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第一章 過去
13話 写真
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(先に帰るから、掃除しとくね!)
里奈からメールだった。
(ごめんね、宜しくー)
涼一はしばらくして打ち返した。
新規の顧客を担当してからは多忙を極めた。
同棲はしていないが里奈には合鍵を渡していた。
「ふう、もう少しかかりそうだな」
パソコンに向かいながら孤軍奮闘していると、遠山がコーヒーを持ってやってきた。
「お疲れ!飲むか?」
「ああ、サンキュー」
涼一は手を止めコーヒーを開けた。遠山も飲みながら話した。
「前田、お前凄いな!部長直々に新規客の担当任されたんだろ?」
「まぁな。でも失敗ばかりでさ、毎日課長に怒られて嫌になっちゃうよ。でも任せてくれたし頑張らないとな。遠山、お前も頑張ってんじゃん!聞いたぞ、今度のプレゼン上手くいったら主任なんだって?」
「ああ。でも、かなり厳しい条件出されてるから、相手が満足するかどうか…。まぁ準備に抜かりはないけどな」
「頑張れよ!」
「おう。ああ、それと」
「ん?」
「お前上手くやったなぁ」
遠山がニヤケた。
「ん?何がだよ?」
「分かってるだろ!竹下さんだよ!」
「何がどうなるとそうなるんだ?俺もあの時一緒に居たんですけどぉ」
遠山は恨めしそうに口を尖らせて言った。
「ははは、お前は夏眠してたからな」
「ん?仮眠?なんだ?竹下さんって結構人気があるんだぜ、総務は他の部にも顔が売れてるし、実際可愛いからな。あの時がキッカケなら俺が付き合ってたかもしれないんだぜ?」
「ん?ないない」
涼一は冷めた表情で答えた。
「何でだよ!」
「夏眠してたから」
「だから!仮眠て何なんだ?」
「あはははっ」
腑に落ちない遠山を尻目にコーヒーを飲み干した。
ピピッ!ピピッ!
涼一はメールを見た。
(涼ちゃん、もう帰る?)
(もう終わりにするから、帰れるよ)
(話があるから…)
(なに?)
(帰ってから話す)
(何かあったの?)
(帰ってから)
その後打ってみたが返信はなかった。
(なんだろう?怒ってるのかな?)
涼一の不安そうな顔を見て遠山が言った。
「何だ?ケンカか?大丈夫か?何なら俺が代わりに帰ろうか?」
「バカなの?」
(それにしても何だろうな?)
パソコンをシャットダウンして足早に会社を出た。
途中で何度か打ってみたがやはり返信はなくソワソワしながら帰宅した。駐車場には里奈の車が駐まっている。
「ただいま」
「お帰り涼ちゃん」
部屋は綺麗に片付いて夕飯はオムライスが作ってあった。
「どうした?何かあったの?」
「うん…。まぁ、座って」
上着を脱いでソファに座った。
「で?何?」
「うん…。あのね、さっき掃除してたら机の引き出しが開いてて中の写真が見えたんだ」
「うん、それで?」
「悪いとは思ったんだけど…」
「何の写真だったの?」
里奈は机からその写真を持ってきた。
涼一と律子が笑顔で写っていた。
律子が向こうに行ってから、デートの時に撮ったものだった。よく撮れていたので焼き増ししてお互いが持っていた。
「ねぇ、涼ちゃん。この写真の人、誰なの?」
涼一は正直に答えた。
「前の彼女だよ」
「そうなんだ…」
里奈は寂しそうに言った。
「うん。4年前に別れた。写真なんて忘れてたよ。ごめん、怒ってる?」
「ううん。びっくりしたけど…」
「大丈夫だよ。連絡もしてないし向こうからもない」
「本当に?」
「うん。昔の事だよ」
「そっか…。涼ちゃんカッコいいから心配になっちゃって …ごめんね」
里奈はそう言って微笑んだ。
「それにしても綺麗な人だね」
「ん?ああ、綺麗な人だった」
「年上だったの?」
「高校の先輩で2つ上だよ」
「人気あったでしょ?先輩」
「バスケ部のキャプテンだったし、俺は怖かったよ」
「そうなんだ。涼ちゃんから告白したの?」
「向こうから。綺麗な人だと思ってたけど、キャプテンで気も強かったし、近寄りがたいオーラはあったね」
「綺麗な人はだいたいあるよね、オーラ」
「うん」
「でも、凄いね、そんな人から告白されるなんて」
「そうだね、俺が一番驚いた」
「どれくらい付き合ってたの?」
「高1から4年」
「私の知らないその頃の涼ちゃん知ってるんだね…」
「うん、まぁ」
「いいなぁ…。何で別れたの?」
「なんとなく…。俺から別れちゃったから」
「えー!そうなんだー。振られたのかと思った。先輩は納得してた?別れるとき」
「いや、泣いてた。でもあの時の俺じゃ付き合っていくのは無理だったと思う」
「そっか…。名前…なんていうの?」
「斉藤律子だよ」
「律子さん…か。なんて呼んでたの?」
「俺は律子で、涼一って呼ばれてた」
「やっぱり…涼ちゃんの初めての人だよね…?」
「ん?ああ、まぁ…」
「そうだよね…」
里奈は悲しそうな顔をした。
「え?怒ってる?ごめんね」
「謝らないで!」
「ご、ごめん」
「だからー」
里奈の目が少し潤んでいる様に見えた。
少し間が空いて里奈が言った。
「お腹空いたね。ご飯食べよっか」
涙を堪えた精一杯の笑顔だった。
「うん」
オムライスを食べながら思い出だから写真はそのままにしておいてと里奈は言った。
涼一はどこかホッとしていた。律子と別れてから写真を見ることはなかったが、捨てることもしなかった。なぜなのかは涼一にもわからなかった。
その夜ベッドを軋ませながら里奈の体を揺ゆらしていた時、吐息まじりの弾む声で苦しそうに里奈が言った。
「涼ちゃん…大好き…だからね…」
「俺もだよ…」
抱き合ってひとつなったふたりはそのまま達した。
疲れて眠った里奈の隣りで涼一はタバコに火をつけた。タバコを吸うことを里奈は何も言わなかった。
ゆっくりと 吐きだす煙を燻らしながら律子の事を考えていた。
律子はタバコが嫌いだと言った。向こうの家でも、車の中でも吸っていたがその度に嫌な顔をされた。ただ、やめてとも言われなかった。
「涼ちゃん、灰が落ちそうだよ」
目が覚めた里奈が眠そうな顔で言った。
「あっごめんね、タバコ煙くて」
「ううん、大丈夫だよ。私、涼ちゃんがタバコ吸ってるの好きだもん」
「え?そうなの?」
「うん、カッコいいから」
考えた事もなかった。
「えへへ、私は特等席だもんね!いつも横で見てるから」
「俺がタバコ吸うの嫌じゃないんだ?」
「うん。涼ちゃん…。何でも言ってね…」
「うん。わかってる」
「里奈、ビール飲むけど、いる?」
「いるー」
里奈の優しさに救われた気がした。
里奈からメールだった。
(ごめんね、宜しくー)
涼一はしばらくして打ち返した。
新規の顧客を担当してからは多忙を極めた。
同棲はしていないが里奈には合鍵を渡していた。
「ふう、もう少しかかりそうだな」
パソコンに向かいながら孤軍奮闘していると、遠山がコーヒーを持ってやってきた。
「お疲れ!飲むか?」
「ああ、サンキュー」
涼一は手を止めコーヒーを開けた。遠山も飲みながら話した。
「前田、お前凄いな!部長直々に新規客の担当任されたんだろ?」
「まぁな。でも失敗ばかりでさ、毎日課長に怒られて嫌になっちゃうよ。でも任せてくれたし頑張らないとな。遠山、お前も頑張ってんじゃん!聞いたぞ、今度のプレゼン上手くいったら主任なんだって?」
「ああ。でも、かなり厳しい条件出されてるから、相手が満足するかどうか…。まぁ準備に抜かりはないけどな」
「頑張れよ!」
「おう。ああ、それと」
「ん?」
「お前上手くやったなぁ」
遠山がニヤケた。
「ん?何がだよ?」
「分かってるだろ!竹下さんだよ!」
「何がどうなるとそうなるんだ?俺もあの時一緒に居たんですけどぉ」
遠山は恨めしそうに口を尖らせて言った。
「ははは、お前は夏眠してたからな」
「ん?仮眠?なんだ?竹下さんって結構人気があるんだぜ、総務は他の部にも顔が売れてるし、実際可愛いからな。あの時がキッカケなら俺が付き合ってたかもしれないんだぜ?」
「ん?ないない」
涼一は冷めた表情で答えた。
「何でだよ!」
「夏眠してたから」
「だから!仮眠て何なんだ?」
「あはははっ」
腑に落ちない遠山を尻目にコーヒーを飲み干した。
ピピッ!ピピッ!
涼一はメールを見た。
(涼ちゃん、もう帰る?)
(もう終わりにするから、帰れるよ)
(話があるから…)
(なに?)
(帰ってから話す)
(何かあったの?)
(帰ってから)
その後打ってみたが返信はなかった。
(なんだろう?怒ってるのかな?)
涼一の不安そうな顔を見て遠山が言った。
「何だ?ケンカか?大丈夫か?何なら俺が代わりに帰ろうか?」
「バカなの?」
(それにしても何だろうな?)
