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中編
祭りは食が本題だ! 大食い大会!
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そして会場では、そこで使う料理の準備をしている。調理場では、とても大きなどんぶりを前に意気揚々と盛り付けをしている龍がいた。所謂丼ものと呼ばれる料理の具材を全て使っていそうな、とても大きな大きな物だ。
そんな調理場に清燐が足を踏み入れ、調理をしている父親に声を掛ける。
「親父、どうよ?」
「おぉ清燐! 今年もいい感じだぞぉ、超メガ盛り丼もの集めマックスデラックス! 今年は何組これを食えるかねぇ。お前も参加するんだろ?」
「おうよ! 一回食べて見たかったんだぁ、超メガ盛り丼もの集めマックスデラックス。ペアの奴もそこそこ大食いだし、二人いればなんとか食べられるだろ」
「はは、甘く見てもらっちゃ困るぞー息子よ。これを食い切れるかどうかで、勝敗は決まるようなものだ、なまっちょろく作っちゃないぜ」
我が子を自慢するかのようで、食べ物に対してだが少しだけ妬けてくる。
父や他の料理人達の傑作を見ているだけでもお腹がいっぱいになりそうになった。いや、逆にお腹がすいてきたような気もする。この為に朝ごはんを抜いたのだ。
そんな時、幼い二つの声が重なって届いた。
「「すみません! ちょっといいですか?」」
「うおっ! 元気のいい坊主じゃねぇか、どうした?」
「僕も美味しいの食べたいです! ね、金砂」
「うん! すっごく美味しそうだよね、銀砂」
双子なのであろう。同じ顔した二人の幼子が、そう申し出てくる。そして、金砂の方が参加料丁度の金を差し出してきた。
「つまりは、大会に出たいのか?」
「「はい!」」
とても元気よく返事をする双子。しかし、どうしてもこの幼子が大食い出来るようには思えなかった。
「んー、けどこの大会大食いなんだよなぁ。坊主にはちーっとばかし早いと思うぞー?」
優しく止めらせようとやってみるが、双子は引かない。
「大丈夫です! 僕達いっぱい食べる!」
「お残しした事ないんです!」
「「だから、お願いします!」」
こんな小さい子に本気でお願いされてしまったら、断るのも心苦しい。悩んでいると、息子が言ってきた。
「いいんじゃない? どうせ大人の参加者でも食い切れない人いるだろうし」
言われてみればそうだ。だったら、あまり食べられないであろう子ども二人増えたところでかわりゃしない。
「それもそうだな。坊主、もう直ぐ始まるからそこで待ってな」
「「わかりました!」」
とても嬉しそうに返事をすると、言われた場所にちょこんと座る。
「やったね銀砂」
「うん、いっぱい食べようね金砂」
純粋に可愛らしい双子の兄弟を見て、息子の幼い頃を思い出して微笑む。この子達もいつか大きくなるのだろう、他人の子ではあるが、まるで実父のような気持ちで頷いた。
しかし、ふと気になってしまった。その二人の、それぞれ違う目に付けられた眼帯だ。金砂は左目を、銀砂は右目を隠している。
あまり考えたくはない可能性はいくらでも出てくる。服も体も綺麗だし、大丈夫だとは思うが念のため尋ねておく。
「坊主、答えたくなかったら答えなくていいんだが……目、どうした?」
そうすると、双子は迷うことなく答える。
「僕達は、二人で一つなんです」
「『運命共同体』です」
笑顔で、そう答えたのだ。
さて、それから少しして。早速大会の開始時間だ。
待機場所には腹に自信がある者達が、胃袋に空きを作って待っていた。勿論、山砕と鏡月もそこにいる。
「楽しみですねぇ」
「なー! あ、そうだ鏡月。もし豚肉出たら食べてくれない? 俺、それだけは食べないからさ」
「分かりました。豚さんはお任せください!」
二人も意気込んでいると、スタッフから入場が始まるとの合図が入る。すると外の司会の明るい声が流れ込み、幕が開く。
随分待った、今日の朝食兼昼食だ。
「はーいみなさーん! 龍ノ川が誇る料理人達の料理の祭典、大食い大会へようこそー!」
「今回の出場選手は御覧の通り。みなさーん、お腹の準備はよろしいですかー? では、参りましょう! 最初はぁー? いきなりラスボス現るか!? 大会名物、超メガ盛り丼もの集めマックスデラックスです!」
どどんと出された非常に大きなどんぶり。観客席で座っている白刃は、その大きさに引いていた。
「この一皿を食べきれるかどうか、どれ程早く食べられるかが大会への勝利の肝です! ご安心下さーい、二皿目からは普通の大きさですよっ! では早速、よーいドン!」
その合図で、選手たちは一斉に箸を持つ。
「こりゃすげぇなぁ」
「いっぱい食べれますねぇ」
二人は美味しそうに積まれた具材と白米を頬張り、食していく。
最初は他の選手も自分達の食事に集中してきた。しかし、大きさが大きさだ、途中からかなり減速してきている。これが普通だ。というより、ここまで食えただけ凄いモノなのだが。だが、選手達と加えて観客の一部はざわついていた。
