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第一章 過去
11話 代役
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凜とした風に変わっていく11月の終わり、午後の診察準備をしていた律子に歯科助手の加藤小百合が声をかけてきた。
「律さーん!今夜、予定あります?」
「ん?特にないけど?」
「やったー!」
「え?なに?」
「あー、すみません。律さん、合コン行きませんか?」
「合コン?私が?」
「はい。もともと友達と二人だったんですけど急に来れなくなっちゃって」
「はい、はい、代役ね…」
「ま、まあ…」
バツが悪そうに小百合は言った。
「分かった。いいよ、暇だから」
「本当ですか!ありがとうございます」
小百合は律子の3つ年下で、世に言う男が放っておけない小悪魔タイプだ。小顔で童顔、甘え上手とくれば確かにそうだろう。
「じゃあ19時にフランクで」
「フランクって駅前の?」
「そうです。一緒に行きますか?今日18時上がりなので、そのまま行きますけど」
「私は車だから一度帰るよ。17時上がりだし」
「わかりました!お店で待ってまーす!あっ、今日の相手、どっちもイケメンらしいですよ!友達が言ってました!」
「はい、はい」
「はぁ」
「行くと言ったものの、なーんか乗り気がしないんだよなぁ」
帰りの車の中、ルームミラーで自分の顔を眺めてみた。
「老けたかなぁ」
涼一と別れてから律子なりに懸命に生きてきた。
25才の大人になった律子の顔だった。
19時ちょうどにフランクに着いた。洋風居酒屋で、オシャレな店だ。個室もあり、幅広い客層に人気があった。
「律さーん!こっちですぅ」
(出たな小悪魔…チェックのミニスカートにニーハイ、白のニットにその童顔じゃ、男がほっとかないわな…)
律子は黒のスキニーにデニムのジャケット、髪はほどいてきた。
「律さん。二人、もう来てますよぉ」
「そう、ごめんね、遅れて」
席は個室を予約していたようだ。
「どうぞ、どうぞ」
小百合に背中を押されて中に入った。
「こんばんわー!」
眩しいくらい若々しい男の子が満面の笑みで迎えてくれた。
「こんばんわ、ごめんなさい遅れてしまって」
「大丈夫です!えーと、お名前聞いてもいいですか?」
「斉藤です」
「律さん、下の名前ですよ」
小百合が言った。
「え?ああ、律子です」
「じゃあ、律子さん!飲み物は何にします?」
イケメンがさらりと馴染む。
「そうね。じゃ、りんごサワーで」
「カンパーイ!!」
イケメン二人の名前はユウジとタクヤ。
この会は下の名前で呼ぶらしい…。
「それにしても二人とも綺麗ですね!」
タクヤが言った。ユウジが何度も頷く。
小百合は慣れた感じで応えた。
「そうですかぁ?ありがとうございますぅ」
小百合が攻めた。
「タクヤさんもイケメンだし!筋肉すご~い
鍛えてるんですかぁ?」
「中学時代からサッカーやってるからね。自分でチーム作ってて、時々試合もしてるよ」
「えー!すごーい!かっこいいですね!私サッカー好きなんですよぉ」
「本当に?!今度試合あるから小百合ちゃん観に来てよ」
「行きたーい!!」
(完全に小百合のペースだな…)
律子は少し呆れた様子で壁に飾ってあるお洒落なポスターを眺めていた。
「律子さんは何かスポーツやってたんですか?」
ユウジが話しかけてきた。
「え?私?」
「はい、あっ、待ってください!当ててもいいですか?」
(はいはい…お好きにどうぞ…)
「ええ」
ユウジは嬉しそうだった。
「うーん。そうですねぇ、律子さん…は、テニスですか?」
「バスケだけど?」
「あー!ハズレたぁ。バスケですかー。テニスっぽいんだけどなぁ」
(どうでもいい…)
「ねえ。小百合、なんか私、場違いじゃない?」
小声で耳打ちした。
「そんな事ないですよぉ!律さん綺麗だし、2人とも意識してますよ」
「そーかなぁ…?」
ピーピピッ!
ピーピピッ!