パソコンをシャットダウンして足早に会社を出た。
途中で何度か打ってみたがやはり返信はなくソワソワしながら帰宅した。駐車場には里奈の車が駐まっている。
「ただいま」
「お帰り涼ちゃん」
部屋は綺麗に片付いて夕飯はオムライスが作ってあった。
「どうした?何かあったの?」
「うん…。まぁ、座って」
上着を脱いでソファに座った。
「で?何?」
「うん…。あのね、さっき掃除してたら机の引き出しが開いてて中の写真が見えたんだ」
「うん、それで?」
「悪いとは思ったんだけど…」
「何の写真だったの?」
里奈は机からその写真を持ってきた。
涼一と律子が笑顔で写っていた。
律子が向こうに行ってから、デートの時に撮ったものだった。よく撮れていたので焼き増ししてお互いが持っていた。
「ねぇ、涼ちゃん。この写真の人、誰なの?」
涼一は正直に答えた。
「前の彼女だよ」
「そうなんだ…」
里奈は寂しそうに言った。
「うん。4年前に別れた。写真なんて忘れてたよ。ごめん、怒ってる?」
「ううん。びっくりしたけど…」
「大丈夫だよ。連絡もしてないし向こうからもない」
「本当に?」
「うん。昔の事だよ」
「そっか…。涼ちゃんカッコいいから心配になっちゃって …ごめんね」
里奈はそう言って微笑んだ。
「それにしても綺麗な人だね」
「ん?ああ、綺麗な人だった」
「年上だったの?」
「高校の先輩で2つ上だよ」
「人気あったでしょ?先輩」
「バスケ部のキャプテンだったし、俺は怖かったよ」
「そうなんだ。涼ちゃんから告白したの?」
「向こうから。綺麗な人だと思ってたけど、キャプテンで気も強かったし、近寄りがたいオーラはあったね」
「綺麗な人はだいたいあるよね、オーラ」
「うん」
「でも、凄いね、そんな人から告白されるなんて」
「そうだね、俺が一番驚いた」
「どれくらい付き合ってたの?」
「高1から4年」
「私の知らないその頃の涼ちゃん知ってるんだね…」
「うん、まぁ」
「いいなぁ…。何で別れたの?」
「なんとなく…。俺から別れちゃったから」
「えー!そうなんだー。振られたのかと思った。先輩は納得してた?別れるとき」
「いや、泣いてた。でもあの時の俺じゃ付き合っていくのは無理だったと思う」
「そっか…。名前…なんていうの?」
「斉藤律子だよ」
「律子さん…か。なんて呼んでたの?」
「俺は律子で、涼一って呼ばれてた」
「やっぱり…涼ちゃんの初めての人だよね…?」
「ん?ああ、まぁ…」
「そうだよね…」
里奈は悲しそうな顔をした。
「え?怒ってる?ごめんね」
「謝らないで!」
「ご、ごめん」
「だからー」
里奈の目が少し潤んでいる様に見えた。
少し間が空いて里奈が言った。
「お腹空いたね。ご飯食べよっか」
涙を堪えた精一杯の笑顔だった。
「うん」
オムライスを食べながら思い出だから写真はそのままにしておいてと里奈は言った。
涼一はどこかホッとしていた。律子と別れてから写真を見ることはなかったが、捨てることもしなかった。なぜなのかは涼一にもわからなかった。
その夜ベッドを軋ませながら里奈の体を揺ゆらしていた時、吐息まじりの弾む声で苦しそうに里奈が言った。
「涼ちゃん…大好き…だからね…」
「俺もだよ…」
抱き合ってひとつなったふたりはそのまま達した。
疲れて眠った里奈の隣りで涼一はタバコに火をつけた。タバコを吸うことを里奈は何も言わなかった。
ゆっくりと 吐きだす煙を燻らしながら律子の事を考えていた。
律子はタバコが嫌いだと言った。向こうの家でも、車の中でも吸っていたがその度に嫌な顔をされた。ただ、やめてとも言われなかった。
「涼ちゃん、灰が落ちそうだよ」
目が覚めた里奈が眠そうな顔で言った。
「あっごめんね、タバコ煙くて」
「ううん、大丈夫だよ。私、涼ちゃんがタバコ吸ってるの好きだもん」
「え?そうなの?」
「うん、カッコいいから」
考えた事もなかった。
「えへへ、私は特等席だもんね!いつも横で見てるから」
「俺がタバコ吸うの嫌じゃないんだ?」
「うん。涼ちゃん…。何でも言ってね…」
「うん。わかってる」
「里奈、ビール飲むけど、いる?」
「いるー」
里奈の優しさに救われた気がした。
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