39 / 152
38話 シャック
しおりを挟む「私と遊んでくれないのですか?」
子供のようにむくれてしまったレイニーによしよしして、さっき買った棒つきキャンディを口に放り込んでおく。
レイニーが大人しくキャンディを喰っている間に俺はシャックさんと話をすることにした。
さっきのは本気の大技のようだったので、あれが俺に向かって発動していたら、今頃俺は木っ端みじんの藻屑になっていただろう。
「ちょっとお話しているから、レイニーは座っててくれ【スキル:トラウマ】」
虎で馬なぬいぐるみを椅子がわりにさせて、シャックさんと会話フェイズ。
何故レイニーを偽物だと思ったのかと聞くが俺を信用できなのか先に名乗るのが筋だろうと警戒を解いてくれない。
俺は自分の名前と、レイニーの元・婚約者に召喚された異世界転生者であると伝えた。
「僕の知るレイニーはこんな子供みたいに無分別な行動しないはずなんだけど……」
でも本人の威力だし……と、まずは話を聞いてくれる様子。
「国王と昨晩いろいろあったので、今は心が不安定でして」
「君の【スキルカード:ドール】はその時に?」
そうしているうちに口の中の飴を食べ終わったレイニーが蝶々に誘われて走って行ってしまいそうになったので慌てて追いかける。
巨大なカマキリ型の魔物と鉢合わせて即刻レイニーを引きずって逃げ出した。魔物はカマを振り上げ追いかけてくる。
シャックさんの方を見ればこの程度で敵前逃亡……? みたいな顔をしている。
俺は昔から他人のこういう態度には敏感ですぐに呆れた態度に気付いた。
「ドール操れば君も戦えるんじゃない?」
「無理無理無理!! あんな怖いのと戦えるアンタらが凄いの!!」
「【スキル:ひきよせ 超重力】」
カマキリの魔物が地面に叩きつけられ、俺たちはなんとか助かったらしい。
さすがレイニーの古い友だちだが、当のレイニーは蝶々を追いかけるのに夢中である。
こうなると自分が魔物に襲われたことより友達のことが心配になってくる。
「そんなに蝶が珍しい柄だったのか」
「ちょうちょいる!」
「ホンイツさんを強力なドラッグで廃人にしたとか言ってたけど、その薬おまえもうっかり吸い込んでたりする?」
シャックに今までのいきさつを説明すると、ホンイツさんの部屋から出た時の彼から甘い香りはしたかと聞かれた。
確かに甘い匂いはしたがホンイツの吸っていた煙草が似たような香りだったので気にしなかった。そういえば今朝ギルドで出会ったレイニーの知り合いも甘い匂いがすると言っていた気がすると答えると頭を抱えるシャックさん。
「焚き薬を本人まで吸い込んで大変なことになってるとしか……」
「あの、シャックさんはレイニーの古い友だちなんですよね」
「まぁ旅の仲間ではあったよ」
「しばらく俺のこと守ってくれ」
「何で僕が?」
「俺が死ねば正気に戻ったレイニーは世界を亡ぼすぞ」
こうして俺はシャックさんと木陰に座ってレイニーを観察することに。
ミサイルの発射スイッチを幼い子供が握ってしまったような現状。
シャックさんは早いところレイニーに解毒剤を与えよう、とため息をついた。薬売りはこの国にもいるのでここまで連れてこいと言う。
「ギルド行ってマスターに【カッテニシンダバッタ】って伝えて」
俺は急いで先ほどのギルドに戻った。
道中で何度も石につまずいて転んだが、シャックから預かった言葉はもちろん覚えている。
メモもとれなかったから何回も声に出して忘れないようにしたからだ。
「カッタサンマバカ!」
『……』
「シャックさんがギルドマスターにこれを言えばいいと」
『病人がいるなら私が診ましょう』
ギルドマスター自身が薬剤師であると言われ、森に薬を待ってる友達がいるのでついてきてほしいと頭を下げる。シャックの合言葉のおかげか、マスターは快く患者のところまで付いて行きましょうと言ってくれた。
レイニー、大人しく待っててくれよ。
たどり着いたら虐殺現場とかマジで勘弁して欲しい。
1
あなたにおすすめの小説
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?
ばふぉりん
ファンタジー
中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!
「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」
「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」
これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。
<前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです>
注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。
(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる