71 / 152
70話 生き残った赤子
しおりを挟むウルフが吹っ飛んだので駆け寄った。
本人にはメージらしきものを負わなかったようだがそれよりも周りだった。
人間の赤ん坊が明らかに死んだ状態で置かれている。
「なん……は?」
確かに赤ん坊が牢屋の中で犯罪者から産まれた。その状況なら育てて貰えないのはとても可哀想だがあることだろう。でも死体は俺が覚えているかんじではすぐ死んでるにしては皆すこし大きい気がした。
ワンズは俺を睨みつけながら怒号を浴びせてきた。
「お前が――クソ親父を生かしたのか!!」
「親父!?」
確かに驚いたがウルフを殴り飛ばすだけのパンチ力ともなれば血筋には納得がいく。
ホンイツが異世界転生者にしてきたことは本人から聞いたから子供がいるというのはそこまで疑問でもない。
それより赤ん坊とか、他の謎があまりにも大きい。
「とりあえずカドマツ様を逃がします」
「ちょ、待って!! ワンズさんに聞きたいことあるから!!」
「ではせめて地上に出て下さい」
人の家だがレイニーがスキルすら使わず天井をぶっ壊した。たしかに状況が状況だがテレポーターで飛べば良かっただろと心の中でツッコミ。
ウルフと共に屋敷の外へとレイニーは連れ出し地面に着地。
太陽は沈みかけていてもうかなり周辺は暗くなっている。
ワケが分からない叫びを上げ追いかけてきたワンズ。
「お前らのせいで……殺しそこなった!!」
「俺が聞いた話だとハクアに殺されかけたって――」
「ハクアさんはあいつを殺す為に全部教えてくれたんだ!!」
ワンズがこっちに向かってくるが今度はレイニーがとめた。アニメでしか見た事のない衝撃波で地面がえぐれている。
「なんでハクアにさんづけ!?」
「僕ちんの親がアイツだってことはハクアさんから教えてもらった」
「嘘かもしれねーじゃん!!」
「ママンもそれは本当だって言ってた!!」
もう親子なところはいいのだ、それよりも問題は別のところにある。
ウルフが唸り声をあげながら叫んだ。
「あの地下にあった赤ん坊の死体はなんなんだ!!」
「そう、それ」
「……【スキル:グール デス・ステンチ・ネイル】」
グール!? ゲームやアニメで見かけるあのグール!?
グールは人間を食べるモンスター。人間しか食べられない。
そういえば死んでた赤ん坊のそばに料理用の鍋や包丁があった。
繁殖させて食べる……そこの辻褄はあったのだが。
ワンズの爪がこちらに伸びるのをレイニーが【スキル:水】の剣で切った。
「まてまて、俺はおまえを殺す気はないからッ……ちょっと話そう、な?」
「カドマツお前この状況でそんな甘いことを!!」
「レイニーワンズの動きとめられるか!?」
「【スキル:水 飴網」
海でクラーケンを捕まえた時より細いがワンズは動けない様子。
ウルフが攻撃をしようとするまえに俺は庇うために近寄った。
俺をどかすことはウルフなら容易だろうが踏みとどまるウルフ。
「俺の予想が当たってるなら絶対コイツを殺したら駄目だ!!」
あまりの騒ぎにご婦人が家の中から駆けつけてきた。
「ママン!? 僕ちんはいいからこんなところにいたら危ないよ!!」
「いいえ、私はレイニーくんと話があります」
「この強いの……知り合い、だったの?」
「どうかこの子を離してやってください、ワンズも、少し話をききなさい」
「ママンがいうなら――」
こうしてご婦人の説得に応じてスキルを解除。
今までの様子とはうってかわって大人しい。
母親のいいなりすぎてちょっとキモくはあるが、これはワケありだろう。
「久しぶりだね、何百年になるかな」
「どこかでお会いした、異世界転生者……でしょうか?」
「あなたが国王、ホンイツ様に捕まっていた時にゴミの処分係をしていたラミィです」
それを聞くとレイニー思い出したようで。
「……らっ!? では、ワンズ様はあなたとホンイツの間にできた子なのでしょうか?」
「いいえ、この子はあなたと共に捕まっていた女の子―――あなたより10年ぐらい前に捕まった異世界転生者がこの子の本当の母親ですから」
ようやくウルフは俺が必死に殺すなと叫んでいた理由が分かったらしい。
といっても気付いたのは父親を聞いてから。
困惑している様子のウルフ。
「そんな―――おいおい!?」
異世界転生者の子供はスキルが使える。
だが何もスキルを使う様子もなく路地裏で倒れていたラミィさん。
ウルフいわくワンズさんはガゴリグほどのパンチが打てる。ラミィさんが異世界転生者ではないのはそこまで頑丈ではなさそうな身体からして分かっていた。
父親がホンイツならレイプの目的からして異世界転生者しか意味がない。
つまりラミィさんとの子ではない、じゃあ誰の子かってことになる。
「ノアの子、ということですね」
0
あなたにおすすめの小説
クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?
ばふぉりん
ファンタジー
中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!
「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」
「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」
これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。
<前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです>
注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。
(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜
あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。
その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!?
チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる