宇宙戦記:Art of War ~僕とヤンデレ陛下の場合~

土岡太郎

文字の大きさ
128 / 154
第5章 Vive L'Empereur(皇帝万歳)

戴冠 その4

しおりを挟む



 叙勲式、翌日―

 アーサリンが朝の8時半まで、与えられた官舎のベッドで惰眠を謳歌していると、呼び鈴が鳴りその音で目を覚ます。

 どうやら、呼び鈴を鳴らしている人物は連打しているようで、官舎内はけたたましい呼び鈴が鳴り続けている。

 そのため、流石のアーサリンも夢の世界から現実に強制復帰させられ、彼女は寝ぼけ眼をこすりながら、年頃の女性らしからぬ寝癖でボサボサの髪のまま壁に設置されたインターホンの受話器を手に取る。

「はい~ こんな朝早くから~ どなた― 」

「こらー! やっぱり、まだ寝っていたな! 朝早くじゃない! もう8時半だぞ!! さっさと起きろ!!」

 インターホンの画面に映ったのは、クレアでかなりお怒りの様子であった。

「とにかく、まずはドアのロックを開けなさい!」

 アーサリンは、まだ半分お休み状態の脳で言われるがまま、インターホンに備え付けられている遠隔操作ボタンで扉のロックを解錠すると、その瞬間に勢いよく扉が開かれクレアが鬼気迫る表情で入室してくる。

「もう~ クレアったら~ 朝からあんなにピンポンピンポンって、ご近所迷惑よ~」

 寝ぼけ気味のアーサリンは、クレアがブチギレていることが理解できずに、そのように注意すると三倍になって返ってくる。

「何を他人事みたいに言っているのよ! アナタが時間通り起きて、外務省庁舎まで来ていれば、私がここまでわざわざ迎えに来ることもなかったし、呼び鈴を連打する必要も無かったのよ! その様子だと、やはり忘れているみたいね! 今朝9時に外務大臣のアナタのお兄様に呼び出されていたでしょうが! 取り敢えずは、寝癖でボサボサのその髪をなんとかしろ! シャワーだ! 眠気覚ましのためにもシャワーを浴びてこい! だが、時間がないから、5分だ! 5分で終わらせろ! 5分経っても入浴を終えなかったら、私がシャワールームから引きずり出すからな!」

「いや~ クレアのエッチ~」
「いいから、早くシャワールームに入れ! このお気楽のんびりゆるふわ女!」

 アーサリンは鬼軍曹クレアの指示通り、5分を少し越えてしまったが何とかシャワーを浴びて下着とシャツだけの姿で出てくると、クレアに手伝ってもらって軍服を着用する。

「おい、勲章はどうした?!」

 クレアがアーサリンに軍服の上着を着せた時、その胸に輝くはずの勲章が付いていなかった。

「失くしたら~ 困るから~ 机の中に~ 大事にしまってあるわ~」

「アナタは~! もう時間がないから、勲章はいいわ! さあ、外に車を待たせているから、今直ぐ官舎を出て外務省庁舎に行くわよ!」

「えぇ~ クレア~ 朝ご飯は~」
「無い!!」

 クレアは朝食なしに抗議するアーサリンの背中を、玄関に向かって押していき、そのまま外務省の車に押し込む。

「そもそも~ お兄様も悪いと思うわ~。私が~ 朝が苦手なのを~ 知っているくせに~ こんな時間に会いに来いって~ 言うんだもの~。配慮が足りないと思うわ~。そんな人が~ 外務大臣なんて~ この国は大丈夫かしら~」

 アーサリンは車内で、クレアに自分の朝寝坊を棚に上げて、このようなことを愚痴りだすが

「9時の呼び出しに何ら問題点はない! 全てはアナタが7時に起床できていれば、問題なかった事よ!」

 クレアに一刀両断される。

 10分遅刻したが財務省に到着した二人は、大臣の部屋の扉をノックして入室を果たす。

「十分遅刻だな。まあ、あの状況から10分だけで済んだのは、スウィンフォード君のお陰だな。やはり、君に任せて正解だった、感謝する」

「閣下、恐縮です」

 そう言ってクレアは、自分に労いの言葉を掛けてくれた人物に敬礼して返答した。

 その相手こそ、エゲレスティア連合王国の現外務大臣であり、アーサリンの実兄でもあるロバート・ウェルティ卿である。

 ロバート・ウェルティはアーサリンの10歳上で、3年の兵役の後に退役して政界に進出し、着々と政界での地位を上り詰め、今年発足したパウエル内閣で外務大臣を拝命することになった。

 彼はアーサリンが朝に弱いことを熟知していた為に、8時に彼女に連絡を取ろうとしたが、ぐっすりお休み中だった妹は数回掛けた電話全てに出なかったため、急遽彼女の副官クレアに連絡して起こしに行って貰ったのであった。

「アーサリン、昨日叙勲された勲章はどうした?」

 彼も妹の胸に輝くはずの勲章がないことに直ぐに気づき質問するが、クレアが代わりにすぐに返答する。

「失くすと困るため、机に保管しているそうです」
「まったくオマエは…」

 その答えを聞いたロバートは、呆れた表情で妹を見ると彼女は眠そうにあくびをしており、更に呆れてしまい首を横に振る。

「まあ、いい…。私も忙しいから、本題に入ろう。二人は、ガリアルムが国号を帝国に変え、その帝位にフランソワーズ殿下が就くのは知っているな?」

「はい、ニュースで知っています。たしか、来月の10日にマトラ星系惑星ランヌのランヌ大聖堂で戴冠式を行うと聞いています」

「そうだ。その戴冠式に女王陛下の名代として参列するために、私が派遣されることも知っているな?」

「はい」

 クレアが受け答えしているその隣で、アーサリンはぼっーと立っている。

「私はその随伴員として、君たち二人も同行させることにしたのだ」
「私達が、ですか!?」


「そうだ。あのお方は若いが、軍人としても、政治家としても、非凡な才を持った英才だ。それに君達とも同性であるし、会っておけば今後の役に立つであろう」

 兄の言葉を聞いた瞬間、アーサリンからは睡魔は吹き飛び、彼女にしては珍しく真面目な表情になる。

 何故ならば、アーサリンは同じ同性の軍人であり、何よりフランのその軍事的才能に興味を持っており、彼女の今迄の戦いの報告を取り寄せては、使用した戦術を研究してその見事さに感嘆の念を覚えていた。

 そんな彼女と会えるとなれば、流石のふだんゆるふわな彼女も昂揚感の高まりを抑えることができず、思わずウキウキしてしまう。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...