最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒夜零

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49話 クロの決死の攻防

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「何か言いたそうだな?」

皮肉にも魔力がなくなった瞬間、抜けた。力を必要とした時のような支配感がない。
始めてお目にする、魔剣の刀身。一見目を奪われそうになる色味。
魔道具な事もあり、一切の錆も刃こぼれすらない。

「貴様にそれが使いこなせるのか?」

どうだろうな? 多分使いこなせない。
本来魔剣が纏っている魔力がない、抜けたのは奇跡。
それでも何の力も
頼み綱も失敗に終わったかもしれない。
だとしても一泡吹かせる。
左手で握っている鞘をユウナさんに渡す。

「え? これを。ど、どうすれば?」
「守り代わりに持ってて下さい。元々はこの魔剣を収める物です、何かしらの力はある筈です」

こうでも言わないと、きっとユウナさんは納得しない。
もしかしたらこれはオレではなく、ユウナさんが扱えるかもしれない。
だけど、彼女に魔人殺し、生物を殺す業は背負わせない。
手を汚すのはオレだけでいい。

「抜けたから何だ? 調子に乗るなよ無能風情が!!」

無能、無能、うるさいなぁ、確かにヒュウガにいた頃は無能だったさ! それでも今は違う。
ユウナさんと出会い、一緒に居って変われた。
あの時の判断は正しかった。だからこそ命に代えても守り抜く。
柄を強く握る、魔剣が一瞬光ったような気がした。

「焔鳥!」

リグは魔法を放つ、そしていつ回復したのか分からないが、傷が塞がっている。
だが、体の節々から血を流している。
全快って訳ではない、少しの進歩だ。
向かってくる炎を媒体にした鳥。
流石に火の魔力を持つ、リグの方が断然に精度が高い。
頼むよ魔剣、上段から斬撃を落とし、意図も簡単に焔鳥を切り裂いた。
よし! あっちは火、炎魔法の精度は確かに高い。でもこっちも剣としてかなりの精度に硬度だ。
地を蹴り、速度を上げてリグとの距離を詰める。

「魔法が駄目ならば体術だよ」

リグは右拳を繰り出す。

「なぁ勘違いするなよ? 体術ならばこっちが十八番だ!」

剣一閃し、右腕斬り飛ばす。赤黒い血が刀身に付く。血を払い、一歩、一歩と近付く。
全然動ける、何ならばロングソードより軽い。それに剣技が身に付いてる。
風紀員長がくれたロングソード、その成果が今確実に出てる。
リグは後方へ徐々に下がる。今完全に押してる。
本当にそうか? 脳裏に声が聞こえる。
ッ!! 確かにここまで出来過ぎている。
それでも今攻め切るしかない! 魔力はゼロになった今! これで仕留めるしかない。

「焦ったな? 黒炎」

一歩踏み込んだ、その時。もう既にリグは懐に潜り、かつて見た黒い炎を手に宿してた。
防ぐ反応も出来ず、喰らってしまった。見事というしかないカウンター。
リグの手が腹部を貫く、これも二回目だ、腹を貫かれるのも。
結局何をしてもリグが一枚上、流石に心折れそうになる。
不思議な事に痛みを一切感じない、黒い炎で体を蝕まれている。それでも一切の痛みを感じない。
オレの意識は暗闇に覆われ、消える。

        ◇
視界が真っ暗の暗闇に包みこまれてる。
自然と自分がどうなったか、考えようとしていない。
理由は考えずとも分かる。もう実感が持ててるからだ。
オレは死んだ。ユウナさんを守り切れず、無念の死。
それなのにオレを、呼ぶ声が何度も聞こえる。

「起きてクロ君!!」

呼ばれたからには行かないとな、オレの意識が暗闇から晴れた。
何か口に柔らかいのが当たっている。鼻腔に柑橘系の匂いが通る。
ゆっくりと目を開けると、オレの前にユウナ=リステリがいる。
しかも彼女はオレにキスをしていた。
一体どういう事だ? 頭が追いつかなかった。
リグは!! と思い横目で探すと、ヴァニタスの魔導書が顕現し、鎖でリグを捕縛していた。
やがてオレの口から彼女が離れる。

「私が君の力の全てを発揮させる!」

言葉の真意は分からない。
ユウナさんが光り始める。白銀から白金色に変化し、優しい笑みを浮かべ、再びキスをされる。
力がみなぎる、今までに感じた事がない程の力。
一体何が起きている?

「『禁羅支配ヴァルナノヴァ』を勝手に使うな!!」

鎖に巻かれているリグが雄叫びを上げる。

「それは魔導王様の為に使え! そんな無能風情に使っていい代物ではない」

禁羅支配、ユウナさんの中に眠っている魔帝の力。
ユウナさんから白金の光りが消える。
それとほぼ同時にユウナさんが離れる。
緊張と恥ずかしさが切れたのか、ユウナ=リステリは目を回し気絶する。
魔剣を床に刺し立て、ユウナさんを階段付近に運ぶ。
羽織っているローブを脱ぎ、ユウナさんに掛ける。

「どうやらオレは簡単に死ねないようだ」

踵を返し魔剣を抜き、リグの方に向かう。空いてる片手でヴァニタスの魔導書を手に取る。
鎖を引っ張り、リグの顔面に強烈な蹴りが入る。

「てめぇしぶといな!」

やはり蹴り如きでは怯まないか。持っている鎖を離す。
次の瞬間、鎖が弾け飛ぶ。怒り心頭のリグが魔力を全開にし来る。

「なぁそろそろ死んでくれよ。ヒュウガ史上最悪の出来損ない」
「まだヒュウガと思ってくれてたのか、嬉しい事だ」

リグの魔力を纏った拳が目の前で止まる。前もこんな事合ったなと思い出す。
リグは驚愕の表情を浮かべている。それはそうだろうな。
自分の拳がまるで何かに、阻まれていように止まっている。
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