AV嬢★OLユリカシリーズ

道化の桃

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OFF 〜voluptuousness S

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 総てのことに終わりはある。ただそれに目を向けようとしないだけ。


「もしもし」
『佐伯さん、お金取れましたよ。手数料抜いて500万ずつ、一千万』
「驚いた……結構払わせましたね」
『いや、二人共、いい親御さんをお持ちでしたね。即金でしたよ。それからホテルの防犯カメラの映像は知り合いの刑事に渡してあるので、再犯したら一発で懲役でしょう。あ、一千万は今日中にそちらの口座に振り込んでおきます』
「ありがとうございます。助かります」
『いえいえ。専務にもよろしくお伝えください』
「あ、あともう一件、別件で相談したいのですが」
『なんでしょう?』
「会社の債務整理なんですがね。契約書と今までの支払状況をメールしますので、一度ご確認願えますか?」
『契約書、ですか。借用書でなく』
「ええ、移籍契約書です」

「佐伯さん」
 電話が終わったのを見計らって、武藤が声を掛けた。
「ん?」
「あの、さっきの映像、見てもいいですか?」
「……」
「佐伯さん、ちゃんと見てなかったでしょ。僕が見ますから、貸してください。何か映ってるかも」
 佐伯は渋々スマホを渡す。
 伊勢崎がユリカを苛んでいる声が漏れてきて、佐伯はまた気分が悪くなった。
 佐伯はこういう時、武藤のほうが自分よりずっとこの仕事に向いてると思う。若いのに肝が据わっていて、どこか達観したふうなところもある。女の不幸にいちいち共感も同情も軽蔑もしない。常にフラットなのだ。
「……病院、ですかね」
「え?」
「だってほら、病院っぽいセットじゃないですか?檻はちょっとおかしいけど、ベッドとか、内診台とか」
「病院……」
 佐伯には覚えがあった。一度見たきりだからはっきりとは言い切れないが、マリエのDVDが撮影された場所と酷似している。
「見たことがある……五年前も、奴はここでビデオを撮ってた。でも場所までは」
「あった!『廃病院、スタジオ』で検索したら、ほら、これ」
 動画投稿サイトを見ていた武藤が叫んだ。
「イマドキの若者はそういうの早いねぇ……」
「この人の上げてる動画、背景一緒ですよね。住所と、ご丁寧に外観写真も付いてる……初台ですね」
 武藤は動画を佐伯に向けた。
「いいよ見せなくて。結局新宿に逆戻りかよ」
「ほんと、佐伯さんはこういうの苦手ですよね。なんでこの商売やってんですか?」
「……若い頃はどんなにグロくても平気だったんだけどな。歳かなぁ」
 そう言いつつ、理由はうっすら自覚している。――娘の成長とともに。
「佐伯さんはほんとは優しいんですよね」
 武藤はにやりと笑った。
「黙れ」
「10分で着きますよ」
 武藤はアクセルを踏み込んだ。

