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前編
二面性の美青年
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ここは何処か? さぁ、一体何処なのでしょうかねぇ。少なからず、君が知る世界ではないだろうさ。
ところで君はこの本を知っている? あぁ、僕には読めないんだ。なんてったって、異世界の文字だからね。君の世界の文字だろう、調べはついているんだ、嘘をついても無駄だよ!
え、少し違う? 何が違うのさ。
自分はニホンジンで、チュウゴクジンじゃない……? あはは、全くもって何を言っているのか分からないよ! それは、種類の違いかい? まぁまぁいいじゃない。チキューにいるもの皆兄弟。君の所の言葉だろ?
まぁいいさ。チュウゴクジンじゃなくとも、君はこの本のタイトルは読めるだろ。教えてよ!
サイユウキ? へー、そりゃ面白い名前だ。ありがとね!
……え、僕が誰かって?
そうだなぁ。うん、君には特別に教えてあげるよ。
僕の名前は 。超越者っていうんだけどね、君の所で言う神や仏、その類いのモノだよ。
なーに不思議そうな顔をしているのさ。
ん、なぁに。僕の名前? 聞き取れなかったの? んー、まぁいいよ。もう一回教えてあげる。
僕はね、 だよ。
ふっふー、もう教えてあげないっ! 教えて欲しいのなら等価交換だよ。
そうだな、今あって等価なのは……君の、魂。
冗談かって? あはは、さぁ、どうでしょーかっ!
ははっ、君面白いね。……うん、気に入った。ねぇ君、一緒に遊ぼうか。
◆
【楽園遊記】
◆
朝起きて、何時ものように朝食を食べるために部屋に向かっていた。その途中で、すれ違った女中に挨拶をすると、彼女らは赤くなった顔を隠すような仕草をしながら言葉を返す。
「おはよう、白刃」
「師匠、おはようございます」
その後に師匠とも挨拶を交わし、去って行く彼女らを笑顔で見送った。
「白刃は本当に、女人に好かれるな」
その後に、師匠は相変わらず堅い表情でそんなことを言ってくる。今更モテると男を妬んだりするようなお方でもないが、あはり少しは気になる所があるのだろう。そんな彼に、白刃はさらりと言う。
「私なんかよりも師匠の方が良い男ですのにね」
「胡麻をすっても何も出さんぞ」
何も出さないとは言うが彼は満更でもなさそうで、刃を取ってどこからか飴玉を握らせてきた。
相変わらずの子ども扱いに、白刃は微苦笑を浮かべる。
「師匠、私はもう子どもではないのですよ?」
「そう言われてもな、私からすれば、お前があの木に登って降りられなくなったのがつい昨日のことのようだよ」
師匠は庭に佇む大きな庭木を横目に笑う。
「もう、昔の話はよしてくださいよ」
彼は実の父親ではないが、赤子の時に両親を殺された白刃からすれば、育ててくれた師匠は父親のようなモノであろう。出された幼い自分の話を聞くと、少々恥ずかしいモノがある。
「師匠、そろそろ朝食のお時間ですよ」
「あぁそうだな。白刃も、きちんと食べるのだぞ」
「はい」
師匠を見送ると、白刃は自身の部屋に戻る。廊下を渡ると、すれ違った女中達に挨拶をされる。それを返すたびに、女中は頬を赤らめたり、本人の姿が見えなくなってから女中同士で控えめな声でキャッキャとしていた。
部屋に入ると、直ぐに扉を閉める。その瞬間に、微笑みをすっと表情筋の奥にしまった。
ああ言った対応をすれば人からの受けがいいのは知っている。誰だって裏と表をもっているだろう?
