地獄に落ちた男は鬼に叶わぬ恋をする~事件の謎と恋心~

宝者来価

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一話 千年前の罪

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 令和から千年ほど前。

「私は山に山菜をとりに行きます、母さんを頼みますよ」
「家のことはアタシに任せていっぱいとってきてね!」
「ゴホッ……苦労をかけるね、シノガタ」

 私が住んでいたツチノコ村は決して豊かな土地ではなかった。だからこそ村人たちは皆が助け合って何とか暮らしてきた。私の大切な人たちだ。

数週間前から村に疫病が蔓延して父は亡くなり母も寝込んでしまった。
 山菜をとりに遠出したが栄養があるものがたくさん実っていた。これできっと元気が出ますね。妹や弟たちにも満腹に食べさせてやれそうです。

 あまりに山奥まで迷い込んだ私は村へ帰るのが朝に。ずいぶんと遅くなってしまった。

「な!?」

 村は激しく燃えていた。ごうごう、めらめら。巨大な炎の音が耳を貫く。
 家へと足を運ぶ、母に寄り添うように妹が、弟が、真っ黒に焼けていた。
 村長、隣の家に暮らす娘、年の近い友だちも死に絶えていたのだ。

「なんで、どうして――!?」

シノガタは隅々まで探したが生きている人間など一人もいなかった。
家々を調べた結果、外から、扉に杭を打ち付けた跡。これでは扉が開かず外へ逃げられなかったことだろう。
 丁寧な言葉を心がけてきた人生、妹や弟が真似をしないようにと誰よりも気を付けてきた。

 やがて、ぞろぞろと隣村へ帰っていく人々が炎で明るく照らされた。


「殺してやる゛ッッ――!!!!!!!!!!!!!!!!」

 私は同じように隣村を燃やした。
 1人でやり切るのは大変だったが深夜に忍び家々の戸を開かなくして一気に火を点けた。
 巻き込まれて私も死に、あの世へと魂は導かれる。

 地獄の裁判で私は多くの者に囲まれた。
 同じ村に暮らしていた者からは減刑をとの声。
 私が焼い者たちは重き罰をとの怒号。

 私に対する閻魔大王の判決は百度の火あぶりと百度の四肢切り落とし。
 さらに加えて壱万の鞭討ちと千年間を岩の洞窟に作られた檻で過ごす刑。
 当時は本当に罪というものは罰が厳しかった。

これでも百人も女子供も容赦せず殺した私にしては軽い罰で済んだのだ。

 しかし私の家族はこの罰に納得がいかないと申し立てた。

「なんでお兄さまが……!!」
「閻魔様、私はこの罰を受けます。どうか家族だけは天国へ」
「では転生はどうだろうか」
「転生した先で苦しむやもしれませぬ」
「千年間の先で戦(イクサ)もなく病気で人々が殺し合うことなき時代に転生させる」

 こうして私は罰を受けた、焼かれ、切られ、洞窟の中に千年間。

 痛い、熱い、寒い、叫び続けて千年間。

 シノガタは目もろくに見えず、耳もろくに聞こなくなった。ただ痛みを受け続ける日々。
 何故私がこんな目に、ただ愛した家族を奪われた復讐をしただけなのに。悔しくとも私には拷問されつづける以外にない。

「……?」

 怪物がやってきた、鬼ではない。え、鬼以外がここに?
 何か声を発している、怒られているのだろうか。
 偉い者かと思い土下座すると声がやんでしばらくしていつも鞭撃つ赤鬼がきた。

 鞭に打たれる為に赤鬼に両手を差し出す。
 鬼は私の口の中に唾液以外の何かを入れた。
 驚いて思わず喉をならして飲み込む、ようやく【水】だと理解した。

 まだ声すら出せない私の足が妙に軽い。
 足枷が外されたのだ、ようやく私は理解した。

「……ぅ」

 声が出ず、手を伸ばすと赤鬼の肌に触れた。
 何とも温かくじんわりと身体中へ伝わる。
大して見えもしない目を閉じて眠りについた。


―――

 千年の拷問を担当した男の刑期が終わった。

「千年の間、お疲れ様でした」

 天使が檻に向けて言葉を放つも耳には届かない。
 シノガタは天使などという存在を知らない、白い手も生えた化け物にしか見えていない。
 声も耳さえうまく機能せず聞き取れず脅え縮こまる。

「赤鬼さん、僕の代わりにこの水をシノガタさんに飲ませてください」
「俺では怖いだろう」
「いつものように近づいて、今度は水を与えるのです」

 シノガタは俺にいつものように両手を差し出す。
 もう回数が分からないのだろう。
 ゆっくりと口の中に水を染みさせた。

 ごくり

 一口の水を飲むと差し出していた両手が赤鬼の膝にふれた。
 極寒の檻で冷たいその手は暖を求めてそのまま触れ続ける。
 そのまま膝の上で寝てしまった。

「……こんなもの、いくらでもくれてやる」
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