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カモック・ヒトリー編

95話 カモック・ヒトリー『COMMONEP』体育祭E

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一方その頃クルリーナは最初の競技に挑んでいた
魔法で的を撃ちぬくだけのシンプルで実力差の出る種目
実況の生徒が開始の合図として旗を振った

「デンゲ!!」

雷魔法というのは決してこの時代で羨ましいと思われる魔法ではない
現代社会であれば雷の魔法が使えれば充電し放題などいくらでも在る
だが無人島に電池を持って行っても科学が強い人間が火起こしの道具にする程度

バリッ!!!

火などと違って貫通力があまり無い魔法
もう一つ難点があり『枝分かれの性質』が雷には在る
真っ直ぐな棒を向けて付くのより天然の曲がりくねった枝で戦う方がやりにくい

当然結果は芳しく無かったが

「きいいいいっ!タテロール家のワタクシに生意気でしてよ!」

と的に向かって吐き捨てる
今のは悪役令嬢っぽかったと心の中でドヤ顔をする
プンプン怒りつつレジャーシート(布)に来たら

「お疲れ」
「リン様?」
「君の実力ならネクデンゲ打てるんじゃない?」

魔法の威力 デンゲ<ネクデンゲ<サーデンゲ

「それが何か?」
「あの的、本当は壊せたでしょ」
「気付きませんでしたわ!!」
「……それは悪役令嬢としての動きかい?」
「いえ、本当に思いつかなかったのですわ」

この世界がゲームである事を強く意識しすぎていた
住民たちから見れば大きさが違って威力が違えば貫通力も当然違ってくる
しかしゲームでは威力が違う以外に意識などいかない

せいぜいエフェクトが変わったとしか思わないのだ
そもそも敵モンスター以外に魔法を打つ事が無い

「ふぅん?」

リンの後ろからクラスメイトたちが声をかけて来た

「惜しかったわねぇ」
「どんまいクルリーナ相性は仕方ねぇって、だから機嫌なおせ、な?」
「女の慰め方は分からないが代役なのに全力で取り組んでくれた事は感謝する」

何か違うと思った
悪役令嬢として勝手に出場をキメあげくに大した結果を出せなかった
周りからは『やれやれ……これだから悪役令嬢は』という冷たい言葉が来る筈


「あるぇ?」
「それが素の君か」
「忘れて下さいませ」
「中間魔法ぐらい簡単に出来ると思ったけどな」
「素人は皆そう言うのですわ!」
「いや素人では無いと思うけど……」
「威力が真ん中の魔法というのは世界を作る者からすれば地獄でしてよ」
「そうなの?」

魔法があまりに弱いとMPを使わず『攻撃』のみで片づけたくなる
かといって最初の魔法を強くし過ぎるともっと強い魔法の威力が調整出来ない
子供向けゲームで50LVまでついに鍛えて覚えた技が雑魚ではガッカリする

「……あれのせいで私は五日ほど寝れませんでしたわ」
「何が在ったのさ?」

残業である
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