さて、そんな白刃だが、ある日師匠に話があると告げられる。廊下で話すようなこともでもないようで、部屋で本題に入る事になった。
「白刃、お前に頼みがある」
目の前で正座をする師匠は、真剣な顔をして話し出す。
「お前には、とある者達を連れて天ノ下に行って欲しい」
その要求に、白刃は少しだけ自身の耳を疑った。
「天ノ下……楽園の事ですか?」
天ノ下は、別名「楽園」と呼ばれる場所だ。そこには人間を遥かに超越した者が住んでおり、自然が溢れる美しい場所と言われる。
師匠がそんな冗談を言うとも思えないが、そんな場所が実際あるとも思えない。白刃が疑いの眼差しを向けている事には気付いたようで、師匠は咳払いを一つしてから付け加える。
「楽園は、実在する」
はっきりと断定する形で、そう言い切った。
「私もにわかには信じられん。しかし、昨夜に超越者が訪れてきたのだ」
「超越者……」
その存在は、この世界に存在する神や仏のようなもの。信じている者もいれば、そこまで信じていない人もいるが、白刃はどちらかと言えば後者だ。
そんな事を突如言われて、相手が師匠でなければ疑っていただろう。しかし、師匠が言うのだ、嘘ではないと信じ頷いた。
「あぁ。しかし、そのお方からは超越なる力を感じた。あのお力は超越者のモノで間違いない」
「そのお方が告げたのだ。白刃にその者達を連れて自分のいる天ノ下に向かわせろと」
「なるほど」
「分かりました。その話、お受けしましょう」
話は大方理解できた。白刃はにこりと微笑み、その頼みを受け入れることにした。
師匠はその返事にうむと頷いたが、不安要素があるみたいだ。
「そういってくれると信じていた。しかしだな、少し問題があってだな」
「問題ですか。それは、どのような?」
「その共にする者が、中々の曲者でな……」
訊くと、師匠は苦い顔をして告げる。そして、その四人の情報を簡単に教えてくれた。
「まず、お前も知っているであろう、大悪党の尖岩だ。とんだヤンチャ坊主の猿使い、昔、多くの魔の者を唆し大暴れし、言い伝えられているように今は岩山の牢に囚われている」
「そして、覇白だ。かの龍王の息子だが、数年前にとある不祥事で龍族から抜けて、今では荒野で野良龍として過ごしているそうだ」
「もう一人は山砕という男だ。猪科の生物と意思疎通が出来るようだが、それを使って悪さをすることもしばしばあった。やはり最近は大人しいようだが」
「最後の一人は、川の上流部に住む魔の者擬きだ。名は、鏡月と言う」
言葉にすればあっさりとしているが、内容を汲み取るに確かに曲者だろう。かつての大悪党がいる時点でお察し、普通の奴等ではない。
「白刃、これでも受けてくれるか?」
念のための確認といった所だろう。師匠としても受けて欲しい以来である事には変わりないが、本人の意思を尊重したい。
「お任せください」
人の好い笑顔でそう答えた白刃は、これから愉しくなるその一心だった。
「っくしゅ……はぁ、だぁれか俺の事噂でもしてんかねぇ」
「ウッキー」
「ははっ、そーだなぁ」
「刑期は終わったし、そろそろ外に出てぇよなぁ」
ところで君はこの本を知っている? あぁ、僕には読めないんだ。なんてったって、異世界の文字だからね。君の世界の文字だろう、調べはついているんだ、嘘をついても無駄だよ!
え、少し違う? 何が違うのさ。
自分はニホンジンで、チュウゴクジンじゃない……? あはは、全くもって何を言っているのか分からないよ! それは、種類の違いかい? まぁまぁいいじゃない。チキューにいるもの皆兄弟。君の所の言葉だろ?
まぁいいさ。チュウゴクジンじゃなくとも、君はこの本のタイトルは読めるだろ。教えてよ!
サイユウキ? へー、そりゃ面白い名前だ。ありがとね!
……え、僕が誰かって?
そうだなぁ。うん、君には特別に教えてあげるよ。
僕の名前は 。超越者っていうんだけどね、君の所で言う神や仏、その類いのモノだよ。
なーに不思議そうな顔をしているのさ。
ん、なぁに。僕の名前? 聞き取れなかったの? んー、まぁいいよ。もう一回教えてあげる。
僕はね、 だよ。
ふっふー、もう教えてあげないっ! 教えて欲しいのなら等価交換だよ。
そうだな、今あって等価なのは……君の、魂。
冗談かって? あはは、さぁ、どうでしょーかっ!