 新宿からほど近い、古い建物もまだ多く残る住宅街の中に、その病院はあった。
「個人病院だったみたいですね。古いけど結構な豪邸じゃないですか」
 スタジオの看板は出ていない。だが医院の看板は名前が消され、ドアの横には「関係者以外立入禁止」の札が貼られている。
 建物の前面は丸く弧を描いて、モザイクガラスの嵌った明かり取りの窓がついている。恐らくそこが受付と診察室で、奥に入院用の病棟があるのだろう。二階建ての鉄筋コンクリ造の建物が背後にある。その横の奥まった場所に、植え込みに囲まれて洋風の邸宅が建っていた。
「ところでサロンって何なんですか?見た目、普通のハウススタジオに見えますけど」
「奴の副業だよ。AV女優やキャバ嬢に金持ち連中の相手をさせて金を取るんだ。撮影スタジオの一室でやるんだが、それをサロンって呼んでんだよ」
 武藤はふっと失笑する。
「気取ってますねぇ。要は違法売春用の隠れ家ってとこか」
 佐伯はインターホンも鳴らさずにドアを開けると、ずかずかと奥に入っていった。武藤も後を追う。受付にはやはり女性がいたが、佐伯のあまりの勢いに呆気にとられて、声を掛けるのも忘れて固まっている。
「いいんですか?すごい勝手に入っちゃってますけど」
「名乗ったって通してくれねぇよ。時間の無駄だ」
「でも入ったはいいけど、どこにいるのか……」
 病棟を通り抜けると、住居スペースとの境い目にダークスーツ姿の男たちがいた。
「あっちだな」
「……わかりやすいですね」
 二人は正面突破を試みたが、当然のように制止される。
「どこへ行く?」
 無言のまま拳を振り上げたのは武藤だった。が、佐伯がそれを止める。
「伊勢崎さんに取り次いでもらえませんかね。うちの女の子の件で」
 ダークスーツの一人が取り次ぎに行く。
「……なんだ、僕てっきり自分はケンカ要員かと思ってました」
 武藤が佐伯に囁いた。
「ケンカ要員だけど、まだ先があるからちょっと我慢してろ。ユリカの無事を確認してからだ」
 佐伯が囁き返す。
 二人は応接室に通された。
 アンティーク家具で統一された重厚感漂う部屋だ。窓の外は植物が茂り、都心にいることを忘れる。
 程なくして伊勢崎が現れた。
「龍二ィー、なんだ?何しに来た?俺ァ呼んでねェぞ?」
 伊勢崎は来るなり革張りのチェスターフィールドソファにどっかりと腰掛けた。
「伊勢崎さん。彼女、どこにいるんですか」
「……そのことかよ。あのなぁ龍二、女ひとりで借金チャラにしてやるっつってんだよ。いい話だろァ?いい加減諦めろよ」
「とにかく会わせてください」
 佐伯は引かない。しばらく無言で睨み合った後、
「……おい」
 伊勢崎は傍らの部下に声をかけた。
「はい」
ひじり起こしてこい。女もだ」

   *****

 うっすらと目を開けると、聖さんがドアを開けるのが見えた。誰かと話している。
 太陽がだいぶ高い。
 何時なんだろう、というのと、もうどうでもいい、というのが、同時に頭に浮かぶ。どうせここからは出られない。
 勤め先が無断欠勤に気付いたとして、探し始めるには数日かかるだろうし、探したところで自宅にはいない。佐伯がユリカを売ったというのが本当なら助けには来ないし、嘘だとしても次の撮影まではいなくなったことに気付かないかも知れない。そして次の撮影の予定はなかった。最悪、逃げたと思われて終わりかもしれない。
 そんなことすべてがどうでもよかった。
「おいで」
 手枷をされて、裸のまま廊下に引き出される。もう逃げる気力もなかったけれど、ほかの人間が服を着ている中で、裸でいるのはとても恥ずかしい。なんていうか、自分だけ人間扱いされていない気分だ。洋服に着替えた聖さんに首輪に繋がれた鎖を引かれて歩くと、もうあたしは犬かなんかになってしまったんじゃないかと思う。
 あたしは極力、身体と思考を切り離そうとした。これは、到底受け入れられないことが起きている時はとても便利な方法だ。あたしは人形。そう思い込む。そうすると、だんだん自分だけ裸でいることがおかしいと思わなくなってきた。
「あれぇ、割と早かったですね、ここ見つかるの」
「おう、聖。なんだずっと寝てたのか?もう昼だぞ」
 シャットアウトした意識の向こう側で、聖さんと伊勢崎という男が話している。
「一週間くらいは楽しめると思ったんですけど……ねぇ、ユリカちゃん」
 その部屋には他にも何人かいたが、あたしの目はもう何も映していなかった。会話の意味もわからない。
 すると、聖さんがあたしの耳元で言った。
「どうしよう?お迎え来ちゃったよ」
「……え……?」
 あたしは初めて、部屋の中をちゃんと見た。
 窓から木漏れ日が差し込んでいる。つやつやと磨かれた無垢材の床に、高価たかそうな家具が配置された部屋だった。
 伊勢崎という男は、黒っぽいスーツの下にやはり柄の入ったシャツを着ている。周囲には手下らしい男たち。
 そして。
「佐伯……さん……?」
 武藤さんもいる。
「あ……」
 両脚から力が抜けて、あたしは立っていられなくてその場に座り込みかけた。
 駆け寄った佐伯があたしを抱き止める。右手のギプスが痛々しい。
「迎えに来た。帰るぞ」
 その時。
「あぐ!」
 首輪を引っ張られて、あたしは床を引きずられた。
「佐伯さん、まだ話は終わってませんよ」
 聖さんはあたしの首輪を引き上げて無理矢理立たせる。
「かはっ……」
 首の後ろに体重がかかって、苦しさのあまりあたしは聖さんにしがみついた。
「やめろ!」
 佐伯が怒鳴った。
「うるせェんだよ龍二ィ」
 伊勢崎が佐伯を殴りつける。
「っ……」
「あーあーあー、だだ漏れじゃねーかァー」
 あたしが引きずられた跡が、白い液体で濡れていた。
 伊勢崎がずかずかとやってきて、あたしの膣に乱暴に指を突っ込む。
「や……っ!」
 あたしの中からどくどくと精液が溢れてくる。
「おいおい聖ィー、お前、何回中出ししたんだよ」
「さあ?一晩中やってたから」
「聖!……てめぇ!」
「待って待って、佐伯さん。ユリカちゃんの気持ちも聞いてあげましょ?」
 唐突に、聖さんが言った。
「……は?ふざけん……」
「ねぇユリカちゃん。君はどうしたいの?」
 そう言って、聖さんは腕の中のあたしの耳を噛む。
「ぁん……っ」
 昨夜のとめどないセックスがよみがえる。
「言ったでしょ。何も考えなくていいって。それとも」
 そう言って、傍らにあるテーブルの上に置いてある、一冊の雑誌を手に取った。
「佐伯さんにも教えちゃう?ユリカちゃんの大好きなパパのこと」
 それは、古い週刊誌だった。
 そして聖さんが開いたページに載っていたのは――。
「……!」
 頭がフリーズした。
「あ……あ……あ……かは……っ……」
 視界がチカチカする。
 週刊誌の文字が目に焼き付く。『強制わいせつ容疑者逮捕!実の娘に10年間性的いたずらか』
「ユリカちゃんのことぜーんぶ知ったら、抱いてくれるかなぁ?佐伯さん」
 聖さんの声が、頭の中で反響する。
「かはっ……ひくっ……ひくっ……はッ……はッ、はッ」
 心臓が喉に詰まったみたいだ。息が吸えない。
「ひぃ………ッ―――――」
「ユリカ!」
 遠くで佐伯の声がした、気がした。

「おい、ケンカ要員」
 佐伯がぼそりと言った。
「はいよっと」
 いきなり武藤さんが佐伯のすぐ横にいた男を殴り倒した。一瞬だった。
 そのまま武藤さんは伊勢崎の手下を三人ほどしてしまう。え、何が起こったの?武藤さん、キャラ変もはなはだしい。あたしは驚きのあまり過呼吸どころか息を止めてしまった。
 佐伯はまっすぐ聖さんに掴みかかってきた。
「あ、佐伯さん、やります?その手で」
 聖さんは不敵な笑みを浮かべ、あたしの鎖を離した。と同時に、佐伯の腹を蹴り上げる。
「ぐはっ」
「ねぇ佐伯さん、あんた離婚した奥さんのところに娘がいるんだってね」
「……それがなんだ。関係ねぇだろが」
「いやー、娘さんに会いたいだろうなって。でもこんな商売じゃ顔向けできなくない?」
 聖さんが振り下ろした拳を、佐伯は辛うじて受け止める。
「結局さあ、ユリカちゃんもあんたも、父娘おやこのやり直しをしてるだけなんじゃないの?」
 聖さんが更に蹴りを繰り出して、佐伯は乱闘している武藤さんのところまで吹っ飛ばされた。
「ちょっと佐伯さん、邪魔!」
「悪い。ケンカは弱いんだよ。……何ごちゃごちゃ言ってんだあいつは」
 佐伯は武藤さんに謝るとよろよろとこっちに来て、あたしの手枷のベルトに手をかけた。左手なので外すのに手間取っている。
「待てやコラァ!」
 伊勢崎が吠えて、佐伯の肩に掴みかかった。
 佐伯は振り向きざま、ギプスのはまった右腕で伊勢崎を殴る。
「ぐっ……は!」
「すいません伊勢崎さん、こいつは、やれない」
「龍二ィー、てめぇ誰に逆らってんのか分かって言ってんのか!?」
「金は払いますよ。だからもううちに手出ししないでくれ」
 手のベルトが片方だけ外れた。佐伯は羽織っていたジャケットをあたしに着せる。
「ごめん、担げねぇや。走るぞ」
 あたしは佐伯に手を引かれるままにドアまで走った。ドアの前で、佐伯が武藤さんを呼ぶ。
「武藤!」
 武藤さんはまだ聖さんと闘っていた。武藤さんは防戦一方で、上背のある聖さんが優勢に見える。が。
「……武藤だって?」
 一瞬、聖さんの動きが止まった。その瞬間、武藤さんの蹴りが聖さんの股間に入った。
「ぐはっ」
 聖さんがその場に崩折れる。
「くっ……そ」
「聖さん、いつまでも大きな顔できると思わないほうがいいですよ」
「……武藤って、あんたまさか……」
 聖さんが何か言いかけたが、武藤さんは無言で一瞥をくれてその場を離れた。

