5 / 32
第一章 過去
5話 別離
しおりを挟む
あの日、夕方まで晴れていた。
突然の夕立ちは明るかったアスファルトに暗い色をつけた。30分ほど降っただろうか?雨は上がりアスファルトも明るさを取り戻しつつあった。
「本当に突然ね…」
ポツリと律子が言った。
涼一は3本目のタバコを消した。
「ごめん」
「涼一はいつもそう。1人で勝手に…。それにタバコだって私が嫌いなの知ってて…」
「ごめん」
「謝らないで!」
律子はすでに泣いていた。
大学2年の夏の終わり。
律子と夕暮れの海にきていた。毎年夏の始まりに海岸で花火大会があるが、賑やかな夏は終わり、砂浜は静けさを取り戻していた。
律子は歯科衛生士になり、そのまま向こうの歯科医院で働いていた。
ふたりは定期的に会ってはいたが、いつしか涼一の気持ちは冷めかけていた。
「やっぱり好きな人いるんでしょ?」
律子は責めるように言った。
「いや、いない」
「じゃあなんで?私の事嫌いになった?」
「そうじゃない」
「じゃあなんで?」
泣きじゃくる律子は駄々をこねる子供のようだった。
「ごめん…」
律子は砂浜に座り込んだまま、顔を両手で覆い泣いていた。
帰り道、項垂れて歩く涼一は2年前に渡せなかった指輪の事を考えていた。あの時から律子に素直になれずにいた。些細な事で怒ってしまった自分を許せずにいた。
ペアリングは今も机の中にあるが、渡さないまま律子に別れを告げた。
「クソッ!」
涼一は呟いた。
雨上がりのアスファルトは涼一の好きな匂いがしていた。
突然の夕立ちは明るかったアスファルトに暗い色をつけた。30分ほど降っただろうか?雨は上がりアスファルトも明るさを取り戻しつつあった。
「本当に突然ね…」
ポツリと律子が言った。
涼一は3本目のタバコを消した。
「ごめん」
「涼一はいつもそう。1人で勝手に…。それにタバコだって私が嫌いなの知ってて…」
「ごめん」
「謝らないで!」
律子はすでに泣いていた。
大学2年の夏の終わり。
律子と夕暮れの海にきていた。毎年夏の始まりに海岸で花火大会があるが、賑やかな夏は終わり、砂浜は静けさを取り戻していた。
律子は歯科衛生士になり、そのまま向こうの歯科医院で働いていた。
ふたりは定期的に会ってはいたが、いつしか涼一の気持ちは冷めかけていた。
「やっぱり好きな人いるんでしょ?」
律子は責めるように言った。
「いや、いない」
「じゃあなんで?私の事嫌いになった?」
「そうじゃない」
「じゃあなんで?」
泣きじゃくる律子は駄々をこねる子供のようだった。
「ごめん…」
律子は砂浜に座り込んだまま、顔を両手で覆い泣いていた。
帰り道、項垂れて歩く涼一は2年前に渡せなかった指輪の事を考えていた。あの時から律子に素直になれずにいた。些細な事で怒ってしまった自分を許せずにいた。
ペアリングは今も机の中にあるが、渡さないまま律子に別れを告げた。
「クソッ!」
涼一は呟いた。
雨上がりのアスファルトは涼一の好きな匂いがしていた。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる