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70話 生き残った赤子
しおりを挟むウルフが吹っ飛んだので駆け寄った。
本人にはメージらしきものを負わなかったようだがそれよりも周りだった。
人間の赤ん坊が明らかに死んだ状態で置かれている。
「なん……は?」
確かに赤ん坊が牢屋の中で犯罪者から産まれた。その状況なら育てて貰えないのはとても可哀想だがあることだろう。でも死体は俺が覚えているかんじではすぐ死んでるにしては皆すこし大きい気がした。
ワンズは俺を睨みつけながら怒号を浴びせてきた。
「お前が――クソ親父を生かしたのか!!」
「親父!?」
確かに驚いたがウルフを殴り飛ばすだけのパンチ力ともなれば血筋には納得がいく。
ホンイツが異世界転生者にしてきたことは本人から聞いたから子供がいるというのはそこまで疑問でもない。
それより赤ん坊とか、他の謎があまりにも大きい。
「とりあえずカドマツ様を逃がします」
「ちょ、待って!! ワンズさんに聞きたいことあるから!!」
「ではせめて地上に出て下さい」
人の家だがレイニーがスキルすら使わず天井をぶっ壊した。たしかに状況が状況だがテレポーターで飛べば良かっただろと心の中でツッコミ。
ウルフと共に屋敷の外へとレイニーは連れ出し地面に着地。
太陽は沈みかけていてもうかなり周辺は暗くなっている。
ワケが分からない叫びを上げ追いかけてきたワンズ。
「お前らのせいで……殺しそこなった!!」
「俺が聞いた話だとハクアに殺されかけたって――」
「ハクアさんはあいつを殺す為に全部教えてくれたんだ!!」
ワンズがこっちに向かってくるが今度はレイニーがとめた。アニメでしか見た事のない衝撃波で地面がえぐれている。
「なんでハクアにさんづけ!?」
「僕ちんの親がアイツだってことはハクアさんから教えてもらった」
「嘘かもしれねーじゃん!!」
「ママンもそれは本当だって言ってた!!」
もう親子なところはいいのだ、それよりも問題は別のところにある。
ウルフが唸り声をあげながら叫んだ。
「あの地下にあった赤ん坊の死体はなんなんだ!!」
「そう、それ」
「……【スキル:グール デス・ステンチ・ネイル】」
グール!? ゲームやアニメで見かけるあのグール!?
グールは人間を食べるモンスター。人間しか食べられない。
そういえば死んでた赤ん坊のそばに料理用の鍋や包丁があった。
繁殖させて食べる……そこの辻褄はあったのだが。
ワンズの爪がこちらに伸びるのをレイニーが【スキル:水】の剣で切った。
「まてまて、俺はおまえを殺す気はないからッ……ちょっと話そう、な?」
「カドマツお前この状況でそんな甘いことを!!」
「レイニーワンズの動きとめられるか!?」
「【スキル:水 飴網」
海でクラーケンを捕まえた時より細いがワンズは動けない様子。
ウルフが攻撃をしようとするまえに俺は庇うために近寄った。
俺をどかすことはウルフなら容易だろうが踏みとどまるウルフ。
「俺の予想が当たってるなら絶対コイツを殺したら駄目だ!!」
あまりの騒ぎにご婦人が家の中から駆けつけてきた。
「ママン!? 僕ちんはいいからこんなところにいたら危ないよ!!」
「いいえ、私はレイニーくんと話があります」
「この強いの……知り合い、だったの?」
「どうかこの子を離してやってください、ワンズも、少し話をききなさい」
「ママンがいうなら――」
こうしてご婦人の説得に応じてスキルを解除。
今までの様子とはうってかわって大人しい。
母親のいいなりすぎてちょっとキモくはあるが、これはワケありだろう。
「久しぶりだね、何百年になるかな」
「どこかでお会いした、異世界転生者……でしょうか?」
「あなたが国王、ホンイツ様に捕まっていた時にゴミの処分係をしていたラミィです」
それを聞くとレイニー思い出したようで。
「……らっ!? では、ワンズ様はあなたとホンイツの間にできた子なのでしょうか?」
「いいえ、この子はあなたと共に捕まっていた女の子―――あなたより10年ぐらい前に捕まった異世界転生者がこの子の本当の母親ですから」
ようやくウルフは俺が必死に殺すなと叫んでいた理由が分かったらしい。
といっても気付いたのは父親を聞いてから。
困惑している様子のウルフ。
「そんな―――おいおい!?」
異世界転生者の子供はスキルが使える。
だが何もスキルを使う様子もなく路地裏で倒れていたラミィさん。
ウルフいわくワンズさんはガゴリグほどのパンチが打てる。ラミィさんが異世界転生者ではないのはそこまで頑丈ではなさそうな身体からして分かっていた。
父親がホンイツならレイプの目的からして異世界転生者しか意味がない。
つまりラミィさんとの子ではない、じゃあ誰の子かってことになる。
「ノアの子、ということですね」
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