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15話 vs.ハクア・ハート(後編)
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「【スキルカード:炎】――うわ!?」
「【スキル:影】! 僕様はカードなんかに興味ないんだよっ」
影の手が伸びて俺の手からカードを叩き落としたたが元々使う気などなかったやつだ。
俺から奪ったスキルカードに顔を近づけたハクアは、それがトランプに負けた罰ゲームでうさ耳を付けられたレイニーの写真だったことに激しく動揺していた。
このまま時間を稼げば俺の勝ちだ。
「【スキル:かき氷 粉雪】」
案の定回避されてしまったが、どうせ当たったところで冷たいで終わる。キンキンに冷えたビールに触った程度で人はダメージを負わない。
「氷雪系まで使えるのか!」
子供のようにキラキラと目を輝かせているハクア。
スキルをもっと見たい好奇心が伝わってくるが、先ほどの粉雪で威力の弱さはバレてしまった。
俺は人のこの程度かみたいな落胆した態度は何となく分かる。ずっと昔からそうだった。
クソ親が俺に対してそういう感覚の時はしばらくロクな目に遭わなかった。
「【スキル:トラウマ】」
ボフンとベッドの上に召喚される虎の顔と馬の身体をした化け物。
もちろん相手はそんなものを見たら魔物が召喚されたと焦って人よりそちらに目が行くのは必然。ハクアがついに【スキル:影】による攻撃を仕掛けたのも読み通りだ。
壁に叩きつけられて中の綿が散らばっていく。
虎で馬なぬいぐるみを出すだけのスキルから生まれた人形に攻撃手段なんかあるわけがない。
「僕様をからかっているのかな?」
「必死じゃボケ、タコ、カス、アホ」
「ふーん」
影がカドマツを縛り付けて締め上げる。
包帯が取れたばかりなので肌に直接触れると治ったばかりの火傷がヒリヒリした。
ドアを蹴飛ばしてウルフさんが飛び込んできた。
「ガルルルルゥッ!!」
「あらー帰ってくるのが早いねウルフさん」
「カドマツ様!!」
遅れてレイニーも駆けつけたが、俺が人質にとられている状態。
ハクアもさすがに今までの体たらくを見て俺にまともな抵抗もできないと気付いていた。
こいつがどうなってもいいのかな? と俺の首に影の刃を当てる。
「……カドマツ様。【最初に覚えたスキル】を発動してください」
「僕様に聞かれているけどいいの?」
「3、2、1、――今です!」
【スキル:はじける服 身に付けている物が全てはじけ飛ぶ】
俺はレイニーの指示通りに服をはじき飛ばすスキルを使い、全身にまとわりついていた影を吹き飛ばした。
人質を失ったハクアは即刻ウルフさんに窓の外へと殴り飛ばされ、彼方へと消えていった。
俺は思わずウルフさんに抱き付いて泣いてしまった。
「怖かったぁ……!!」
「城から〈たすけて〉の指文字が見えたからな」
「リハビリにちょうどよかったので……」
特に魔物との戦闘では、いつでも必ず肉声が届くわけじゃない。
声を奪われても仲間に言葉を伝えるために〈指文字〉を使うことになっている。
火傷の治療中はスキルなどの訓練が難しくても、勉強ぐらいはと教えてもらっていたのがこんなに早く役に立つとは。
〈た〉が思い出せなくて詰みかけたけど。
【スキル:水面鏡】で窓の外へ指文字で『たすけて』と映した。
「あそこまでデカい『たすけて』のサインをハクアの野郎は見逃したのか?」
ウルフ疑問もっともで、かなり大きく映したのは確かだ。
窓の外に投影していたとはいえ、この部屋の窓は決して小さくはない。
ハクアに見つかっていたら即刻殺されていてもおかしくはなかった。
「窓をふさいだんですよ」
「どうやって?」
「結露で」
最初に部屋中をジメジメにして空気に水を含ませてから【スキル:かき氷】を飛ばし、窓ガラスを結露させて窓の外が見えにくいようにした。
作戦はちょっとしか効果がなかったのだが、いろいろと違和感があった。
「あの人、もしかして目が悪いのでは?」
「メガネかけてねーなコイツとは思った」
「また忘れてきたのでしょうね」
ハクア・ハート。あいつが戦闘にメガネ忘れてくるような奴でなければ俺は間違いなく死んでいた。敵が俺よりもアホで良かった。
