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140話 責任(後編)
しおりを挟む俺はウルフ、色々あって犬になり【スキルカード:真実】で人間に戻った。
しかし元々俺はこの世界に異世界転生してから狼男、いや狼じゃなくて犬だけど。
カミノ城内を歩てる時ですら誰? って目で見られる始末。
食堂で飯をもそもそと暗い雰囲気で食べていたらカドマツがきた。
「俺はこれからニカナにお見舞いしに行くわけだけど、護衛も無理そうだよな」
「今の俺はカドマツより弱いぞ」
「思ったよりも深刻な問題だな」
カドマツを見送ってレイニーの部屋にきた。
普段なら匂いで分かるが俺は無力。
声も聞こえないから寝ているのか――?
「ウルフさん?」
「うぉえおあッ!?」
「私の部屋に私がいて、驚かないでくださいよ」
「すまん、今ちょっと耳も鼻も効かなくて」
「大丈夫ですよ、ウルフさんは元からそんなに強くありませんし」
「お前は昔からいつも励ますつもりでトドメ刺すよなぁ……」
確かに俺は元からそこまで強い訳じゃない。
俺がもし星すら破壊できるほど力持ちなら、ノアの事件は起きなかった。
カドマツほどではないにせよ俺が弱いのは――
「考え込むなら、ソファーにでも案内しますが」
レイニーがランプに灯をつけた。
本来であればこの部屋で光は使わない。
俺のためにやってくれたのだろう。
「オヤジ……に相談してみるか」
「え?」
「ああそうか、レイニーはオヤジと喧嘩してるんだったな?」
「……ガゴリグさんが悪い、というわけでもないのです」
「ふぅん?」
「一緒にガゴリグさんのところへいきますか?」
「え、でも――」
「1人では危ないですから」
俺のことを助けようとしてくれているのか。
昔からレイニーはいつもそうだった。自分だって腹を空かせているのに、わずかな食料を俺たちに渡そうとする。変わらねぇ。
「ありがとな」
「【スキルカード:テレポーター ガゴリグ】」
俺たちは船の――トイレのなかに詰まっていた。
「前にも言っただろうが!! 確認してからこいって!!」
「完全に忘れていましたね」
「地獄絵図だしもうトイレを破壊して出たい……今の俺にはできねぇけど」
「とりあえず脱出してあとのことは――あとだ」
オヤジが拳でトイレのドアを破壊した。
自分の船を破壊する行為は海賊ならやならいことが多い。基本もっと大事にするがオヤジはこういうガサツなところがある。提案は俺だが、もう少しぐらい考えろ。
「よし出れたな!!」
『船長、トイレのドア壊さないでくださいよ!!』
女性の船員、俺も知らない人だ。
「あとで直しておくからな」
『絶対やめてください、船長の修理はいいかげんですから』
「で? お前ら寂しくなって俺にハグされたくなっちゃったのか?」
「そんなわけ――」
「はい」
「……え?」
レイニーは今、はいって言ったな。
「お前らまとめてとびっきりのやつだ!!」
せっかく解放されたのにまたいい筋肉に包まれた。
オヤジの背中を見て育つっていうけど、胸板に押し付けられてるし、押し付けられているから何も見えない。
『トイレのドア修理するんで甲板にでも行っててください』
こうして甲板へ出てきた。
潮風が落ち着くし、この改造に改造をかさねた船も帰ってきたなと感じる。
でも、犬でなくなってしまった今、遠くの魚が泳ぐ音なんかを聞き分けすることはできない。
「んでー? 可愛いおれの子が緊急でやってきた理由を教えてもらおうか?」
「スキルが発動できないんだ」
「は?」
「これから大きな闘いになるのに、俺は――」
オヤジは俺を指さして笑った。まじで? そんなこと? と、それはもう大爆笑して船から落ちた。放置してたら3分ほどして海から飛び上がってきた。
「人が海に落ちたらちょっとくらい心配しろよお前ら」
「それより、人が真剣に悩んでるのに――」
「お前のスキル弱いじゃん!!」
ぐさっ。確かにその通りで、力がそこまで強くなるわけでもなく。
足の速さは馬系の魔物に劣る。
遠くの音まで聞こえる耳は戦闘、それもこれから始まるであろう細かいのがいっぱい出てくる混戦では雑音も多く役にたたない。
「そうだけど――」
「いいじゃねぇか戦ったら」
「え?」
「世の中には武器やカードって便利なもんがあるだろーが」
「あっ!!」
確かに言われてみればそうだ。別に俺はオヤジと違ってスキルカードが使える。
「うちの戦闘員なんか刀とか銃で戦ってるし」
「確かに今でもいるな、そういう奴」
「ま、それでも役にたたないってショゲるってんならいつでも船に帰ってきな」
「オヤジ……」
「良かったですね、解決して」
「で……お前とオヤジとの喧嘩はもういいのか?」
「はい、元をたどれば魔王がいなければよかった話なので」
「大体のことはそうだな」
「ではそろそろカミノに帰りましょうか」
「帰るならさっき獲ったイカ持ってけ」
「はい」
「【スキルカード:テレポーター カミノ】」
帰ったら――城が燃えていた。
めらめら、ごうごう、ぼーぼー。
「はい?」
「え?」
それはもう激しく燃えている、大火事だ。
「……ランプの炎を消してくるの忘れてました」
「そういえば点けてたな!?」
城の中には誰もいなかった。
こういう時にカドマツは魔物に命令してあることがある。
もし城で事件が起きたら人間を全員脱出させろ。
「【スキル:水 おやかな雨】」
「なんで大火事になって――あー」
どうやら危険物をしまうための部屋に引火してしまったようだ。
爆弾なんかも入っていたから、それはもう派手に燃えていた。
レイニーが残り火を消している間に俺は被害状況を確認。
「なんだこれ?」
瓦礫の中で箱が焼け残っている。書かれていた文字が黒く汚れてほぼ読めない。
『食べ――――感――30-になります※135話参照』
人間の今でも甘い香りが分かるぐらいで開けてみれば焦げたマフィン。
誰かが焼いたあとに慌てて避難したのだろうが、火事で捨てられるのはやるせないな。
「……まぁ、今はスキルも発動してないしな」
普段は甘いものを食べると自分から甘ったるい匂いがとれなくて避けていた。
けど、今は大して鼻も効かないから食べても悩まされることはない。
焦げていて少しビターになっているかもしれないが、俺には丁度いいな。
「いただきます」
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