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99話 会議 中編
しおりを挟むテント型の建物で大勢の討伐協力者と会議をしていた。
すると巨大な男性が入ってきた。
見覚えがあり、確か1代目の異世界転生者だ。
「… … こ ん に ち は」
でも現れた瞬間に、ぞわり、気持ち悪いでは言い足りない吐き気。
と、同時に周りの様子がおかしい。
俺のように吐きそうになっているなら分かるが、全く違う。
『まさかきてくれるなんて!』
『顔が見れるとはラッキーだ!』
『今日くるの迷ってたけど、初代さんがいるならきてよかった……!』
まるでアイドルが握手会でも開催したかのよう。皆が初代と呼ばれた男に対して近づくし目が好きなものをキラキラと見る子供と同じ。
初代が持つ【スキル:安心】とかいうチートスキルは噂されてはいた。
異世界転生者たちを洗脳して安心する相手だと思わせる特殊なスキル。
でも、俺に効いてないな?
もしかして無効化系のスキルを俺は持っているのか?
まだ読んでいないスキルブックのページに書かれているのか。
世界を滅ぼすラスボスのような、ハクアに似た邪悪さを感じる。
「初めまして、俺はカドマツです」
騒ぎ立てても危ない、子供の頃に見たおぞましい光景が蘇る。
教祖に対して失礼なことをした人間が竹の棒で殴られ続けていた。
天罰としか叫ばない周り、つまり今は何か悪行を暴いても危ない。
大人しく吐き気を抑え自己紹介をするほかになかった。
「僕が初代」
ただ、急に出てきたのだから理由はあるはず。
逆鱗に触れないように仕事だけは遂行しなければ。
せめて、ハクアや四天王側かどうかは調べたい。
「近頃は魔王討伐にさえ顔を出さなかったですよね……そんな初代さんが何処で何をしていたか教えて欲しいのですが」
「異世界転生者を選ぶことができる神殿で調べものをしていたんだ」
「では単刀直入にお聞きします、あなたはハクアと協力関係にありますか?」
仮に協力関係にあれば話がややこしくなる。
初代さんは不気味にニタァと笑う。
こういう整った顔つき(イケメン)でホラー風味の笑顔ってできるんだな。
「僕とハクアは敵対してるよー」
ハクアと敵対しているなら味方、というわけでもないが少なくともハクアを倒すために開いた会議への参加理由としては納得だ。
「……ふむ」
「僕からも聞きたいことがあるよ」
四天王イチドペンギンに、今いる異世界のことをどこまで知らされたのかと問われる。
魔王復活は四天王を全員倒せば終わると素直に答えた。
隠すことでもないしこれからむしろ会議で話す内容だ。
「世界の根底は何も話さなかったわけか」
「こんてい?」
「君は昭和か平成で死んだ?」
「俺が死んだのは令和でした、平成にも生きてましたよ」
「日本人ばかり異世界転生者なのを不思議に思ったことない?」
「それは―――ありますね」
それも俺で151人目。
転生者にえらばれた人間は〈選んだ者〉がスキルを決めることもある。
そして俺はこの儀式でおかしな状態になったからスキルが山積み。
「世界がゲームみたいだと思ったことある?」
「あります、ラノベっぽい感覚もありましたけど―――ゲームだ、という説明をされても俺は素直にやっぱりか、ぐらいの気持ちです」
フレンドとの通信機能。
スキルには【レベル】の概念があること。
魔物もいるしファンタジーかと思えば、かなり理屈がハッキリしている科学的な側面も。
「科学的?」
「飛行機がないのは金銭的に作れる余裕のある国が少なく魔物に落とされやすいとか」
「元・四天王をここに呼べるかい?」
「……シャックとエレナが平気なら」
「アタシは平気」
「ま、エレナがいいなら僕はいいけどね」
早急にポチを呼んで席につかせた。
「この世界がゲーム、その説明は合ってるか?」
「もっと詳しく言えばジャンルは賭博です」
「賭博!?」
あっさりポチは教えてくれたが賭博は考えてなかった。
パチンコにスロットにポーカーやルーレット。俺はこの世界で一切やった記憶がない。
せいぜいダウトで罰ゲームを賭けてやったぐらいなものである。
「もっと言えば世界を作ったのは人間ではないですよ」
「魔物とか神様とか」
最初に出会った女神様が作った可能性もあるにはある。
「宇宙人です」
「ここにきて急激なSF!?」
「異世界を作る技術をもった宇宙人の賭博場、それがこの世界です」
ハクアの話から急激に話が飛躍した気がする。
でも大きな前提があるなら確かめたほうがいいのだろうか?
今のところ宇宙人が作ったからといって何ができるか不明だが……。
「賭けてるって魔王討伐を誰がしたか?」
「そのように曖昧なものではなく、異世界転生者がいつ死ぬかが賭けの対象となっています」
話は脱線したが、初代の目的は異世界転生者がより長く生きること。
だから初代はハクアとは敵対している、この状況からして言葉に嘘はなさそう。
でも俺の直感なのかスキルなのかは分からない何かが、ハクア以上の危険性を察知している。
「異世界転生者の仲間には永久に生きてほしいね」
「なら4代目を殺そうとした理由を教えて欲しいのですが」
「?」
「そうは呼んでいないのか……ホンイツのことです」
「僕が殺そうとした、という事実はないよ?」
「ん?でも―――初代からもう仕事をしなくていいという手紙がきたと」
「昔のカミノがあった頃は保護してもらわなきゃだったからね!」
あの行いを保護って言い切るあたりレイニーより頭ぶっとんでるな。
ホンイツをとめられなかった理由は何だろうと楽観的だった。
安心のスキルで説得させられなかったのか、と。
でも、実際に会ってみて『保護してもらわなきゃ』というセリフに嫌な汗が流れ落ちる。
俺は普段なら察しが悪いほうだが、あまりに危険性を感じて脳をフル回転させた。
初代とホンイツ、そしてホンイツの過去で見えた小柄な女性には何があった?
俺より頭がいいであろう者も、初代に向ける視線は初代が何を話しても変わらない。
初代がきたからもう安心という声が五月蠅い。
「俺が会議の指揮をとりますので初代さん、俺の話をちゃんと聞くように言って下さい」
「いいよ、ほら皆? カドマツくんのお話を聞こうね」
その目はこっちを向いたが、まるで両親のようで俺は耐えられなくなり吐き出した。
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