その意識の先には、始めた時から一向にペースが落ちない二組の選手がいる。一組は山砕と鏡月のペア、そしてもう一組は幼い双子の兄弟だ。
流石の量に、大会どうこうよりただ単に食事を楽しんでいる選手達。ここまでで減っているのは平均して半分くらいだろうか。その中で、山砕と鏡月のペアがどんぶりを空にする。
「すみません、次お願いします!」
山砕が手を上げて調理師達に合図をする。確かにその皿はまっさらで、司会も驚きの声をあげる。
「これは史上最高速度かもしれません! 十分で完食しましたー!」
すげぇー! と観客席も盛り上がる中、尖岩はその食いつき様に苦笑いを浮かべていた。
「お前、よくあいつ等の食費払えているよな」
「堅壁名義からの支援金だ。割といい額貰えてる」
「あぁ、屋敷の力であるか。納得だ」
三人がそんな会話をしていると、選手達の中から小さい子の声が響く。
「「おかわり!」」
「おーっと、ななななんと! 双子の兄弟くんが一皿目を平らげました! これは衝撃展開! あちらの兄弟にも次の料理が運ばれます」
双子の所にもやって来る、普通の大きさの料理達。それからは、その二グループのおかわりラッシュだった。
大会も終盤に近付いていくと、ほかのペアも一皿目を乗り越え二皿目に入る。しかし、もう既に試合と言う認識ではなく、食事をしている感じであった。それもそのはず、もう勝てない事は目に見えている。
「あの子ども凄いな。小さい子ってあんな食べるモノだっけ?」
「どうでしたっけ。山砕さんはどうでした?」
「んー。あぁ、俺もあんくらい食ってたかも」
訊かれて思い出し、あははと笑う。
昔から良く食べる子ではあった。それはもう、いっぱいだ。超越者が言うに、自分は本当に小さい頃は本当に草しか食べていなかったのだと思うとの事。豚と一緒に育ったのだから、まぁそうなるだろう。その反動か何かは知らないが、なんか沢山食べるようになった。
そんな事を思い出しながら、ふと尖岩達はどこにいるかなーっと思い、口の中に餃子を頬張りながら観客を見渡す。
白刃の白髪が目立ち、三人の位置は直ぐに分かった。終わったらあそこに行けば会えるなと考え、何とはなしにその横に視線をずらす。
そして、その視界に物凄く見知った顔が映った。
「っ――」
突然咽た山砕に目をやる鏡月。何が起こったか、彼は分からないだろう。
「どうしました山砕さん?」
「な。何でもないよ」
気のせいかもしれないしと、もう一度同じところに視線を向ける。しかし、やはり気のせいなどではなかった。
超越者だ。しかも、子連れ。知らない子だが、この前言っていた新しく拾った子だろう。そんな予測をしていると、ばっちしその視線が合ってしまった。
彼が声は出さずに、ニコニコ笑顔で手を振る。だから山砕は、そっと目を離した。
『なっ……今、絶対目合ったのに』
「嫌われてんじゃない?」
『そんな事ないもん!』
明らかに視線を逸らされた超越者は、少し落ち込んでいた。
さて、そんな事もあるが大会はあと五分。両者ともにどちらが勝っても可笑しくない程の食いっぷりだ。
「残りあと五分です! さぁ、優勝チームはどっちだ!? っと、ここで牛ステーキが登場です! これを食べきれるかどうかで勝敗は決まります、どうなるかー?!」
最後の一皿になるであろう、ほかほかのステーキ。とても美味しそうで、山砕も鏡月もそれにがっつく。
「んー、美味しいです!」
「やっぱステーキってのもいいよなぁ。うめぇ」
あれほど食べたと言うのに、五分もすれば食べてしまいそうだ。そして、金砂と銀砂の双子は、予想外にも手を止めていた。
「おや、双子のチーム手を止めています! お腹いっぱいになってしまったのでしょうか!?」
そう言うと、双子はきょとんとした顔でその言葉に答える。
「ううん。まだ食べられるよ。ね、金砂」
「うん。ただ、僕達牛肉は食べないの。とうさんが食べないからね。ね、銀砂」
飽く迄も、この双子は美味しいご飯を沢山食べたいだけだから。食べない物を食べる事はしないという事だ。
そこで大会終了の笛が鳴る。
「ここで終了です! 結果は御覧の通り、こちらのお二人でーす!」
その声の後、二人に拍手が送られる。
二人も本気で優勝を狙っていた訳ではないが、こうなると嬉しいものだ。
「お、ラッキー」
「やりましたね山砕さん」
喜んでいると、視界は更に会場を掻き立てる。
「しかもおー、なんとなんと! あの超越者と初代龍王様のチーム記録を超え、過去最高記録となりまーす! おめでとうございます!」
「え、超越者?」
「えぇ! お二人は、第一回にそのステーキを半分まで食べたのですよ~。それを完食されたので、記録更新となります!」
観客から「すげー!」と言う声が聞こえる。まぁ、一回目から塗り替えられなかった記録を更新したのだ、このくらいの反応はされるだろう。問題はそこではない。
超越者、そんなにいっぱい食べる人だったか?