ははっ、君面白いね。……うん、気に入った。ねぇ君、一緒に遊ぼうか。
◆
【楽園遊記】
◆
朝起きて、何時ものように朝食を食べるために部屋に向かっていた。その途中で、すれ違った女中に挨拶をすると、彼女らは赤くなった顔を隠すような仕草をしながら言葉を返す。
「おはよう、白刃」
「師匠、おはようございます」
その後に師匠とも挨拶を交わし、去って行く彼女らを笑顔で見送った。
「白刃は本当に、女人に好かれるな」
その後に、師匠は相変わらず堅い表情でそんなことを言ってくる。今更モテると男を妬んだりするようなお方でもないが、あはり少しは気になる所があるのだろう。そんな彼に、白刃はさらりと言う。
「私なんかよりも師匠の方が良い男ですのにね」
「胡麻をすっても何も出さんぞ」
何も出さないとは言うが彼は満更でもなさそうで、刃を取ってどこからか飴玉を握らせてきた。
相変わらずの子ども扱いに、白刃は微苦笑を浮かべる。
「師匠、私はもう子どもではないのですよ?」
「そう言われてもな、私からすれば、お前があの木に登って降りられなくなったのがつい昨日のことのようだよ」
師匠は庭に佇む大きな庭木を横目に笑う。
「もう、昔の話はよしてくださいよ」
彼は実の父親ではないが、赤子の時に両親を殺された白刃からすれば、育ててくれた師匠は父親のようなモノであろう。出された幼い自分の話を聞くと、少々恥ずかしいモノがある。
「師匠、そろそろ朝食のお時間ですよ」
「あぁそうだな。白刃も、きちんと食べるのだぞ」
「はい」
師匠を見送ると、白刃は自身の部屋に戻る。廊下を渡ると、すれ違った女中達に挨拶をされる。それを返すたびに、女中は頬を赤らめたり、本人の姿が見えなくなってから女中同士で控えめな声でキャッキャとしていた。
部屋に入ると、直ぐに扉を閉める。その瞬間に、微笑みをすっと表情筋の奥にしまった。
ああ言った対応をすれば人からの受けがいいのは知っている。誰だって裏と表をもっているだろう?
さて、そんな白刃だが、ある日師匠に話があると告げられる。廊下で話すようなこともでもないようで、部屋で本題に入る事になった。
「白刃、お前に頼みがある」
目の前で正座をする師匠は、真剣な顔をして話し出す。
「お前には、とある者達を連れて天ノ下に行って欲しい」
その要求に、白刃は少しだけ自身の耳を疑った。
「天ノ下……楽園の事ですか?」
天ノ下は、別名「楽園」と呼ばれる場所だ。そこには人間を遥かに超越した者が住んでおり、自然が溢れる美しい場所と言われる。
師匠がそんな冗談を言うとも思えないが、そんな場所が実際あるとも思えない。白刃が疑いの眼差しを向けている事には気付いたようで、師匠は咳払いを一つしてから付け加える。
「楽園は、実在する」
はっきりと断定する形で、そう言い切った。
「私もにわかには信じられん。しかし、昨夜に超越者が訪れてきたのだ」
「超越者……」
その存在は、この世界に存在する神や仏のようなもの。信じている者もいれば、そこまで信じていない人もいるが、白刃はどちらかと言えば後者だ。
そんな事を突如言われて、相手が師匠でなければ疑っていただろう。しかし、師匠が言うのだ、嘘ではないと信じ頷いた。
「あぁ。しかし、そのお方からは超越なる力を感じた。あのお力は超越者のモノで間違いない」
「そのお方が告げたのだ。白刃にその者達を連れて自分のいる天ノ下に向かわせろと」
「なるほど」
「分かりました。その話、お受けしましょう」
話は大方理解できた。白刃はにこりと微笑み、その頼みを受け入れることにした。
師匠はその返事にうむと頷いたが、不安要素があるみたいだ。
「そういってくれると信じていた。しかしだな、少し問題があってだな」
「問題ですか。それは、どのような?」
「その共にする者が、中々の曲者でな……」
訊くと、師匠は苦い顔をして告げる。そして、その四人の情報を簡単に教えてくれた。
「まず、お前も知っているであろう、大悪党の尖岩だ。とんだヤンチャ坊主の猿使い、昔、多くの魔の者を唆し大暴れし、言い伝えられているように今は岩山の牢に囚われている」
「そして、覇白だ。かの龍王の息子だが、数年前にとある不祥事で龍族から抜けて、今では荒野で野良龍として過ごしているそうだ」
「もう一人は山砕という男だ。猪科の生物と意思疎通が出来るようだが、それを使って悪さをすることもしばしばあった。やはり最近は大人しいようだが」
「最後の一人は、川の上流部に住む魔の者擬きだ。名は、鏡月と言う」
言葉にすればあっさりとしているが、内容を汲み取るに確かに曲者だろう。かつての大悪党がいる時点でお察し、普通の奴等ではない。
「白刃、これでも受けてくれるか?」
念のための確認といった所だろう。師匠としても受けて欲しい以来である事には変わりないが、本人の意思を尊重したい。
「お任せください」
人の好い笑顔でそう答えた白刃は、これから愉しくなるその一心だった。
「っくしゅ……はぁ、だぁれか俺の事噂でもしてんかねぇ」
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