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145話 最後の覚悟
しおりを挟むニカナでは激戦区で、ドールも異世界転生も街中で戦っていた。
なんでも最初は山の頂上にあった四天王が湧き出る穴が突如、大きく広がったらしい。
街中が破壊されているが、うぞうぞと敵がいるこの光景はけっこうキモイ。
「敵がいすぎて気持ち悪い……虫の大群を見ちゃった気分」
「【スキル:ドール あげ糸】」
2メートルはある敵たち。天高く舞い上がっては次々に落ちて消滅していく。
ニカナの王でなくなった男は、城へ俺たちを招き入れた。
そしてワンズさんは――瘦せていた。
急に海賊がきてワンズさんは誘拐され、働かされていたそうだ。
食事をロクにもらえずにみるみる痩せたらしい。
まさか親切だとは思わないだろうな……。
「永遠の別れを告げにきました」
「自分で……ううん、これこそ聞くべきだよね! ママンはどうしたい!?」
「彼とホンイツ様だけにしましょう――カドマツ様、くわしいことをお教えください」
俺はラミィさんに詳しいことを話し始めた。
レイニーが分身であり、ハクアを倒しにいくには帰りで記憶を失う。
でもその記憶を失うという力はスキルをすべて奪い取ったあとに発動するので俺なら耐えきれるだろうということを。
「――あ」
部屋から出てきたレイニーの目は赤くなっていた。
ホンイツは俺の胸倉を掴んできた。涙を浮かべた顔なんか初めて見た。
頑丈な服だから破けずに済みはしたが、ホンイツの真意は伝わった。
「次に会ったらまともに可愛がれよ?」
「……そうだね」
「じゃあ、行ってくる」
「いってきます」
手を振るホンイツに見送られつつ、二人でハクアがいる『忘れ谷』の入り口へ。
【スキルカード:テレポーター】で瞬間移動した。
どうやらハクアの傍へ直通もできはするらしいが俺が危険なのでパス。
谷が見える景色はまだ草ぐらいしか見えなくて平和その物だ。
「ドキドキしてきた」
「……そうですね」
「持ってきた弁当、いつ食べようかな」
「ここにきてピクニック気分でいるカドマツ様を尊敬します」
「いざって時に腹へってたら困るじゃん!!」
「それもそうですね」
「レジャーシートどこに敷く?」
「……楽しそうですね」
最後の冒険を俺は悲しい仕方ない感じで終わらせたくなかった。
正直ラスボスすら俺はもうね、知らんわって感じ。
ハクアは影分身と同じ顔してるだろうし見たいとも思わん。
俺のレイニーなら大丈夫。
軽く食事をとってから、出発した。
少し降りたら透明な板、ガラスのような何かが水面みたいに張られている。
けれど通り抜けは簡単にできるし、まるで映像を通り抜けただけのようだ。
「おっ……?」
「これが問題の『バリア』です」
「下から上に行こうとすればスキルを失って――最後には記憶を失うっていうバリアか」
「何度も確認しますね」
「もしかしたら俺がアホで、何か勘違いしてるだけ……って期待してるのかもな」
ガラスのように見えたその層をくぐり抜けたが、特に身体に異常はない。
このバリアは上から下では発動しないようだ。
「谷っていうけど、広いな」
「そうですね」
長い亀裂ではあるのだが幅もバカみたいに広い。
谷というよりは超広いアリジゴクとかそういうイメージだ。
あたり一面に草が生えているしまだ景色は穏やかで美しい。
「2枚目、通りますよ」
「……そうだな」
「水で抱えます」
レイニーの水で持たれた、ねぇ何で仕留めたエモノみたいに持つの?
「不服そうですね」
「お姫様抱っことまでは言わないからさ……もっとこう、人を運ぶ時の持ちかたで――」
「この世界ではこう運ぶので」
「そうなの?」
「ニカナではこういう運ばれ方の人をたまに見ましたので」
「それ死刑囚かなんかじゃないか……?」
ともかく持ちかたは変えてもらった。
球体の水に俺が浮いてゆっくり下へ降ろす形式へ。
服がびしょ濡れになっているが、悪くない。
本当に多いなと思いつつも100枚目のバリアを通り抜けた。
「おっ?」
「……カドマツ様はここで待機です」
「俺は絶対にここを動かん、だから俺が餓死する前に片づけて帰ってこい」
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