そう思っていたのは山砕だけではないようだ。向こうにいる尖岩も同じように考え、不思議そうにしていた。
優勝賞品を受け取り、白刃達の待っている所に戻る。
「お前等すげぇなぁ。あれ、マジで食ったんだよな?」
山砕の食い意地を知っている尖岩でも、少し疑っていた。そして当然、覇白と白刃も驚きとその胃袋に疑問を抱いている。
「まさか本当に食べきってしまうとは、私は見ているだけでお腹一杯になってしまうぞ」
「あぁ。胃袋どうなってるんだ」
どうなっていると言われても、人より少し大きいかもしくは伸縮性があるかの二択だろうが。妥当な疑問ではある。山砕からしても今までも沢山食べたが、あんなに一気に行ったのは始めてだ。
「はは、流石にもうしばらくは食えないかなぁ」
「そうですね。あまり食べ過ぎても良くないですし、今日はもう控えておきましょうか」
まさかこの二人のその発言を聞ける時が来るとは。そんな意味不明な感動を覚えていると、視界に見知った超越者の姿が横切り、思わず二度見したが、見なかった事にする。
「行こうぜ! なんか他にもいっぱいあるんだろ? 覇白、案内してくれよ」
「別に構わないが、私、いつもそんなに回って無かったから、あんま知らぬぞ?」
予想外の返事に、鏡月が意外そうな顔をする。こんなに賑やかな祭りが開催されているのに、見て回らなかったのかと。
「え、じゃあ何してたんですか?」
訊くと、覇白は鏡月の純粋な瞳から目をそらして答える。
「部屋で、外を眺めていたな」
「何それ寂しっ」
順当なツッコみに怯む。しかし、仮にも王子である己が、一人で祭りを楽しむのは気が引けたのだ。小さい頃に一回だけ家族で遊んだが、なんせ小さい時だ。覚えている訳が無い。
そんな様子の彼に、白刃が言う。
「ま、今から回るんだ。丁度いいだろ」
何が丁度いいのかは分からないが、確かにやっと祭りを楽しめると思うと嬉しくなる。
「そうだな。まぁ、ある程度知っている事はあるし、観光客向けの地図もそこら中にある。それでどうにかなるだろう」
心なしか覇白の声が弾んでいたように思えたが、白刃はそれを言わないでおいた。面白そうなものがあればやって行こう、なんせ金はある。
しかも、どうやら覇白もお小遣いをもらったようだ。
「そうだ、兄上と父上と母上からお小遣いを渡されてな。大丈夫だと言ったのだが……」
そう言って懐から取り出した袋。中を開いてみると、そりゃもうお小遣いというレベルではない金額が堂々と入っている。
「うおっ、なんこの金額!?」
「これ、絶対落とすなよ」
「そんなヘマするか!」
驚く尖岩と、心配する白刃。それ程の金額なのだ。これをよくお小遣いと言って渡せるものだ、王族の財力は馬鹿に出来ない。
この民衆が住まう区間を見ても、きちんと整備されていて龍ノ川全体に滞りなく金銭が行きわたっているのが分かる。そりゃ王族もお金を持っているだろう。
「けど、こんなお金持っていて大丈夫なんですか? その、スリとかそういうのってあるモノなんですよね?」
「そこは安心してもいい。こいつはああ見えて王子だ。そうは見えないと思うが」
安心させようとしたのであろう白刃の発言だが、これには少し意義がある。
「一応言っておくが、私がそうであるのは九割お前のせいだぞ?」
「俺のだからな」
皆祭りに夢中でこちらの会話など訊いていない事を良い事に、何時ものようにそんな事を言う。龍ノ川だけではよしてほしいものだ。
そんな会話を聞いて、仲良しなのが嬉しそうに笑っている鏡月の耳に、少し離れた所での話し声が届く。
「ねぇねぇ、あの方って第二王子様だよね? 近くで見ると違うなぁ」
「ねー! それに、あの白髪の人間が白刃って子だよね、龍王妃様が言っていた。綺麗な人だぁ」
「分かる! それに一緒にいる三人の子ども、めっちゃ可愛くない?」
「それなそれな! 目の保養になりますなぁ」
自分は可愛いの部類に入るようだ。どうせならカッコいいと言われてみたいものだが、褒められているのには変わりなく、鏡月は少し気分がよくなった。
まぁそれはともかく、祭り用に創られた地図を見つけると、五人はそれでそれぞれ行きたい所を考えるが、誰一人としてまともな祭りの経験の記憶がなく、今一思い浮かばない。
「行ってみれば色々あるだろうな。なんかしたい事とかないの?」
とりあえず歩きながら、尖岩が皆に問いかける。そうすると、白刃が真顔のままで答えた。
「肉まん、食べたい」
「あぁ。肉まんなら専門店が店出していたはずだぞ」
「どっち?」
「あっちだな」
「そうか、行くぞ」
