雨上がりには

Two-dragon

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第一章 過去

5話 別離

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あの日、夕方まで晴れていた。
突然の夕立ちは明るかったアスファルトに暗い色をつけた。30分ほど降っただろうか?雨は上がりアスファルトも明るさを取り戻しつつあった。


「本当に突然ね…」

ポツリと律子が言った。

涼一は3本目のタバコを消した。

「ごめん」

「涼一はいつもそう。1人で勝手に…。それにタバコだって私が嫌いなの知ってて…」

「ごめん」

「謝らないで!」

律子はすでに泣いていた。

大学2年の夏の終わり。
律子と夕暮れの海にきていた。毎年夏の始まりに海岸で花火大会があるが、賑やかな夏は終わり、砂浜は静けさを取り戻していた。
律子は歯科衛生士になり、そのまま向こうの歯科医院で働いていた。

ふたりは定期的に会ってはいたが、いつしか涼一の気持ちは冷めかけていた。

「やっぱり好きな人いるんでしょ?」

律子は責めるように言った。

「いや、いない」

「じゃあなんで?私の事嫌いになった?」

「そうじゃない」

「じゃあなんで?」

泣きじゃくる律子は駄々をこねる子供のようだった。

「ごめん…」

律子は砂浜に座り込んだまま、顔を両手で覆い泣いていた。

帰り道、項垂れて歩く涼一は2年前に渡せなかった指輪の事を考えていた。あの時から律子に素直になれずにいた。些細な事で怒ってしまった自分を許せずにいた。

ペアリングは今も机の中にあるが、渡さないまま律子に別れを告げた。

「クソッ!」

涼一は呟いた。

雨上がりのアスファルトは涼一の好きな匂いがしていた。
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