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第六章 アルナハブ編
バラドの姦計1
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日が暮れてだいぶたってから、エディたち一行はバラドの市場についた。先を急ぐ強行軍で、しかも極秘の任務である。賑やかな街に繰り出すこともなく、宿を確保すると早々に自室で休んだ。
宿はふたつに分かれ、アトゥイーとエディは個室で、他は2~3人ずつの相部屋になった。
夜半、音もなく室内に侵入してきた気配に気付いたのは、王の寝所に侍っていたときの緊張感が抜けていないせいか、それともどんなに疲れていても熟睡できない、染み付いた習性のせいか。
とにかくアトゥイーは、その気配に気づいた。
(二人……いや、三……四人……)
まずい、と思った。相手次第だが、二人までならほぼ確実に勝てる。が、四人は。
寝ている身体に手が伸びてきたのを察して、ばさ、と掛布を蹴り上げた。
「――っ、こいつ、起きてる!」
「くそっ――」
くぐもった声に聞き覚えがある。アトゥイーはくるりと起き上がり、枕元に置いてあった剣を掴んだ。
(この声……陸軍の)
その瞬間、背後から首に腕が巻き付いたかと思うと、力任せに床に叩きつけられた。
――ダァン――!
「――――!!」
衝撃とともに呼吸が途切れる。
「――か……はっ……」
おもわず手が剣を放す。続けざまに鳩尾に一撃を食らって、アトゥイーは意識を失った。
落ちていたのは数分だろうか。
目を開けると、数人の男が自分を見下ろしていた。皆、ターバンで顔を隠している。
「気付いたぜ」
その声に聞き覚えはなかった。
(さっきの声は確かに、陸軍から連れてきた兵士だった。仲間がいたのか)
アトゥイーは両手を後ろ手に縛られ、床に転がされていた。口に汗臭い布が乱暴に押し込まれ、吐き気がこみ上げる。
「さっさと殺しちまおうぜ」
「まあ待て。できるだけ手酷く痛めつけてから殺せってご要望だ。それにな、この女、なんと、王さまのお気に入りだってよ」
「なに……!?本当か?」
「ああ。どんな女か気にならねぇか?」
明日の出発も早い。万一の時に備え、アトゥイーは湯も使わず、軍服のままだった。その襟元に、男の手が掛けられた。
「報酬はもう頂いてる――じっくり愉しませてもらってから殺しても遅くはねぇよ」
男が思い切り制服を引き、ボタンが弾け跳んだ。
「――ちっ」
制服の下の分厚い着込みを見て、男は舌打ちする。
「色気の欠片もねぇな。こんなのが本当に国王の情婦なのか?」
言いながら男は腰に提げていたナイフを抜くと、着込みを切り裂いた。そのままズボンのベルトも引きちぎる。
アトゥイーは声も出せないまま、男を睨みつけた。と、男の平手が頬を打った。
「いい目つきしてんじゃねぇか。これから犯されまくるってのによぉ!」
切り裂かれた前を大きく開かれて、あらわになった胸を乱暴に揉みしだかれる。
「――――!」
強烈な嫌悪感に、アトゥイーは思わず身を捩った。
(こんなことは、今までだってたくさんあったのに)
ズボンに手が差し込まれ、男の手がアトゥイーの陰部に触れる。
(いや――いや――!)
マルスの手が、唇が、愛した躰を、穢さないで――。
*****
そこここで不穏な動きはあれど、ララ=アルサーシャの夜はまだ穏やかだった。
後宮の奥庭では、サラ=マナが大輪の百合に顔を寄せて、その強い芳香を吸い込んだ。
王の寝所には、今宵も誰も呼ばれていない。
「――そろそろ、バラドあたりに着いているかしらねぇ?」
後ろに控えた女官はそれには答えず、そっとガウンを着せかけた。
「夜は冷えます――そろそろ中へ」
サラ=マナは白い百合の花びらをもぎ取ると、暗い地面にはらはらと落とした。
数日前、アルナハブへの密使の護衛をするという兵士と会った。品のない笑みを浮かべてへりくだる無骨な男で、こんな男と会話をしなければならないことにすら苦痛を覚えるほどだった。それが一層、企みへの期待を高めた。あの女がこの下品な男に陵辱されて、鼠のように殺される姿を想像すると、楽しくすらあった。
『ただ殺すんじゃなく、これ以上ないというほどに貶めておやりなさい――奴隷の分際で、わたくしの陛下に手を出した報いよ――』
宿はふたつに分かれ、アトゥイーとエディは個室で、他は2~3人ずつの相部屋になった。
夜半、音もなく室内に侵入してきた気配に気付いたのは、王の寝所に侍っていたときの緊張感が抜けていないせいか、それともどんなに疲れていても熟睡できない、染み付いた習性のせいか。
とにかくアトゥイーは、その気配に気づいた。
(二人……いや、三……四人……)
まずい、と思った。相手次第だが、二人までならほぼ確実に勝てる。が、四人は。
寝ている身体に手が伸びてきたのを察して、ばさ、と掛布を蹴り上げた。
「――っ、こいつ、起きてる!」
「くそっ――」
くぐもった声に聞き覚えがある。アトゥイーはくるりと起き上がり、枕元に置いてあった剣を掴んだ。
(この声……陸軍の)
その瞬間、背後から首に腕が巻き付いたかと思うと、力任せに床に叩きつけられた。
――ダァン――!
「――――!!」
衝撃とともに呼吸が途切れる。
「――か……はっ……」
おもわず手が剣を放す。続けざまに鳩尾に一撃を食らって、アトゥイーは意識を失った。
落ちていたのは数分だろうか。
目を開けると、数人の男が自分を見下ろしていた。皆、ターバンで顔を隠している。
「気付いたぜ」
その声に聞き覚えはなかった。
(さっきの声は確かに、陸軍から連れてきた兵士だった。仲間がいたのか)
アトゥイーは両手を後ろ手に縛られ、床に転がされていた。口に汗臭い布が乱暴に押し込まれ、吐き気がこみ上げる。
「さっさと殺しちまおうぜ」
「まあ待て。できるだけ手酷く痛めつけてから殺せってご要望だ。それにな、この女、なんと、王さまのお気に入りだってよ」
「なに……!?本当か?」
「ああ。どんな女か気にならねぇか?」
明日の出発も早い。万一の時に備え、アトゥイーは湯も使わず、軍服のままだった。その襟元に、男の手が掛けられた。
「報酬はもう頂いてる――じっくり愉しませてもらってから殺しても遅くはねぇよ」
男が思い切り制服を引き、ボタンが弾け跳んだ。
「――ちっ」
制服の下の分厚い着込みを見て、男は舌打ちする。
「色気の欠片もねぇな。こんなのが本当に国王の情婦なのか?」
言いながら男は腰に提げていたナイフを抜くと、着込みを切り裂いた。そのままズボンのベルトも引きちぎる。
アトゥイーは声も出せないまま、男を睨みつけた。と、男の平手が頬を打った。
「いい目つきしてんじゃねぇか。これから犯されまくるってのによぉ!」
切り裂かれた前を大きく開かれて、あらわになった胸を乱暴に揉みしだかれる。
「――――!」
強烈な嫌悪感に、アトゥイーは思わず身を捩った。
(こんなことは、今までだってたくさんあったのに)
ズボンに手が差し込まれ、男の手がアトゥイーの陰部に触れる。
(いや――いや――!)
マルスの手が、唇が、愛した躰を、穢さないで――。
*****
そこここで不穏な動きはあれど、ララ=アルサーシャの夜はまだ穏やかだった。
後宮の奥庭では、サラ=マナが大輪の百合に顔を寄せて、その強い芳香を吸い込んだ。
王の寝所には、今宵も誰も呼ばれていない。
「――そろそろ、バラドあたりに着いているかしらねぇ?」
後ろに控えた女官はそれには答えず、そっとガウンを着せかけた。
「夜は冷えます――そろそろ中へ」
サラ=マナは白い百合の花びらをもぎ取ると、暗い地面にはらはらと落とした。
数日前、アルナハブへの密使の護衛をするという兵士と会った。品のない笑みを浮かべてへりくだる無骨な男で、こんな男と会話をしなければならないことにすら苦痛を覚えるほどだった。それが一層、企みへの期待を高めた。あの女がこの下品な男に陵辱されて、鼠のように殺される姿を想像すると、楽しくすらあった。
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