方向を示すと、白刃は自然の流れで尖岩の手首をつかんで進行方向を変えた。
三人も急いでそれに付いて行く。そんなに肉まん食べたかったのかなぁなんて。急に手を掴まれた尖岩からすれば、いきなりなんだと言う話なのだが。
離してくれない白刃に、尖岩が声を掛ける。
「ちょ、なんで手引っ張るんだよ。んな事しなくとも、ちゃんと付いて行くから」
「おや、いいではありませんか。久しぶりに遊びましょうよ、尖岩」
何故かここで外面に切り替えて応答してくる。さっきまでは何時ものだったのにと呟き、そこでハッとした。
百八十センチの男と、百六十センチの男が手を繋いで歩いていたら、それはもう仲睦まじい兄弟のような絵だ。特にこの男、すっごい顔が良い。となると、そりゃ勿論。
「ねぇ見てあの子、すっごい可愛くない?」
「あ、ほんとだ。手繋いでる、兄弟かなぁ」
こう言った反応をされる。
「良かったですね、尖岩。可愛いですって」
「何一つよかねぇ!」
確信した。こいつ、分かってやっている。
「いいじゃないですか。私、可愛いと言われたのは幼い時くらいですよ」
「そりゃお前は美人だからな、憎たらしい程に」
外面としての笑顔の映りの良さったら半端ではないのだ。見上げると、白刃は「なんでしょうか」と笑った。
「俺は、女の子にはカッコいいって言われたい」
「そうですか。じゃあ、牛乳飲みます?」
冗談か本気かの判別は付かないが、身長を伸ばすには牛乳と言う考えは尖岩がゴマ粒ほどの大きさだった頃からあるモノだ。実行したことない訳が無いだろう。
「それで伸びなかったからこの身長なんだろうが」
文句を言うと、白刃は少し驚いたように小さく目を見開き、ふっと笑う。
「それ、実行していたのですね。可愛らしい」
馬鹿にされているというより、これは完全に本音だ。
ただでさえ「怯えているお前は可愛い」とか言われているのに、これ以上こいつにそんな事を言われたくない。男としてのプライド、と言うより、大切な何かが無くなる気がする。
「なっ――。し、身長伸ばす方法っつったらそれだろ!? 真っ先にそれ試すだろ!? な、山砕!」
「えっ! ま、まぁ。俺もやった」
結果は見ての通りな訳だが。
身長を気にしている二人。鏡月はあっと声を上げ、二人に言った。
「お二人も人骨食べたら伸びるんじゃないんですか?」
これまた、冗談か本気か分からない提案だ。
「それマジで怖いから止めて!」
この純粋な少年が、文字通り骨の髄まで人を食いつくしているところは、あまり考えたくないのだ。
「はは、流石に冗談ですよ」
「とんだブラックジョークだな」
微苦笑を浮かべた覇白。本当に、真っ黒なジョークだ事と尖岩は頷くと、ふと脳裏に過る記憶があった。
覇白との初対面の記憶。こいつは最初、白刃が連れていたやけに従順な馬を丸呑みしたのだ。勿論龍の姿ではあったが、目にもとまらぬ凄いスピードだった。
「……そういやお前、最初馬食った時骨ごと行ってたよな」
言ってみると、覇白は止めろと言いたげにこちらを見る。
「お、おい。ここで言うでない。あとそれ、絶対兄上達にも言うなよ?」
「知られたらマズい事でもあるの?」
「マズい事しかないわ。そんな事知られたらまた無駄に心配される。それに、馬の丸呑みとか気品以前の問題だろう」
そう言っている間にも、突然現れる母親がここにいないかが気がかりのようで、辺りを見渡していた。
「ま、腹減ってたんじゃ仕方ないですよ。それに、お陰でお前を馬にする口実が出来ましたし、感謝していますよ」
そこで感謝されても困ると答える前に、白刃が肉まんを見つけて直ぐにそれを買いに行く。
「やっぱ白刃、肉まん好きなんだよね?」
「特にそういう訳ではありませんよ。皆さんは大丈夫ですか?」
特に今は食べたくないため、全員大丈夫だと答える。だから白刃は、自分の分だけ購入する。
「すみません、これ三つ」
「お、ありがとね! はい、肉まん三つ」
「ありがとうございます」
お金を払うと、そこにあったベンチに座って、はむはむとホカホカの肉まんを食べる。普段あんま食べないくせに、肉まん三つは難なく食べきってしまった。
「やっぱ好きだよな?」
「いいえ、違います」
笑顔で否定をする為、何の理由の否定なのかは分からないが、とりあえずそういう事にしておいた。
そんな調理場に清燐が足を踏み入れ、調理をしている父親に声を掛ける。
「親父、どうよ?」
「おぉ清燐! 今年もいい感じだぞぉ、超メガ盛り丼もの集めマックスデラックス! 今年は何組これを食えるかねぇ。お前も参加するんだろ?」
