前世は武神、今世は無職と呼ばれた俺は冒険者人生を謳歌してみた

ネイン

文字の大きさ
27 / 41

前世で武神と呼ばれた男、師になる②

しおりを挟む
 ハッカとソリスを軽く一蹴したあと、シェナと手合わせを始める。

 真向かいに立つ彼女の持つ武器は槍なので俺も槍を持った。

「よろしく!」

「よろしくですの」

 互いにゆっくりと間合いを詰める。さすがに武芸を嗜んでるだけあってさっきの二人と違って攻め方が慎重だ。

「【物理攻撃力上昇】【防御力特大上昇】【俊敏大上昇】」

「おっ」

 俺が声を上げるとシェナの方から攻撃を仕掛けてきた。

「えいっ、やっ」

 シェナは素早く槍で二回突いてきたので、得物を使って横へと攻撃を逸らした。

 さらに一突きを繰り出したシェナ。再び突きを逸らしたあと、槍を翻し、柄で相手の頭を叩こうとすると、

「【|風乙女《ウィンディア】」

 シェナは全身に風を纏った。俺の柄は風によって自然と上方向へと逸らされる。そのあとシェナは急いで中腰になって後方へと下がった。

 『戦乙女』という職業は聞いた話通り、体に風を纏うらしい。そして、武器を召喚することができるはずだ。

「手加減はしなくていいですのね」

「もちろん」

 俺は指で丸を作った。

「【槍乱舞《スピアーダンス》】」

 シェナのスキル発動と同時に彼女の前方から数十本もの槍が飛び出した。

 それに対応するために俺は技を発動する。

「【風人之体ふうじんのたい】」

 俺は『自然エネルギー』を操作して、風を体に纏わせた。要は今のシェナと同じ状態になった。

「私と同じようなスキル!?」

 シェナは驚嘆しながら、俺の体の手前に到達した槍が弾かれるのを見ていた。

 槍は四方八方に転がる。

「『風足ふうそく』」

 そのあと俺は移動術で距離を詰めて槍を振るう。シェナは慌てて俺の槍を受け止めるが、

「きゃっ!」

 俺は槍でシェナの持っている槍を捻って、槍ごと体をひっくり返した。

 シェナは小さな悲鳴を上げて地面に背中を打つ。

「ま、参りました」

「よし、次はシアドだ。こい!」

 降参したシェナと入れ替わるようにシアドが目の前に立つ。

 彼は素手だ。なら俺も素手で戦おう。

「最初から全開で行きます!」

「こい!」

 シアドは二本指を構え、

「『炎弾ファイアバレット』『炎弾ファイアバレット』『炎弾ファイアバレット』!」

 炎の玉を三回連続で放った。宣言通り最初から本気だ。

「炎にはやっぱ氷かな。『氷影爪ひょうえいそう』」

 右手、左手、右手と順に振る。すると氷の斬撃が三回連続で飛び出る。

 炎の弾と氷の斬撃は相殺し合う。

 その後、シアドは手のひらを上に向け、 

「『火焔砲弾《フレイムキャノン》』」

 五、六人を簡単に呑み込むであろう巨大な炎の玉を生成した。

「はっ!」

 彼は炎の玉を放つ。

 俺はさっきの技の出力を上げよう。

「『氷影爪ひょうえいそう』!」

 俺は先ほどより鋭く速い氷の斬撃を放った。

 氷の斬撃は巨大な炎の玉を真っ二つにして凍らせ、そのままシアドの方へと向かった。

「ま、まずい! えっとファイア……!」

 彼は戸惑ってスキルを発動できず、目の前まで到達した氷の斬撃に対して目を閉じていた。

 俺は指を鳴らし、氷の斬撃を消すとシアドは尻餅をついた。

「さ、さすがヒューゴさん」

「よし、だいたい四人に何が足りないか分かった。あとはそうだな、時間が無いけど『体内エネルギー』の使い方を教えようかな」

 俺はこれから四人に何を学ばせるか考えながら、強くなる姿を想像して心を躍らせていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

処理中です...