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第三章 王宮編
伝令
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イシュラヴァール王が参事会を招集して会議を開いていたところに、伝令が駆け込んできた。
「申し上げます!街道21ポイントで警備兵が砂漠の戦闘部族と衝突したと」
王は僅かに眉を顰めた。先日シャルナクの船が座礁した件がなかなか片付かず、機嫌が悪い。
砂漠の街道には拠点ごとに番号が付けられている。21ポイントは辺境にある砦のひとつだ。王国の力が及びにくい辺境地域は、いくつもの部族が混在していることもあり、よく反乱が起きる。
「いつもの小競り合いだろう。シハーブ、片付けておけ」
王が命じる。会議には、シハーブを筆頭とする側近も同席していた。
「今、正規軍は動かせません。傭兵隊を派遣します」
シハーブはそう言って、席を外した。
参事たちは議論に戻る。議題はアズハル湾で海賊に拿捕され、膠着状態になっているシャルナク船の対応についてだ。
「シャルナクから再三、抗議の書簡が届いている。イシュラヴァールは即刻船を解放し、海賊と共に引き渡せと。今朝届いた書簡では、さもなくば軍事攻撃に出るとまで」
「なんと。それでは海賊がイシュラヴァールの手先だとでも言いたげではないか!」
「少なくともシャルナクにはそう思われているでしょうね」
「こちらが身代金を払えば、シャルナクも溜飲を下げるのでは?」
「どうだかな。下手をすると自作自演とも取られかねん」
「弱気になってどうする。あくまで対等に交渉すべきだ」
「船には大砲が積んであったとも聞くぞ。本当に商船なのかも怪しいではないか。強気にいかねば、相手が大国だからといって舐められていいのか」
パァン、とガラスの砕ける音がして、一同は口を閉ざした。
無言でやり取りを聞いていた王が、脇に控えた小姓が手にしていた水差しを取って壁に叩きつけたのだ。
「――面倒だ。スカイ、レーにいる海軍を二隻残して全艦アズハルに回せ。海賊を一掃してこい。シャルナク船との話はそれからだ」
「御意」
にっこりと笑って、スカイは片足を引いて恭しく礼をした。その氷の色の両眼が酷薄に光る。そこへシハーブが戻ってきた。
「21ポイントへはザハロフ隊を向かわせました」
それぞれの紛争地への対応策が決定し、ひとまず参事会は閉会した。
「気に入らんな」
その夜「星の間」は静かだった。スカイはレーに向かっていて不在だ。今頃は船の上だろう。
「海と陸、同時に来ましたね。偶然にしては……」
シハーブが王の心中を言葉にした。
「気に入らん」
王は繰り返した。
「シャルナク船と砂漠の戦闘部族。繋がりがあるはずがない」
シャルナクは海の向こうの大国である。砂漠の奥で細々と暮らす少数民族との接点は、皆無と言っていい。
「繋がりのない者同士が、イシュラヴァールの西と東で、同時に揉め事を起こす……」
シハーブは考え込んだが、頭をひとつ振って言った。
「どう考えても偶然ですな。兵をやりましたから、どちらも三日もすれば片付くでしょう。大事には至りません」
「だから気に入らんのだ。何が目的だ?」
「……目的?」
「繋がりがないのではない。見えていないのだ。そう考えてみよ」
「まさか」
うすら寒い風が首筋を撫でて、シハーブはぞくりとした。
「……まさか、謀反を?」
「謀反か侵略か――いずれにせよ、今ではない。三日で片付くならな」
「申し上げます!街道21ポイントで警備兵が砂漠の戦闘部族と衝突したと」
王は僅かに眉を顰めた。先日シャルナクの船が座礁した件がなかなか片付かず、機嫌が悪い。
砂漠の街道には拠点ごとに番号が付けられている。21ポイントは辺境にある砦のひとつだ。王国の力が及びにくい辺境地域は、いくつもの部族が混在していることもあり、よく反乱が起きる。
「いつもの小競り合いだろう。シハーブ、片付けておけ」
王が命じる。会議には、シハーブを筆頭とする側近も同席していた。
「今、正規軍は動かせません。傭兵隊を派遣します」
シハーブはそう言って、席を外した。
参事たちは議論に戻る。議題はアズハル湾で海賊に拿捕され、膠着状態になっているシャルナク船の対応についてだ。
「シャルナクから再三、抗議の書簡が届いている。イシュラヴァールは即刻船を解放し、海賊と共に引き渡せと。今朝届いた書簡では、さもなくば軍事攻撃に出るとまで」
「なんと。それでは海賊がイシュラヴァールの手先だとでも言いたげではないか!」
「少なくともシャルナクにはそう思われているでしょうね」
「こちらが身代金を払えば、シャルナクも溜飲を下げるのでは?」
「どうだかな。下手をすると自作自演とも取られかねん」
「弱気になってどうする。あくまで対等に交渉すべきだ」
「船には大砲が積んであったとも聞くぞ。本当に商船なのかも怪しいではないか。強気にいかねば、相手が大国だからといって舐められていいのか」
パァン、とガラスの砕ける音がして、一同は口を閉ざした。
無言でやり取りを聞いていた王が、脇に控えた小姓が手にしていた水差しを取って壁に叩きつけたのだ。
「――面倒だ。スカイ、レーにいる海軍を二隻残して全艦アズハルに回せ。海賊を一掃してこい。シャルナク船との話はそれからだ」
「御意」
にっこりと笑って、スカイは片足を引いて恭しく礼をした。その氷の色の両眼が酷薄に光る。そこへシハーブが戻ってきた。
「21ポイントへはザハロフ隊を向かわせました」
それぞれの紛争地への対応策が決定し、ひとまず参事会は閉会した。
「気に入らんな」
その夜「星の間」は静かだった。スカイはレーに向かっていて不在だ。今頃は船の上だろう。
「海と陸、同時に来ましたね。偶然にしては……」
シハーブが王の心中を言葉にした。
「気に入らん」
王は繰り返した。
「シャルナク船と砂漠の戦闘部族。繋がりがあるはずがない」
シャルナクは海の向こうの大国である。砂漠の奥で細々と暮らす少数民族との接点は、皆無と言っていい。
「繋がりのない者同士が、イシュラヴァールの西と東で、同時に揉め事を起こす……」
シハーブは考え込んだが、頭をひとつ振って言った。
「どう考えても偶然ですな。兵をやりましたから、どちらも三日もすれば片付くでしょう。大事には至りません」
「だから気に入らんのだ。何が目的だ?」
「……目的?」
「繋がりがないのではない。見えていないのだ。そう考えてみよ」
「まさか」
うすら寒い風が首筋を撫でて、シハーブはぞくりとした。
「……まさか、謀反を?」
「謀反か侵略か――いずれにせよ、今ではない。三日で片付くならな」
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