「おうよ! 一回食べて見たかったんだぁ、超メガ盛り丼もの集めマックスデラックス。ペアの奴もそこそこ大食いだし、二人いればなんとか食べられるだろ」
「はは、甘く見てもらっちゃ困るぞー息子よ。これを食い切れるかどうかで、勝敗は決まるようなものだ、なまっちょろく作っちゃないぜ」
我が子を自慢するかのようで、食べ物に対してだが少しだけ妬けてくる。
父や他の料理人達の傑作を見ているだけでもお腹がいっぱいになりそうになった。いや、逆にお腹がすいてきたような気もする。この為に朝ごはんを抜いたのだ。
そんな時、幼い二つの声が重なって届いた。
「「すみません! ちょっといいですか?」」
「うおっ! 元気のいい坊主じゃねぇか、どうした?」
「僕も美味しいの食べたいです! ね、金砂」
「うん! すっごく美味しそうだよね、銀砂」
双子なのであろう。同じ顔した二人の幼子が、そう申し出てくる。そして、金砂の方が参加料丁度の金を差し出してきた。
「つまりは、大会に出たいのか?」
「「はい!」」
とても元気よく返事をする双子。しかし、どうしてもこの幼子が大食い出来るようには思えなかった。
「んー、けどこの大会大食いなんだよなぁ。坊主にはちーっとばかし早いと思うぞー?」
優しく止めらせようとやってみるが、双子は引かない。
「大丈夫です! 僕達いっぱい食べる!」
「お残しした事ないんです!」
「「だから、お願いします!」」
こんな小さい子に本気でお願いされてしまったら、断るのも心苦しい。悩んでいると、息子が言ってきた。
「いいんじゃない? どうせ大人の参加者でも食い切れない人いるだろうし」
言われてみればそうだ。だったら、あまり食べられないであろう子ども二人増えたところでかわりゃしない。
「それもそうだな。坊主、もう直ぐ始まるからそこで待ってな」
「「わかりました!」」
とても嬉しそうに返事をすると、言われた場所にちょこんと座る。
「やったね銀砂」
「うん、いっぱい食べようね金砂」
純粋に可愛らしい双子の兄弟を見て、息子の幼い頃を思い出して微笑む。この子達もいつか大きくなるのだろう、他人の子ではあるが、まるで実父のような気持ちで頷いた。
しかし、ふと気になってしまった。その二人の、それぞれ違う目に付けられた眼帯だ。金砂は左目を、銀砂は右目を隠している。
あまり考えたくはない可能性はいくらでも出てくる。服も体も綺麗だし、大丈夫だとは思うが念のため尋ねておく。
「坊主、答えたくなかったら答えなくていいんだが……目、どうした?」
そうすると、双子は迷うことなく答える。
「僕達は、二人で一つなんです」
「『運命共同体』です」
笑顔で、そう答えたのだ。
さて、それから少しして。早速大会の開始時間だ。
待機場所には腹に自信がある者達が、胃袋に空きを作って待っていた。勿論、山砕と鏡月もそこにいる。
「楽しみですねぇ」
「なー! あ、そうだ鏡月。もし豚肉出たら食べてくれない? 俺、それだけは食べないからさ」
「分かりました。豚さんはお任せください!」
二人も意気込んでいると、スタッフから入場が始まるとの合図が入る。すると外の司会の明るい声が流れ込み、幕が開く。
随分待った、今日の朝食兼昼食だ。
「はーいみなさーん! 龍ノ川が誇る料理人達の料理の祭典、大食い大会へようこそー!」
「今回の出場選手は御覧の通り。みなさーん、お腹の準備はよろしいですかー? では、参りましょう! 最初はぁー? いきなりラスボス現るか!? 大会名物、超メガ盛り丼もの集めマックスデラックスです!」
どどんと出された非常に大きなどんぶり。観客席で座っている白刃は、その大きさに引いていた。
「この一皿を食べきれるかどうか、どれ程早く食べられるかが大会への勝利の肝です! ご安心下さーい、二皿目からは普通の大きさですよっ! では早速、よーいドン!」
その合図で、選手たちは一斉に箸を持つ。
「こりゃすげぇなぁ」
「いっぱい食べれますねぇ」
二人は美味しそうに積まれた具材と白米を頬張り、食していく。
最初は他の選手も自分達の食事に集中してきた。しかし、大きさが大きさだ、途中からかなり減速してきている。これが普通だ。というより、ここまで食えただけ凄いモノなのだが。だが、選手達と加えて観客の一部はざわついていた。
その意識の先には、始めた時から一向にペースが落ちない二組の選手がいる。一組は山砕と鏡月のペア、そしてもう一組は幼い双子の兄弟だ。
流石の量に、大会どうこうよりただ単に食事を楽しんでいる選手達。ここまでで減っているのは平均して半分くらいだろうか。その中で、山砕と鏡月のペアがどんぶりを空にする。
