地獄に落ちた男は鬼に叶わぬ恋をする~事件の謎と恋心~

宝者来価

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五話 現代地獄

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 少しは自力で動けるようになった私は観光地となった三途の川へ。
 魚などいなかった紅い川は今や穏やかに流れている。
 【てれび】という箱が昔はこの川を渡らせて裁判をしていたと語る。

「観光ですか?」

 子鬼が案内してくれた。昔はこの川で判断している部分もあったし私の時代は必ず亡者となれば川を通ったのだが今や川を渡ることなどはない。私は通ったのになんて身勝手な怒りが少しも湧かなかったと言えば嘘になる。

「何故、今ではなくなったのでしょうか?」
「……元から足が生えていない者や、病気で長年足を失った者、そして金銭による弔いが発生したことによる貧困の差で渡る場所が違うなど管理で揉めまして」
「鬼側の都合で変更した、と?」
「半分は、もう半分は人間が決めたことです」

 裁判の判定でなぜ責め苦を受けねばならぬか、というのが人間の理由。やっていないことを無理やり自白させるのに拷問をするのは罪にならないとでもいうのかと。

「鬼はあくまで裁判で決まった拷問をする妖怪ですし、川を渡るのはむしろほぼ天国行きが決まっている者だけなのですよ」
「何故、天国行きが決まっているのに川を?」
「観光地として浅瀬を歩きます、これは己の死を自覚してもらうための儀式です」

 善人の多くは裁判の前に三途の川を渡らなくてもいいのだろうかと疑問になる。ならば渡してしまおうとのことだ。確かに私も三途の川がなかったら、え、川まだ渡ってないのに判決? となるだろう。

「子鬼さん、ここの案内はあなたのお仕事でしょうか?」
「はい」
「おーいトトンガー!!」

 遠くから小鬼がもう一人。手を振って近づいてきた。

「今は観光人様の案内中だぞ」
「例のやべぇ悪人がついに裁判だってよ、見たいだろ」
「あの集団自爆テロリストの?……でも、俺は仕事中だし」

 ちらりとこちらをみやる小鬼。まだ拷問もしたことがない子鬼はなんだか子供のように思えてしまう。彼らもまた鬼であることに変わりはない。鬼という存在を許したわけではないが彼らが私に何をしたというのだろうか。案内をしてくれただけではないか。

「私のことはどうぞかまわず」
「……ああ、ありがとうございます! あ、裁判の見学がご希望でしたらそちら案内可能です」
「その【てろりすと】とは?」

 子鬼が観光客用の観覧席があるので見たほうが早いと思います、とただ親切に聞いてくれる。今の裁判に興味がありナキと共に向かう。

「お前が行きたいと願うなら、俺は付き合おう」
「……うっ」

 歩こうとしたが、まだ動けるようになったばかりの足はいうことを聞かない。枷をつけられていなくてもまだこんなにも重いのか。

「あっ……俺、車椅子持ってきますよ!」

 子鬼の親切で車椅子に乗せられ、裁判所へ。
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