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71話 レイニーのインモラル
しおりを挟む「どうすりゃいいんだよ!?」
「そんなにどうもしなくていいだろ別に」
「それ、解決してねぇんだが……」
「だってあいつ好き好んで人喰ってるわけじゃねーと思う」
ずいぶんと墓があると思ってはいたが、食べた人々の墓であれば納得がいく。
看過できないのは確かなのだが、手がないわけでない。
例えばまずはどこかに閉じ込めるとか。
「今までも闇のスキルもってるから雪山洞窟にいた人とか、なんなら国王だって地下に封印されてんじゃん?」
「そうですね」
「他にも罪人だけ食べるとか――そういえば気づかなかったのはノアには似てないのか?」
「よく見れば、確かに面影がありますね」
近いし顔が大変なことになっている。レイニーには距離感を何とかしてほしい。
「僕ちんを見る目が欲情系のそれなんだけど!?」
「いいだろそれぐらい」
確かに親の面影のせいで欲情されたらちょっと気持ち悪いかもしれん。
でも、今はノアの子に出会えた感動の場面。
さらに人喰いスキルなんて先に話し合いしなきゃだろ。
「いや、問題あるって」
ワンズさんの言葉には何かはぎれが悪いものを感じる。
「とりあえず質問、ホンイツには会ったことあるのか?」
「……ない」
「は? おいおい、殺そうとしたのに会ったことがないって何だよ!?」
「僕ちんは毒キノコを用意してハクアさんに頼んだだけ……だから」
子供がこんな状態で放置してるのだんだんむかついてきた。
「【スキルカード:フレンド ホンイツ】」
通信にはホンイツがすぐ出てきた。
「肥料買えなかったの?」
「それどころじゃねぇ事件になったんだよ」
「ふーん」
「お前の息子がスキルで問題を起こしてて……」
「?」
首をかしげている。
「ああ、そうだよな、お前の子供が生き残って――」
「これがクソ親父か?」
「そう、嫌がらせしたいならお前もホンイツの尻掘ったら? あるいは――」
「僕ちんにはできないな」
いや、まぁやりたくねーのは分かる、そのままやりかえしたレイニーが異常なだけで。
言っといてなんだけど俺もやりたくないもん。
顔面を原型なくなるまで引っ叩くほうがいい。
「とにかくここにいる息子さんの責任をお前は取った方が良いぞ」
「……僕に息子いないんだけど」
「だから生き残ってたの! ラミィさんが証言してるんだから」
「ラミィ? そんな名前の人間は確かに大昔にゴミ処理のために雇ってはいた……」
ラミィさんが顔を出した。
「そうですね」
「君は一般人だろ!? 数百年は生きてることになる……んだけど」
「【スキル:グール】を持つ物の血には人を若返らせる効果があるので」
「グール? 知らないな」
「ホンイツ様があの日、ゴミ捨て場に落としたノアさんの赤ん坊は他の死体を食べて生き延びていました」
しばらくの間は沈黙が続いた。
「……ただやっぱり僕に息子はいない、と思う」
「ラミィさんが嘘ついてるってことか?」
「僕の子供に男、いないから」
「僕ちん、本当は女の子だよ」
男装の麗人という言葉が似あう。
「え、女の子!? 女性!?」
「男尊女卑が激しいこの国では女と女の親子ではやっていけなかったから」
「カドマツ様」
「レイニーどうした?」
「女性っていくら出せば抱かせてくれますか?」
ワンズにドン引きされているし、ホンイツですら苦い顔だ。
「ま、まだ金っていってるだけマシか。僕ちん抱きたきゃ5億マルかな」
「いや待てッ!! こいつは―――」
「それだけでいいんですね!!」
俺たち一度もレイニーが王子様だと説明してないからな。財布の詳しい事情は知らないがこの様子からみるに大したことないんだろう。
城にあった宝物庫にはかなり雑な置かれ方の財宝があった。
レイニーが金に困った様子は今までで一度も見たことがない。
「【スキルカード:テレポーター】」
レイニーとワンズが消えてしまった。友達のインモラルを止めたほうがよさそうなのだがどこに移動したのか全く分からない。
「どうしようホンイツ!!」
「5億なんか普通はもち歩かないから、城の財宝置き場かな」
確かに。
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