「すみません、次お願いします!」
山砕が手を上げて調理師達に合図をする。確かにその皿はまっさらで、司会も驚きの声をあげる。
「これは史上最高速度かもしれません! 十分で完食しましたー!」
すげぇー! と観客席も盛り上がる中、尖岩はその食いつき様に苦笑いを浮かべていた。
「お前、よくあいつ等の食費払えているよな」
「堅壁名義からの支援金だ。割といい額貰えてる」
「あぁ、屋敷の力であるか。納得だ」
三人がそんな会話をしていると、選手達の中から小さい子の声が響く。
「「おかわり!」」
「おーっと、ななななんと! 双子の兄弟くんが一皿目を平らげました! これは衝撃展開! あちらの兄弟にも次の料理が運ばれます」
双子の所にもやって来る、普通の大きさの料理達。それからは、その二グループのおかわりラッシュだった。
大会も終盤に近付いていくと、ほかのペアも一皿目を乗り越え二皿目に入る。しかし、もう既に試合と言う認識ではなく、食事をしている感じであった。それもそのはず、もう勝てない事は目に見えている。
「あの子ども凄いな。小さい子ってあんな食べるモノだっけ?」
「どうでしたっけ。山砕さんはどうでした?」
「んー。あぁ、俺もあんくらい食ってたかも」
訊かれて思い出し、あははと笑う。
昔から良く食べる子ではあった。それはもう、いっぱいだ。超越者が言うに、自分は本当に小さい頃は本当に草しか食べていなかったのだと思うとの事。豚と一緒に育ったのだから、まぁそうなるだろう。その反動か何かは知らないが、なんか沢山食べるようになった。
そんな事を思い出しながら、ふと尖岩達はどこにいるかなーっと思い、口の中に餃子を頬張りながら観客を見渡す。
白刃の白髪が目立ち、三人の位置は直ぐに分かった。終わったらあそこに行けば会えるなと考え、何とはなしにその横に視線をずらす。
そして、その視界に物凄く見知った顔が映った。
「っ――」
突然咽た山砕に目をやる鏡月。何が起こったか、彼は分からないだろう。
「どうしました山砕さん?」
「な。何でもないよ」
気のせいかもしれないしと、もう一度同じところに視線を向ける。しかし、やはり気のせいなどではなかった。
超越者だ。しかも、子連れ。知らない子だが、この前言っていた新しく拾った子だろう。そんな予測をしていると、ばっちしその視線が合ってしまった。
彼が声は出さずに、ニコニコ笑顔で手を振る。だから山砕は、そっと目を離した。
『なっ……今、絶対目合ったのに』
「嫌われてんじゃない?」
『そんな事ないもん!』
明らかに視線を逸らされた超越者は、少し落ち込んでいた。
さて、そんな事もあるが大会はあと五分。両者ともにどちらが勝っても可笑しくない程の食いっぷりだ。
「残りあと五分です! さぁ、優勝チームはどっちだ!? っと、ここで牛ステーキが登場です! これを食べきれるかどうかで勝敗は決まります、どうなるかー?!」
最後の一皿になるであろう、ほかほかのステーキ。とても美味しそうで、山砕も鏡月もそれにがっつく。
「んー、美味しいです!」
「やっぱステーキってのもいいよなぁ。うめぇ」
あれほど食べたと言うのに、五分もすれば食べてしまいそうだ。そして、金砂と銀砂の双子は、予想外にも手を止めていた。
「おや、双子のチーム手を止めています! お腹いっぱいになってしまったのでしょうか!?」
そう言うと、双子はきょとんとした顔でその言葉に答える。
「ううん。まだ食べられるよ。ね、金砂」
「うん。ただ、僕達牛肉は食べないの。とうさんが食べないからね。ね、銀砂」
飽く迄も、この双子は美味しいご飯を沢山食べたいだけだから。食べない物を食べる事はしないという事だ。
そこで大会終了の笛が鳴る。
「ここで終了です! 結果は御覧の通り、こちらのお二人でーす!」
その声の後、二人に拍手が送られる。
二人も本気で優勝を狙っていた訳ではないが、こうなると嬉しいものだ。
「お、ラッキー」
「やりましたね山砕さん」
喜んでいると、視界は更に会場を掻き立てる。
「しかもおー、なんとなんと! あの超越者と初代龍王様のチーム記録を超え、過去最高記録となりまーす! おめでとうございます!」
「え、超越者?」
「えぇ! お二人は、第一回にそのステーキを半分まで食べたのですよ~。それを完食されたので、記録更新となります!」
観客から「すげー!」と言う声が聞こえる。まぁ、一回目から塗り替えられなかった記録を更新したのだ、このくらいの反応はされるだろう。問題はそこではない。
超越者、そんなにいっぱい食べる人だったか?
