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活動記録帳「佐々木結羽」
case1‐1
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森の奥にひっそりと佇む二階建ての洋館。建てられた時期は分からないが古い建物であり、丁寧な手入れが施されていることが分かる。
その庭に一台の車が入ってきた。黒塗りのセダンタイプの車はロータリーから玄関まで緩やかに走行し停車した。
運転席から降りてきたのは黒いスーツに身を包んだ黒髪の青年。彼は慣れた手つきで後部座席側に移動すると、令嬢を扱うような恭しい態度でドアを開けた。
おずおずとした動作で降り立ったのは濡れ羽色の大人しそうな娘だった。
歳の頃は二十歳半ば頃だろうか。身につけているものは手を出しやすいリーズナブルな価格帯のブランドスーツ。清潔感のあるフォーマルな服装だが、洋館の雰囲気からするとどうしても庶民といった感じだ。
それを娘も感じ取っているのか落ち着かない様子で運転手の男を見ている。
運転手の男はそんな娘の視線を受けてにっこりと微笑んだ。
着いてくるように促し、洋館へと入っていく。
遅れて娘もその後を追った。
案内されたのはホテルの一室のようだった。
天蓋付きの大きなベッド。その傍にはいささか大きなサイドチェスト。四人掛けのソファに二人掛け、一人用が一つずつ。それを囲む大理石のテーブル。備え付けの低いタンスに、その上には部屋が一望できる大きな鏡。
何となくそういったことをする部屋を彷彿とさせるつくりに娘、佐々木結羽は身を強ばらせた。
「少々お待ちください」
今となっては胡散臭さしか感じない笑顔の男はそう言うと部屋から出ていった。
所在なさげに立ちすくんでいると廊下の方から話し声が聞こえてきた。
男性の声で二人分。
勢いよく開けられたドアからは屈強な体躯の男が見えた。
ざんばらの赤毛を緩くオールバックにした髪形。結羽へと視線を向けると、その金の瞳が細められる。
「ほぉ」
品定めをするような視線に結羽は半歩足を引いた。だが、意を決した面持ちで引いた足を戻す。
その姿を眺めていた男が満足そうに笑みを深めた。ドアの外で待機していた案内人を振り返る。
「確かに。もう下がってよい」
「では、どうぞごゆるりと」
深々と一礼するとドアが閉まる。
二人っきりになった部屋に沈黙が訪れた。
その庭に一台の車が入ってきた。黒塗りのセダンタイプの車はロータリーから玄関まで緩やかに走行し停車した。
運転席から降りてきたのは黒いスーツに身を包んだ黒髪の青年。彼は慣れた手つきで後部座席側に移動すると、令嬢を扱うような恭しい態度でドアを開けた。
おずおずとした動作で降り立ったのは濡れ羽色の大人しそうな娘だった。
歳の頃は二十歳半ば頃だろうか。身につけているものは手を出しやすいリーズナブルな価格帯のブランドスーツ。清潔感のあるフォーマルな服装だが、洋館の雰囲気からするとどうしても庶民といった感じだ。
それを娘も感じ取っているのか落ち着かない様子で運転手の男を見ている。
運転手の男はそんな娘の視線を受けてにっこりと微笑んだ。
着いてくるように促し、洋館へと入っていく。
遅れて娘もその後を追った。
案内されたのはホテルの一室のようだった。
天蓋付きの大きなベッド。その傍にはいささか大きなサイドチェスト。四人掛けのソファに二人掛け、一人用が一つずつ。それを囲む大理石のテーブル。備え付けの低いタンスに、その上には部屋が一望できる大きな鏡。
何となくそういったことをする部屋を彷彿とさせるつくりに娘、佐々木結羽は身を強ばらせた。
「少々お待ちください」
今となっては胡散臭さしか感じない笑顔の男はそう言うと部屋から出ていった。
所在なさげに立ちすくんでいると廊下の方から話し声が聞こえてきた。
男性の声で二人分。
勢いよく開けられたドアからは屈強な体躯の男が見えた。
ざんばらの赤毛を緩くオールバックにした髪形。結羽へと視線を向けると、その金の瞳が細められる。
「ほぉ」
品定めをするような視線に結羽は半歩足を引いた。だが、意を決した面持ちで引いた足を戻す。
その姿を眺めていた男が満足そうに笑みを深めた。ドアの外で待機していた案内人を振り返る。
「確かに。もう下がってよい」
「では、どうぞごゆるりと」
深々と一礼するとドアが閉まる。
二人っきりになった部屋に沈黙が訪れた。
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