宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~

土岡太郎

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第3章 北ロマリア戦役

マントバ要塞攻略戦 06

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 艦隊の前に配置させた二つの隕石の内、先頭の隕石が要塞の迎撃兵器群の射程圏内に入った報告を受けたラトケ中将は迎撃の号令を発する。

「撃てぇーーーー!」

 南面に設置されているビーム砲、ミサイル、レールガンの迎撃兵器群が一斉に火を吹き、高速で突進してくる隕石に攻撃を加える。

 最初の隕石攻撃で南面の迎撃兵器群の内、上部に設置されている兵器群の一部は破損しており、更に射線上には二回目の隕石攻撃で水蒸気や水が発生している為に、ビーム砲は威力を減衰しているので、高速で迫ってくる先頭の隕石の表面を削ってはいるが、破壊できないでいる。

「先頭の隕石に、要塞からの攻撃が始まりましたな」
「あの程度の攻撃なら、完全に破壊される事はないでしょう」

「それでは、やはり問題は要塞砲ですな。計算通り、上手くいくといいのですが…」

「大佐、問題ありませんよ。僕は勝算のない戦いに、身を投じるほどの勇敢さは持ち合わせていません。それに、昨日ようやくカレーを食べ終わって、今日の夕食は僕の好物であるほうれん草とベーコンのキッシュが食べられるのですから」

「それは…、楽しみですな。では、何としても、要塞を攻略しないといけませんな」
 ルイが自信の有りそうな顔でそう言った後に、シャルトー大佐はこう答えた。

(ようやく、食べ終わったのか…)
 ルイのその言葉を聞いた者達は、皆同じ感想を持った。

 彼はフランが作って持たせた鍋一杯のカレーを消費するために、この要塞攻略に出発した日から夕食はカレーだけを食していた。

 その話を聞いた周りの者達は、最初の頃は”殿下の手創りカレーを食べられるなんて、羨ましいですね”と言っていたが、三日目ぐらいになると”あれ、まだカレー食べている…”となり、五日目過ぎた頃には”何かおかしい”と流石に察し始める。

 カレーとは往々にして作りすぎるものだが、フランは敢えて多く作ってルイに持たせており、その目的は自分の作ったカレーを食べている間は、彼が自分の事を想うであろうという考えからである。

 真面目で優しいルイには、彼女が頑張って作ってくれた物を捨てるという考えは無いために、頑張って出発から一週間愚直に夕食にカレーを食べ続けてきたのであった。

「後20秒で、15分が経過します」
 オペレーターが要塞砲充填の終了が、迫っていることを報告する。

 艦隊が要塞に向けて移動を開始してから15分が経過し、これからはいつ要塞砲が撃たれるか分からない為に、ルイ艦隊には一気に緊張感に包まれる。

(そろそろ撃ってくるな…)

 ルイは要塞砲発射のタイミングをそう読むと表情は自然と厳しくなり、側に控えていたシャルトー大佐はその事に気付くと彼の緊張も更に増して、思わず固唾を飲んでしまう。

「隕石との距離およそ15万キロ」
「よし、これだけ引き付ければ充分だろう。隕石中央に狙いを定めろ!」

 連続で迫ってくる球状の隕石を二つ破壊するためには、真ん中を狙わなければ破壊するのは難しくなってしまう。

 もし仮に着弾点が中央から上にズレてしまえば、隕石は均等に破壊されずに、下側に大きな塊を残す可能性がでてくる。

 そうなれば、その塊はそのまま前進して、エネルギーシールドの無い要塞に衝突して大きな被害をもたらす事になる。

 そのためラトケ中将は、発射の号令にそのような命令を追加したのであった。

「要塞砲、撃てぇー!!」

 遂に要塞砲が、隕石と艦隊に向けて放たれる。

 要塞砲から発射された高出力ビームは、眩い光を放ちながら直径3キロの光の柱となって、宇宙空間を隕石と艦隊を蒸発させるために突き進む。

 しばらく真空の世界を進んだ光の柱は、射線上に発生している水蒸気と水が浮遊する地帯に突入し、少しだけ拡散して減衰するが1つ目の隕石の中央に見事に命中して、氷隕石の表面を蒸発させながら前進を続ける。

「要塞砲、先頭の隕石に着弾!」
 オペレーターが、緊張を帯びた声で報告する。

 そして、高エネルギーの柱は威力を弱めながら遂に一つ目の隕石の中央を貫通して破壊し、そのまま進み2つ目の隕石の真ん中に着弾する。


 高エネルギービームは、2つ目の氷隕石の氷を溶かしながら進むために、その蒸発して出来た蒸気と水によって、少しずつ威力を減衰させながら進み続ける。

「前方の隕石内部の温度が上がっています!」
「要塞砲が貫通するぞ、各員衝撃に備えろ!」

 オペレーターの方向を受けたシャルトー大佐は、すぐさま衝撃に備えるように指示を出すと同時に隕石の真ん中が融解して、そこから氷隕石を爆散させながら高エネルギービームが飛び出してくる。

「2つ目の隕石破壊を確認!」

 高エネルギーの光の柱が、貫通したと同時に2つ目の隕石も爆散して、氷の塊が四方に飛び散る様子をモニターで確認した要塞内のオペレーターが、2つ目の隕石破壊の報告をおこなう。

「敵艦隊をどれだけ撃沈した!?」

「二つ分の氷隕石から、発生した水蒸気と散らばった氷の塊で、艦隊にどれだけ被害が出ているか確認できません…」

 オペレーターがそう報告した時、その水蒸気の中から、無傷のルイ艦隊が最大船速で現れ、要塞の迎撃兵器群に向かって攻撃を開始する。

「馬鹿な!? 無傷だと…」
 ラトケ中将は驚愕するのも無理はなかった。

 ルイの艦隊は隕石の後ろに、縦四列、横四列の隊形密集縦列陣形から、中央を空白にした”口”の形に変更して進んでおり、氷隕石二つを貫通して威力が減衰して直径2.5キロの高エネルギービーム砲は、その中央の空白地帯をすり抜けて行ったのであった。

 隕石が目隠しとなって、要塞側にはルイの艦隊の陣形が”口”の形になっている事に、気付くことが出来なかった。

「全艦散開しながら、要塞迎撃兵器に攻撃せよ」
 ルイ艦隊は攻撃面を広げるために、散開しながら迎撃兵器群を攻撃し続ける。

 そして、要塞砲の死角まで近づくと船速を落として、迎撃兵器群を破壊する。

「南面の要塞迎撃兵器を全て破壊後に、揚陸艇による陸戦隊を要塞内に送り込んで、占拠作戦をおこなってください」

 こうして、作戦は最終局面を迎える。

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