そう思っていたのは山砕だけではないようだ。向こうにいる尖岩も同じように考え、不思議そうにしていた。
優勝賞品を受け取り、白刃達の待っている所に戻る。
「お前等すげぇなぁ。あれ、マジで食ったんだよな?」
山砕の食い意地を知っている尖岩でも、少し疑っていた。そして当然、覇白と白刃も驚きとその胃袋に疑問を抱いている。
「まさか本当に食べきってしまうとは、私は見ているだけでお腹一杯になってしまうぞ」
「あぁ。胃袋どうなってるんだ」
どうなっていると言われても、人より少し大きいかもしくは伸縮性があるかの二択だろうが。妥当な疑問ではある。山砕からしても今までも沢山食べたが、あんなに一気に行ったのは始めてだ。
「はは、流石にもうしばらくは食えないかなぁ」
「そうですね。あまり食べ過ぎても良くないですし、今日はもう控えておきましょうか」
まさかこの二人のその発言を聞ける時が来るとは。そんな意味不明な感動を覚えていると、視界に見知った超越者の姿が横切り、思わず二度見したが、見なかった事にする。
「行こうぜ! なんか他にもいっぱいあるんだろ? 覇白、案内してくれよ」
「別に構わないが、私、いつもそんなに回って無かったから、あんま知らぬぞ?」
予想外の返事に、鏡月が意外そうな顔をする。こんなに賑やかな祭りが開催されているのに、見て回らなかったのかと。
「え、じゃあ何してたんですか?」
訊くと、覇白は鏡月の純粋な瞳から目をそらして答える。
「部屋で、外を眺めていたな」
「何それ寂しっ」
順当なツッコみに怯む。しかし、仮にも王子である己が、一人で祭りを楽しむのは気が引けたのだ。小さい頃に一回だけ家族で遊んだが、なんせ小さい時だ。覚えている訳が無い。
そんな様子の彼に、白刃が言う。
「ま、今から回るんだ。丁度いいだろ」
何が丁度いいのかは分からないが、確かにやっと祭りを楽しめると思うと嬉しくなる。
「そうだな。まぁ、ある程度知っている事はあるし、観光客向けの地図もそこら中にある。それでどうにかなるだろう」
心なしか覇白の声が弾んでいたように思えたが、白刃はそれを言わないでおいた。面白そうなものがあればやって行こう、なんせ金はある。
しかも、どうやら覇白もお小遣いをもらったようだ。
「そうだ、兄上と父上と母上からお小遣いを渡されてな。大丈夫だと言ったのだが……」
そう言って懐から取り出した袋。中を開いてみると、そりゃもうお小遣いというレベルではない金額が堂々と入っている。
「うおっ、なんこの金額!?」
「これ、絶対落とすなよ」
「そんなヘマするか!」
驚く尖岩と、心配する白刃。それ程の金額なのだ。これをよくお小遣いと言って渡せるものだ、王族の財力は馬鹿に出来ない。
この民衆が住まう区間を見ても、きちんと整備されていて龍ノ川全体に滞りなく金銭が行きわたっているのが分かる。そりゃ王族もお金を持っているだろう。
「けど、こんなお金持っていて大丈夫なんですか? その、スリとかそういうのってあるモノなんですよね?」
「そこは安心してもいい。こいつはああ見えて王子だ。そうは見えないと思うが」
安心させようとしたのであろう白刃の発言だが、これには少し意義がある。
「一応言っておくが、私がそうであるのは九割お前のせいだぞ?」
「俺のだからな」
皆祭りに夢中でこちらの会話など訊いていない事を良い事に、何時ものようにそんな事を言う。龍ノ川だけではよしてほしいものだ。
そんな会話を聞いて、仲良しなのが嬉しそうに笑っている鏡月の耳に、少し離れた所での話し声が届く。
「ねぇねぇ、あの方って第二王子様だよね? 近くで見ると違うなぁ」
「ねー! それに、あの白髪の人間が白刃って子だよね、龍王妃様が言っていた。綺麗な人だぁ」
「分かる! それに一緒にいる三人の子ども、めっちゃ可愛くない?」
「それなそれな! 目の保養になりますなぁ」
自分は可愛いの部類に入るようだ。どうせならカッコいいと言われてみたいものだが、褒められているのには変わりなく、鏡月は少し気分がよくなった。
まぁそれはともかく、祭り用に創られた地図を見つけると、五人はそれでそれぞれ行きたい所を考えるが、誰一人としてまともな祭りの経験の記憶がなく、今一思い浮かばない。
「行ってみれば色々あるだろうな。なんかしたい事とかないの?」
とりあえず歩きながら、尖岩が皆に問いかける。そうすると、白刃が真顔のままで答えた。
「肉まん、食べたい」
「あぁ。肉まんなら専門店が店出していたはずだぞ」
「どっち?」
「あっちだな」
「そうか、行くぞ」
方向を示すと、白刃は自然の流れで尖岩の手首をつかんで進行方向を変えた。
三人も急いでそれに付いて行く。そんなに肉まん食べたかったのかなぁなんて。急に手を掴まれた尖岩からすれば、いきなりなんだと言う話なのだが。
離してくれない白刃に、尖岩が声を掛ける。
「ちょ、なんで手引っ張るんだよ。んな事しなくとも、ちゃんと付いて行くから」
「おや、いいではありませんか。久しぶりに遊びましょうよ、尖岩」
何故かここで外面に切り替えて応答してくる。さっきまでは何時ものだったのにと呟き、そこでハッとした。
百八十センチの男と、百六十センチの男が手を繋いで歩いていたら、それはもう仲睦まじい兄弟のような絵だ。特にこの男、すっごい顔が良い。となると、そりゃ勿論。
「ねぇ見てあの子、すっごい可愛くない?」
「あ、ほんとだ。手繋いでる、兄弟かなぁ」
こう言った反応をされる。
「良かったですね、尖岩。可愛いですって」
「何一つよかねぇ!」
確信した。こいつ、分かってやっている。
「いいじゃないですか。私、可愛いと言われたのは幼い時くらいですよ」
「そりゃお前は美人だからな、憎たらしい程に」
外面としての笑顔の映りの良さったら半端ではないのだ。見上げると、白刃は「なんでしょうか」と笑った。
「俺は、女の子にはカッコいいって言われたい」
「そうですか。じゃあ、牛乳飲みます?」
冗談か本気かの判別は付かないが、身長を伸ばすには牛乳と言う考えは尖岩がゴマ粒ほどの大きさだった頃からあるモノだ。実行したことない訳が無いだろう。
「それで伸びなかったからこの身長なんだろうが」
文句を言うと、白刃は少し驚いたように小さく目を見開き、ふっと笑う。
「それ、実行していたのですね。可愛らしい」
馬鹿にされているというより、これは完全に本音だ。
ただでさえ「怯えているお前は可愛い」とか言われているのに、これ以上こいつにそんな事を言われたくない。男としてのプライド、と言うより、大切な何かが無くなる気がする。
「なっ――。し、身長伸ばす方法っつったらそれだろ!? 真っ先にそれ試すだろ!? な、山砕!」
「えっ! ま、まぁ。俺もやった」
結果は見ての通りな訳だが。
身長を気にしている二人。鏡月はあっと声を上げ、二人に言った。
「お二人も人骨食べたら伸びるんじゃないんですか?」
これまた、冗談か本気か分からない提案だ。
「それマジで怖いから止めて!」
この純粋な少年が、文字通り骨の髄まで人を食いつくしているところは、あまり考えたくないのだ。
「はは、流石に冗談ですよ」
「とんだブラックジョークだな」
微苦笑を浮かべた覇白。本当に、真っ黒なジョークだ事と尖岩は頷くと、ふと脳裏に過る記憶があった。
覇白との初対面の記憶。こいつは最初、白刃が連れていたやけに従順な馬を丸呑みしたのだ。勿論龍の姿ではあったが、目にもとまらぬ凄いスピードだった。
「……そういやお前、最初馬食った時骨ごと行ってたよな」
言ってみると、覇白は止めろと言いたげにこちらを見る。
「お、おい。ここで言うでない。あとそれ、絶対兄上達にも言うなよ?」
「知られたらマズい事でもあるの?」
「マズい事しかないわ。そんな事知られたらまた無駄に心配される。それに、馬の丸呑みとか気品以前の問題だろう」
そう言っている間にも、突然現れる母親がここにいないかが気がかりのようで、辺りを見渡していた。
「ま、腹減ってたんじゃ仕方ないですよ。それに、お陰でお前を馬にする口実が出来ましたし、感謝していますよ」
そこで感謝されても困ると答える前に、白刃が肉まんを見つけて直ぐにそれを買いに行く。
「やっぱ白刃、肉まん好きなんだよね?」
「特にそういう訳ではありませんよ。皆さんは大丈夫ですか?」
特に今は食べたくないため、全員大丈夫だと答える。だから白刃は、自分の分だけ購入する。
「すみません、これ三つ」
「お、ありがとね! はい、肉まん三つ」
「ありがとうございます」
お金を払うと、そこにあったベンチに座って、はむはむとホカホカの肉まんを食べる。普段あんま食べないくせに、肉まん三つは難なく食べきってしまった。
「やっぱ好きだよな?」
「いいえ、違います」
笑顔で否定をする為、何の理由の否定なのかは分からないが、とりあえずそういう事にしておいた。
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