪い癖が出たとき、俺は強い視線を感じた。そちらの方を向いて確かめると、マリアが鋭い目つきで凝視をしている。俺ではなく、風見の姿を。彼の方は何も気付いておらず、マリアに理由を尋ねることもない。

(そういえば、不仲だって噂もあったっけ。このふたり……)

 もう四ヶ月も前のことだ。アラクネの動画から削除されたNGコメントを見せてもらったとき、そんな言葉がちらりとあった。恋仲だという噂は定期的に起こるので無視しているが、逆に不仲だというのは珍しかったので記憶に残っている。こちらも根拠のない憶測だと思うが、一度思い出すと胸中に引っ掛かってしまう。

 さっき彼女が彼に向けた視線には、どんな意味があったのだろう。俺が瞬きをした後には、いつもの澄ました表情に戻っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

睿国怪奇伝〜オカルトマニアの皇妃様は怪異がお好き〜

猫とろ
キャラ文芸
大国。睿(えい)国。 先帝が急逝したため、二十五歳の若さで皇帝の玉座に座ることになった俊朗(ジュンラン)。 その妻も政略結婚で選ばれた幽麗(ユウリー)十八歳。 そんな二人は皇帝はリアリスト。皇妃はオカルトマニアだった。 まるで正反対の二人だが、お互いに政略結婚と割り切っている。 そんなとき、街にキョンシーが出たと言う噂が広がる。 「陛下キョンシーを捕まえたいです」 「幽麗。キョンシーの存在は俺は認めはしない」 幽麗の言葉を真っ向否定する俊朗帝。 だが、キョンシーだけではなく、街全体に何か怪しい怪異の噂が──。 俊朗帝と幽麗妃。二人は怪異を払う為に協力するが果たして……。 皇帝夫婦×中華ミステリーです!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

~後宮のやり直し巫女~私が本当の巫女ですが、謂れのない罪で処刑されたので後宮で人生をやり直すことにしました

深水えいな
キャラ文芸
明琳は国を統べる最高位の巫女、炎巫の候補となりながらも謂れのない罪で処刑されてしまう。死の淵で「お前が本物の炎巫だ。このままだと国が乱れる」と謎の美青年・天翼に言われ人生をやり直すことに。しかし巫女として四度人生をやり直すもののうまくいかず、次の人生では女官として後宮入りすることに。そこで待っていたのは後宮で巻き起こる怪事件と女性と見まごうばかりの美貌の宦官、誠羽で――今度の人生は、いつもと違う!?

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

処理中です...