律子の携帯が鳴った。
「誰だろう?ちょっとごめんなさい」
バックごと持って席を立った。
廊下で確認すると隆からだった。
「もしもし?」
「律ちゃん?俺、わかる?」
「わかるよー。隆くん久しぶりだね」
「よかった…番号変わってなくて。変わってたらどうしようと思ってドキドキしたよ。何してるの?」
「今?後輩と飲んでるよ」
「そっかぁ…」
「ん?どうしたの?」
「うん。久しぶりに初陣で飲んでて、当時のバイト仲間に連絡してるんだ。藤田も坂下も来るし、律ちゃんも来ないかなって…」
初陣は専門学生時代にバイトしていた居酒屋で、就職してから何度か飲みに行ったくらいだった。
「でも後輩と飲んでるなら無理かぁ…。仕方ないね、じゃあ」
「待って、行くよ」
「え?本当に?」
「うん、急用でって抜けるから」
「大丈夫なの?」
「大丈夫。私、場違いなの」
「え?」
「いいから待ってて!じゃあね!」
イケメンと小悪魔に謝罪した。
残念そうな3人をよそに会計を済ませ外に出た。
「フフッ、やっぱり私に合コンなんてね…」
微笑んだ律子は足早に初陣に向かった。
「いらっしゃい!ん?おお、斉藤さん!久しぶり!」
「店長、ご無沙汰してます」
「澤井くん達、奥の座敷にいるよ!飲み物は何にする?」
「えっと、生ビールでお願いします」
「はいよ!最初の一杯は俺のおごりだから、ゆっくりしていってねー」
「ありがとうございます!」
座敷に上がると懐かしい顔ぶれが騒いでいた。
「こんばんわ!」
「おー!律ちゃん久しぶりー!こっちだよー」
隆が手招きをして呼んでいる。
みんなが笑顔だった。学生時代この場所で一緒に働いた仲間たちの笑顔が温かく、有り難かった。
突然、律子の目から涙が溢れた。
「ん?律ちゃんどうした?何かあった?」
「何も…。えへへ、何か嬉しくて…」
隆がニヤケ顔で言った。
「俺に会えたからでしょ?」
「バカなの?」
涙のあとの律子は笑顔で溢れていた。
「律さーん!今夜、予定あります?」
「ん?特にないけど?」
「やったー!」
「え?なに?」
「あー、すみません。律さん、合コン行きませんか?」
「合コン?私が?」
「はい。もともと友達と二人だったんですけど急に来れなくなっちゃって」
「はい、はい、代役ね…」
「ま、まあ…」
バツが悪そうに小百合は言った。
「分かった。いいよ、暇だから」
「本当ですか!ありがとうございます」
小百合は律子の3つ年下で、世に言う男が放っておけない小悪魔タイプだ。小顔で童顔、甘え上手とくれば確かにそうだろう。
「じゃあ19時にフランクで」
「フランクって駅前の?」
「そうです。一緒に行きますか?今日18時上がりなので、そのまま行きますけど」
「私は車だから一度帰るよ。17時上がりだし」
「わかりました!お店で待ってまーす!あっ、今日の相手、どっちもイケメンらしいですよ!友達が言ってました!」
「はい、はい」
「はぁ」
「行くと言ったものの、なーんか乗り気がしないんだよなぁ」
帰りの車の中、ルームミラーで自分の顔を眺めてみた。
「老けたかなぁ」
涼一と別れてから律子なりに懸命に生きてきた。
25才の大人になった律子の顔だった。
19時ちょうどにフランクに着いた。洋風居酒屋で、オシャレな店だ。個室もあり、幅広い客層に人気があった。
「律さーん!こっちですぅ」
(出たな小悪魔…チェックのミニスカートにニーハイ、白のニットにその童顔じゃ、男がほっとかないわな…)
律子は黒のスキニーにデニムのジャケット、髪はほどいてきた。
「律さん。二人、もう来てますよぉ」
「そう、ごめんね、遅れて」
席は個室を予約していたようだ。
「どうぞ、どうぞ」
小百合に背中を押されて中に入った。
「こんばんわー!」
眩しいくらい若々しい男の子が満面の笑みで迎えてくれた。
「こんばんわ、ごめんなさい遅れてしまって」
「大丈夫です!えーと、お名前聞いてもいいですか?」
「斉藤です」
「律さん、下の名前ですよ」
小百合が言った。
「え?ああ、律子です」
「じゃあ、律子さん!飲み物は何にします?」
イケメンがさらりと馴染む。
「そうね。じゃ、りんごサワーで」
「カンパーイ!!」
イケメン二人の名前はユウジとタクヤ。
この会は下の名前で呼ぶらしい…。
「それにしても二人とも綺麗ですね!」
タクヤが言った。ユウジが何度も頷く。
小百合は慣れた感じで応えた。
「そうですかぁ?ありがとうございますぅ」
小百合が攻めた。
「タクヤさんもイケメンだし!筋肉すご~い
鍛えてるんですかぁ?」
「中学時代からサッカーやってるからね。自分でチーム作ってて、時々試合もしてるよ」
「えー!すごーい!かっこいいですね!私サッカー好きなんですよぉ」
「本当に?!今度試合あるから小百合ちゃん観に来てよ」
「行きたーい!!」
(完全に小百合のペースだな…)
律子は少し呆れた様子で壁に飾ってあるお洒落なポスターを眺めていた。
「律子さんは何かスポーツやってたんですか?」
ユウジが話しかけてきた。
「え?私?」
「はい、あっ、待ってください!当ててもいいですか?」
(はいはい…お好きにどうぞ…)
「ええ」
ユウジは嬉しそうだった。
「うーん。そうですねぇ、律子さん…は、テニスですか?」
「バスケだけど?」
「あー!ハズレたぁ。バスケですかー。テニスっぽいんだけどなぁ」
(どうでもいい…)
「ねえ。小百合、なんか私、場違いじゃない?」
小声で耳打ちした。
「そんな事ないですよぉ!律さん綺麗だし、2人とも意識してますよ」
「そーかなぁ…?」
ピーピピッ!
ピーピピッ!
律子の携帯が鳴った。
「誰だろう?ちょっとごめんなさい」
バックごと持って席を立った。
廊下で確認すると隆からだった。
「もしもし?」
「律ちゃん?俺、わかる?」
「わかるよー。隆くん久しぶりだね」
「よかった…番号変わってなくて。変わってたらどうしようと思ってドキドキしたよ。何してるの?」
「今?後輩と飲んでるよ」
「そっかぁ…」
「ん?どうしたの?」
「うん。久しぶりに初陣で飲んでて、当時のバイト仲間に連絡してるんだ。藤田も坂下も来るし、律ちゃんも来ないかなって…」
初陣は専門学生時代にバイトしていた居酒屋で、就職してから何度か飲みに行ったくらいだった。
「でも後輩と飲んでるなら無理かぁ…。仕方ないね、じゃあ」
「待って、行くよ」
「え?本当に?」
「うん、急用でって抜けるから」
「大丈夫なの?」
「大丈夫。私、場違いなの」
「え?」
「いいから待ってて!じゃあね!」
イケメンと小悪魔に謝罪した。
残念そうな3人をよそに会計を済ませ外に出た。
「フフッ、やっぱり私に合コンなんてね…」
微笑んだ律子は足早に初陣に向かった。
「いらっしゃい!ん?おお、斉藤さん!久しぶり!」
「店長、ご無沙汰してます」
「澤井くん達、奥の座敷にいるよ!飲み物は何にする?」
「えっと、生ビールでお願いします」
「はいよ!最初の一杯は俺のおごりだから、ゆっくりしていってねー」
「ありがとうございます!」
座敷に上がると懐かしい顔ぶれが騒いでいた。
「こんばんわ!」
「おー!律ちゃん久しぶりー!こっちだよー」
隆が手招きをして呼んでいる。
みんなが笑顔だった。学生時代この場所で一緒に働いた仲間たちの笑顔が温かく、有り難かった。
突然、律子の目から涙が溢れた。
「ん?律ちゃんどうした?何かあった?」
「何も…。えへへ、何か嬉しくて…」
隆がニヤケ顔で言った。
「俺に会えたからでしょ?」
「バカなの?」
涙のあとの律子は笑顔で溢れていた。
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