宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~

土岡太郎

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第4章 第一次対大同盟戦

ベシンゲンの戦い 05

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「閣下、敵の奇襲により補給艦を少数失い、更に正面と天底から挟撃され、数の上でも不利です。 このままでは、我々は敵にすり潰されてしまいます。犠牲を覚悟で撤退なさるべきかと…」

 コリヤダ少将は撤退を進言する、それは奇しくもレズェエフ少将と同じ決断を促すものであった。

 プリャエフ艦隊はコリヤダ少将の戦況分析通りの理由で、戦闘開始から司令官が撤退を渋っていた20分の間に、5000隻から4000隻まで撃ち減らされていた。

 だが、事ここに至ってもプリャエフ大将は、撤退を迷っていた。

 その理由は、ここで無理に撤退すればレズェエフと同じ轍を踏むことになり、被害は甚大になってしまう。

 そうなれば麾下の艦隊に大きな損失を出した無能として、処罰される可能性があるため、彼はここで踏みとどまって、敵が隙を見せた所を逆撃して一発逆転を狙うか、撤退するかを考えていた。

 しかし、名将二人にそのような隙を見せるわけもなく被害だけが増えていく。

(このままでは、コリヤダの言う通り被害が増すばかりか… なら、仕方がない…)

 プリャエフ大将は、敵が全く隙を見せないためこれ以上被害が出れば、責任を負わされて死刑もあり得るため、取り返しがつかなくなる前に撤退を決断する。

「全艦一斉射の後、敵が怯んでいる内に、撤退を開始する!」

 全艦で一斉射して、敵のEシールドに多大な負荷を与え、敵の前の艦が後方の艦と交代をしている間に撤退すれば、交代中の敵は攻撃と追撃に移るのに時間がかかり、撤退時にこちらの被害を抑えることが出来る。


「今だ! 主砲一斉射、二連!」

 プリャエフ艦隊は、司令官の号令のもと主砲の一斉射を2回おこない、前面のガリアルム艦隊に苛烈なビーム攻撃を浴びせると後退を始める。

(教科書どおりの撤退方法だ… 状況を無視しているが…)

 戦術モニターと外部映像モニターで、その撤退方法を見ていたヨハンセンは、頭の中でそう評すると追撃命令を出す。

「追撃を開始せよ」

 ヨハンセン艦隊は交代しながら、時間を掛けずにスムーズな追撃を開始する。

 これは艦隊の練度の高さもあるが、何より交代する艦が少なかった為であり、

 その理由は―

 まず、プリャエフ艦隊が補給艦を数艦失っていた為に、予想以上に補給が間に合わない艦がいたこと

 ヨハンセン艦隊は数的有利が出てから、余裕を持って補給交代を行っていたので、一斉射でEシールドに負荷を受けても、交代する必要がない艦が多数を占めたからである。

 プリャエフは、後退して安全な距離が開いてから回頭するつもりであったが、ヨハンセン艦隊の予想以上の追撃の速さに距離を空けることが出来ず、それに伴う攻撃により回頭するタイミングを失ってしまう。

 その結果、後退しているだけで、状況は先程と何も変わっておらず、正面と下から攻撃を受けて、ジリジリと艦艇数を減らしていく。

「これが、開戦時なら我々は追撃に遅れただろう。だが、敵の司令官は撤退の決断を欠いて、不利なこの状況で戦闘を続けすぎた。そのおかげで我々は、こうやって追撃に備えることが出来た」

 追撃を続けながら、ヨハンセンはクリスから今回の追撃が成功した理由を尋ねられ、こうこう答えた後に、更に彼女から質問を受ける。

「敵がこの不利な状況で、戦闘を継続させたのは功績を求めてでしょうか?」

「おそらく、敵追撃艦隊の失敗を取り戻そうとしたんだろうね」
「閣下でもそうなさいますか?」

「私なら、こんな不利な状況で戦いは挑まず、後続の味方艦隊を待って再起を期すね。そもそも、バルトドルフの時点で敵艦隊の状況が不明なのだから、追撃艦隊を出さずに味方艦隊を待つためにシュツットガルトまで撤退するね」

 彼はそう答えた後に、頭を掻いてからこう付け加える。

「まあ… 立場や取り巻く状況があるから、そう一概には言えないけどね…」

 自分はフランから作戦の自由な裁量を委ねられているが、敵司令官は敵を捕捉したら徹底的に叩けと命令を受けているのかもしれないし、どうしても今回の戦いで功績を立てねばならない立場なのかもしれない…

 だが、自分がそこまで敵司令官のことを考える必要はない
 今自分が考えることは、いかに味方の被害を抑えてこの戦いに勝つかである。

「このまま、アングレーム艦隊と連携して、攻撃の手を緩めずに敵艦隊を叩く」

 ヨハンセンの指示の下、ガリアルム艦隊は追撃の手を緩める事無く、敵艦をまた一隻と虚空に葬っていく。

 撤退を失敗して、味方艦を失っていく様子を戦術モニターで見ながら、プリャエフ大将は防御に徹する命令を出していた。

「閣下、このままでは…」
「解っている… だから、このように防御を固めて、撤退の好機を見計らっているのだ」

 参謀のコリヤダ少将に、プリャエフ大将は強がってこう答えたが、正直なところ艦隊壊滅の延命処置にすぎない。

 そして、味方艦隊が3000隻を切った時、プリャエフ大将はまたもやレズェエフと同じ決断を下すことになる。

「コリヤダ少将… 一斉射の後に全艦180度回頭、その後に全速で離脱する…」
「はっ…」

 味方に多大な犠牲を出してでも、強引に敵前回頭して撤退せねばここで全滅するだけであり、コリヤダ少将もそれが解っていたために何も言わずに命令を受け入れる。

 そして、その結果はレズェエフ艦隊と同じで、1500隻まで撃ち減らされて、成功と言えるかは疑問ではあるが戦場を離脱する目的を果たす。

「閣下、補給がそろそろ限界です」
「そうか… やむを得ん。追撃を中止する」

 もちろん、ロイク艦隊で追撃を行ったが、20万キロ進んだところで補給の限界が来て、撤退を余儀なくされてしまう。


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