宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~

土岡太郎

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第3章 北ロマリア戦役

マントバ要塞攻略戦 07

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 要塞の外壁に取り付いた揚陸艇から、装甲服を纏った陸戦隊員が武器を手に、次々と要塞内に突入していく。

 装甲服には種類があり、大多数の者に支給されているのは、コストが安価で済む防護服の強化版程度のモノであるが、複合装甲によって作られている為に防御力はそれなりにあり、ある程度の攻撃は防ぐが重火器は流石に防ぎきれない。

 装甲服は装甲が付いていない場所を狙えば、通常火器でも倒すことはできるが、戦闘中にそれを狙うのは中々に難しく、重火器による攻撃が行われるのは必然の流れである。

 だが、重火器は重量が重く一人で携行できないようなモノが多いため、防御側は備え付けておけば問題がないが攻める方はそうはいかない。

 重火器を携行できるパワーアシスト機能が付いた装甲服が開発され、戦場に投入されるのにはそう時間が掛からなかった。

 こうして、人命を守る為に作られた装甲服はあまり意味を成さなくなり、戦死者数は現代戦の銃撃戦とあまりかわらなくなってしまった。

 数千人いる兵士全員に高性能の装甲服を支給するのは、費用的に難しく多くの下級兵士達には安価な装甲服が支給されることになり、戦死者数の多くは勿論その者達であり、犠牲になるのは末端の兵士達となるのはこの時代も変わらない。

 その状況を打開するためにガリアルムが開発したのが、『機械式重装甲服 M―01』通称<マンショ>である。

 マンショは強化型パワーアシストで動くことを前提にしているために、複合装甲も通常の二倍の厚さで、表面は完璧ではないが対レーザー処理を施しており、全体的に丸みを帯びた曲面装甲を採用している。

 手や足は弱点になる関節を廃止しているために、歩き方もペンギンみたいな感じになり、更にその丸みを帯びた見た目とで、着ぐるみの<ペンギン>に見えるために、仏語の<マンショ>と呼ばれる事になる。

 装備は背中から肩に掛けて、大型ガトリングや大口径の砲、手(手ビレ)には重火器を備え付けて、先には近接用の爪を付けているが、腕の可動域が少ないために使い所は難しい。

 動力は他のパワーアシスト装置付きと同じバッテリー式を採用しているが、マンショには新開発されたバッテリーを採用している。

 このバッテリーは、マリヴェル博士がぬいぐるみのギミック用に作った使用すると爆発してしまう失敗作の特殊バッテリーをメアリーが改修して完成させたモノで、従来のバッテリーよりも高出力で稼働時間も大幅に伸びているが、マンショの燃費が悪いために30分から1時間しか稼働させることが出来ない。

 おまけに前述のペンギン歩きでは、ちょっとした段差でも越えることが難しい場合もあるため、足(足ビレ)の裏にキャタピラを装備しており、これを使用する事によって更に稼働時間は短くなってしまう。

 因みにマンショがペンギン型なのは、メアリーの設計によるものである。

「マンショを前面に出して、盾として進め!」

 陸戦を指揮する指揮官はこの歩く戦車を先頭に数体配置して、その後ろに重火器を持った装甲服、その後ろに安価な装甲服を装備した兵士を配して敵迎撃部隊の猛攻の中、要塞内の重要設備である、司令施設、武器庫、火器管制室、通信設備、兵舎などの占拠を進めていた。

 マンショは敵重火器による攻撃をもろともしないといった感じで、迎撃部隊を仲間と自身のその火力で粉砕していき要塞内を次々制圧していく。

「マンショ― M―01の活躍で、要塞内の占拠は順調に進んでいるとのことです」

「そうですか。引き続き、気を引き締めて作戦を続行するように命じてください。それと、引き続き要塞に降伏を勧告してください」

 ルイは参謀のシャルトー大佐の報告を受けてそう答えたが、正直内心では少し気分は落ち込んでいた。

 マンショを投入しているとはいえ、犠牲者はかなり出ている。
 今に始まったことではないが、自分の命令で敵も味方も多くの兵士が死んでいる。

 そう思うと、戦果に素直に喜べずにこの若すぎる指揮官には、まだこの感情をどう処理すればいいかわからなかった。

(フラン様も、この感情を抱えているのかな…。どう、処理しているのだろうか…)

 ルイは恐らく自分よりも多くのこの感情を抱えて、処理しているのであろう二歳年下の妹のような少女に改めて畏敬の念を抱く。

 要塞内での戦闘が始まって、約4時間が経ち当初の作戦計画よりやや遅延しながらも、要塞内での戦闘はガリアルム軍優勢で進んでいる。

 だが、要塞内は大型ガトリングや重火器が発射される轟音と、兵士達の悲鳴や叫びが要塞の廊下に響き渡り、硝煙と血の臭いが充満する光景はまさしく地獄のようであった。

 その地獄を鋼鉄のペンギンが、重火器で敵兵を薙ぎ払いながら、進んでいく光景はまるで今まで捕食者に食べられたペンギン達の怨念が乗り移って、復讐しているような印象を受けたと後に要塞戦に参加した兵士が語っている。

 自軍の劣勢を受けて、要塞司令部参謀のサムデレリ准将は、司令官にこのように進言する。

「閣下。残念ながら、外部からの援軍が望めない以上、要塞陥落は免れません。ここは兵士達の犠牲を少しでも少なくするためにも、小官は敵の降伏勧告を受け入れる事を進言致します」

 要塞防衛司令官ラトケ中将は、暫く要塞内部の戦況が映し出されたモニターを黙って見つめながら、どうするか考えた後にこう呟くように言った。

「そうだな…。貴官の言うとおりだな…。降伏を受け入れる…」

 ラトケ中将はそういった後に、天を仰ぐと参謀に敬礼して最後の命令を出す。

「参謀。すまないが後の事は、貴官に任せる」
「……、はっ」

 サムデレリ准将は、司令官のこの後の行動を察して敬礼して返答し、そのまま彼が司令施設から出ていくのをこの場にいた他の兵士達と共に敬礼して見送った。


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