 外には事務所の車が停まっていた。武藤さんが運転席、佐伯とあたしは後部座席に乗り込む。
「……とりあえず事務所、行きます?」
「事務所はまだ人いるだろ」
 外はまだ明るい。今日は何曜日なんだっけ、とぼんやり思う。
「お前、自分ち帰るか?」
 あたしは答えられなかった。一人になりたくなかった。答える代わりに、佐伯にしがみついて眼を閉じた。眠ってしまえば佐伯はきっとあたしを一人にはしないだろう。
「……中野に行くか」
 佐伯が独り言のように言った。

   *****

 中野の雑居ビルの一室が、佐伯の自宅だった。
 がらんとした部屋の片隅にはミニキッチンと小さな冷蔵庫があり、壁際に寄せてマットレスが無造作に置かれている。窓際には古いパソコンと機材の乗ったデスクがふたつ、その横には、本棚に収まりきらずに床にまで溢れた、たくさんの本や雑誌。
「僕、ちょっとコンビニで色々買ってきますね。冷蔵庫空っぽでしょ」
 武藤さんが買い物に行っている間にシャワーを浴びた。その部屋に浴室はなく、代わりにガラス張りのシャワールームがあった。あたしがシャワーを浴びている間、佐伯は狭いバルコニーでタバコを吸っていた。
 着替えは佐伯がどこからか引っ張り出してきたTシャツを借りた。下着は武藤さんが買ってきてくれた。Tシャツはかすかにタバコ臭かった。
「じゃ僕、ちょっと戻りますね」
 買ってきた食料を冷蔵庫に詰めると、武藤さんは言った。
「ユリカさんの私物とか回収しないと」
「一人で大丈夫か?」
「一人でなんか行きませんよ」
 武藤さんは意味ありげに微笑って、出ていった。