「【スキル:影】! 僕様はカードなんかに興味ないんだよっ」
影の手が伸びて俺の手からカードを叩き落としたたが元々使う気などなかったやつだ。
俺から奪ったスキルカードに顔を近づけたハクアは、それがトランプに負けた罰ゲームでうさ耳を付けられたレイニーの写真だったことに激しく動揺していた。
このまま時間を稼げば俺の勝ちだ。
「【スキル:かき氷 粉雪】」
案の定回避されてしまったが、どうせ当たったところで冷たいで終わる。キンキンに冷えたビールに触った程度で人はダメージを負わない。
「氷雪系まで使えるのか!」
子供のようにキラキラと目を輝かせているハクア。
スキルをもっと見たい好奇心が伝わってくるが、先ほどの粉雪で威力の弱さはバレてしまった。
俺は人のこの程度かみたいな落胆した態度は何となく分かる。ずっと昔からそうだった。
クソ親が俺に対してそういう感覚の時はしばらくロクな目に遭わなかった。
「【スキル:トラウマ】」
ボフンとベッドの上に召喚される虎の顔と馬の身体をした化け物。
もちろん相手はそんなものを見たら魔物が召喚されたと焦って人よりそちらに目が行くのは必然。ハクアがついに【スキル:影】による攻撃を仕掛けたのも読み通りだ。
壁に叩きつけられて中の綿が散らばっていく。
虎で馬なぬいぐるみを出すだけのスキルから生まれた人形に攻撃手段なんかあるわけがない。
「僕様をからかっているのかな?」
「必死じゃボケ、タコ、カス、アホ」
「ふーん」
影がカドマツを縛り付けて締め上げる。
包帯が取れたばかりなので肌に直接触れると治ったばかりの火傷がヒリヒリした。
ドアを蹴飛ばしてウルフさんが飛び込んできた。
「ガルルルルゥッ!!」
「あらー帰ってくるのが早いねウルフさん」
「カドマツ様!!」
遅れてレイニーも駆けつけたが、俺が人質にとられている状態。
ハクアもさすがに今までの体たらくを見て俺にまともな抵抗もできないと気付いていた。
こいつがどうなってもいいのかな? と俺の首に影の刃を当てる。
「……カドマツ様。【最初に覚えたスキル】を発動してください」
「僕様に聞かれているけどいいの?」
「3、2、1、――今です!」
【スキル:はじける服 身に付けている物が全てはじけ飛ぶ】
俺はレイニーの指示通りに服をはじき飛ばすスキルを使い、全身にまとわりついていた影を吹き飛ばした。
人質を失ったハクアは即刻ウルフさんに窓の外へと殴り飛ばされ、彼方へと消えていった。
俺は思わずウルフさんに抱き付いて泣いてしまった。
「怖かったぁ……!!」
「城から〈たすけて〉の指文字が見えたからな」
「リハビリにちょうどよかったので……」
特に魔物との戦闘では、いつでも必ず肉声が届くわけじゃない。
声を奪われても仲間に言葉を伝えるために〈指文字〉を使うことになっている。
火傷の治療中はスキルなどの訓練が難しくても、勉強ぐらいはと教えてもらっていたのがこんなに早く役に立つとは。
〈た〉が思い出せなくて詰みかけたけど。
【スキル:水面鏡】で窓の外へ指文字で『たすけて』と映した。
「あそこまでデカい『たすけて』のサインをハクアの野郎は見逃したのか?」
ウルフ疑問もっともで、かなり大きく映したのは確かだ。
窓の外に投影していたとはいえ、この部屋の窓は決して小さくはない。
ハクアに見つかっていたら即刻殺されていてもおかしくはなかった。
「窓をふさいだんですよ」
「どうやって?」
「結露で」
最初に部屋中をジメジメにして空気に水を含ませてから【スキル:かき氷】を飛ばし、窓ガラスを結露させて窓の外が見えにくいようにした。
作戦はちょっとしか効果がなかったのだが、いろいろと違和感があった。
「あの人、もしかして目が悪いのでは?」
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「また忘れてきたのでしょうね」
ハクア・ハート。あいつが戦闘にメガネ忘れてくるような奴でなければ俺は間違いなく死んでいた。敵が俺よりもアホで良かった。
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