「ここはな、昔事務所で使ってたんだよ。その頃は社長と俺と、あと二人くらいしかいなくてな……だんだんスタッフの人数が増えてきたんで、渋谷に引っ越したんだ。コーヒーでもいれられたらいいんだが、ほとんど帰ってないから何もなくてな」
 そう言って佐伯はペットボトルのお茶をくれた。
「……あの伊勢崎って人に、あたしを売ったって、ほんと?」
 あたしは、今日はじめてちゃんと喋った。ずっと知りたかったこと。
「そう言われたのか、あいつらに」
 佐伯は本に埋もれるように置いてあったウィスキーの瓶を見つけると、キッチンに置いてあったグラスをゆすいで、瓶に半分だけ残っていたウィスキーを注いだ。
「伊勢崎には借りがあって……巻き込んで悪かった。お前が欲しいっていう話は何度も断ったんだが、まさかここまで手出ししてくると思わなかったんだ」
 佐伯に謝られると、なんだかこちらが申し訳ないような気分になった。
「その……怪我も、あの人たちにやられたの?」
「こんなのは大したことじゃねぇよ。お前のほうが――」
 佐伯は唇を噛んだ。
「……ごめんな。酷い目に遭わせちまった」
 そう言って佐伯があたしの頬を撫でたので、あたしは思わず口が滑ったんだ。
「佐伯さん、キスして」
「……」
 佐伯は黙った。
 沈黙が長すぎて、外の雑踏がうるさいくらいに聞こえてくる。
「佐伯、さん」
 あたしは絞り出すように言った。
 拒否されるのは辛い。
 一人になるのが怖い。
 だから言えなかった。だけど。
「好きだよ。抱いてよ」
 あのとき、もう二度と佐伯に逢えないかと思った。
 そしてそんな日は、きっといつか、ほんとうに来てしまう。
「……ダメ?」
「……わりい、俺は」
「じゃ、名前、呼んでよ。ユリカって」
「……ユリカ」
「佐伯さん」
「ユリカ」
 佐伯の手が、あたしの顎を掴んだ。
「ん……っ」
 タバコ臭い指。
 噛み付くようなキス。
 ウィスキーの香り。
「ん……ん……」
 口唇を重ねたまま、佐伯はあたしをベッドに押し倒した。
「ユリカ」
 そのままあたしの首筋に口唇を這わせる。
「あ……っ」
「忘れろよ、あいつのことは」
 佐伯の手がシャツの下に滑り込んで、するりと脱がせた。
 乳房を包み込むように愛撫して、舌を這わせる。
「あんっ……」
 乳首にやんわりと歯を立てられて、あたしはたまらずからだをくねらせた。
 それを待っていたかのように、佐伯の指が秘所を割ってくる。
 敏感な突起を優しくこすり上げられて、躰がびくんと跳ねる。
「ああっ……!」
 思わず叫びかけたあたしの口唇を、佐伯の口唇が塞ぐ。突起を優しく責めたてながら、快感に喘ぐあたしの口を貪る。
「くっ……はぁっ……んくっ……んんん――……っ……」
 とめどない刺激に翻弄されて、からだが緊張と弛緩を繰り返す。
 それが果てしなく続いた後に、とうとう佐伯の指がとろとろに濡れそぼった膣に触れた。
 あたしの声が、佐伯の口の中に飲み込まれていく。
 佐伯の指が、あたしの中の感じる場所を探し当てる。あたしは背中を仰け反らせて反応する。
「やあ、ああっ!」
 快感の波から逃げるようにうつ伏せたあたしの背中を、佐伯の舌が這う。
 そのまま両脚を拡げて、溢れた蜜を舌ですくい取る。
「ああ!やめ、さえきさ……っ!」
 あたしは恥ずかしさのあまり腰を浮かせて逃げようとしたが、佐伯はそれを許さない。押し退けようとした手を握り、肘で脚を押さえ込んで、そこに舌を射し入れた。
「あ、あーっ……!」
 あたしは決壊した。
 佐伯は濡れてしまった口元を拭いて、また、あたしのうなじにキスをする。
「ユリカ……」
 背後からあたしを抱きしめて、乳首を転がすように愛撫する。
「あん……やぁん……」
 一度達した後の浮遊感に漂いながら、あたしはまた緩やかに昂ぶっていく。
 そんなあたしの様子を観察しながら、佐伯は再びじっくりとあたしをとろかしていく。
 先程までの愛撫で突起はすっかり膨らんで、膣はひたひたと侵入者を待っている。
 そこに、佐伯はまた指を這わせていく。
「さえき……さん、あたし……もう、ああ……っ」
 あたしは佐伯に懇願した。そこに挿れて欲しくてたまらなかった。
 そんなあたしに、佐伯は優しくキスをした。何度も、何度も。
「……忘れてしまえ、ユリカ」
 ほかの男のことなんか。

 その晩佐伯は、指だけであたしを何度も狂わせて、舌だけであたしを味わい尽くした。
 あたしは佐伯がほしくてほしくて泣いた。

 やがて快感に疲れ果てて、睡魔が襲ってきた。
 佐伯があたしを優しく撫でている。さらさらと触れ合う肌が気持ちいい。少しだけ高い佐伯の体温が愛おしい。
 安心感に包まれて眠りに落ちながら、あたしは悲しい言葉を聞いた。
「お前、もうこの仕事辞めろ」
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