異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価

文字の大きさ
146 / 152

145話 最後の覚悟

しおりを挟む

 ニカナでは激戦区で、ドールも異世界転生も街中で戦っていた。
 なんでも最初は山の頂上にあった四天王が湧き出る穴が突如、大きく広がったらしい。
街中が破壊されているが、うぞうぞと敵がいるこの光景はけっこうキモイ。

「敵がいすぎて気持ち悪い……虫の大群を見ちゃった気分」
「【スキル:ドール あげ糸】」

 2メートルはある敵たち。天高く舞い上がっては次々に落ちて消滅していく。
 
ニカナの王でなくなった男は、城へ俺たちを招き入れた。
 そしてワンズさんは――瘦せていた。
 
急に海賊がきてワンズさんは誘拐され、働かされていたそうだ。
 食事をロクにもらえずにみるみる痩せたらしい。
 まさか親切だとは思わないだろうな……。

「永遠の別れを告げにきました」
「自分で……ううん、これこそ聞くべきだよね! ママンはどうしたい!?」
「彼とホンイツ様だけにしましょう――カドマツ様、くわしいことをお教えください」

 俺はラミィさんに詳しいことを話し始めた。
レイニーが分身であり、ハクアを倒しにいくには帰りで記憶を失う。
 でもその記憶を失うという力はスキルをすべて奪い取ったあとに発動するので俺なら耐えきれるだろうということを。

「――あ」

 部屋から出てきたレイニーの目は赤くなっていた。
 ホンイツは俺の胸倉を掴んできた。涙を浮かべた顔なんか初めて見た。
 頑丈な服だから破けずに済みはしたが、ホンイツの真意は伝わった。

「次に会ったら可愛がれよ?」
「……そうだね」
「じゃあ、行ってくる」
「いってきます」

 手を振るホンイツに見送られつつ、二人でハクアがいる『忘れ谷』の入り口へ。
【スキルカード:テレポーター】で瞬間移動した。
 どうやらハクアの傍へ直通もできはするらしいが俺が危険なのでパス。
 谷が見える景色はまだ草ぐらいしか見えなくて平和その物だ。

「ドキドキしてきた」
「……そうですね」
「持ってきた弁当、いつ食べようかな」
「ここにきてピクニック気分でいるカドマツ様を尊敬します」
「いざって時に腹へってたら困るじゃん!!」
「それもそうですね」
「レジャーシートどこに敷く?」
「……楽しそうですね」

 最後の冒険を俺は悲しい仕方ない感じで終わらせたくなかった。
 正直ラスボスすら俺はもうね、知らんわって感じ。
 ハクアは影分身と同じ顔してるだろうし見たいとも思わん。

俺のレイニーなら大丈夫。
 軽く食事をとってから、出発した。
 少し降りたら透明な板、ガラスのような何かが水面みたいに張られている。
 けれど通り抜けは簡単にできるし、まるで映像を通り抜けただけのようだ。

「おっ……?」
「これが問題の『バリア』です」
「下から上に行こうとすればスキルを失って――最後には記憶を失うっていうバリアか」
「何度も確認しますね」
「もしかしたら俺がアホで、何か勘違いしてるだけ……って期待してるのかもな」

 ガラスのように見えたその層をくぐり抜けたが、特に身体に異常はない。
 このバリアはでは発動しないようだ。

「谷っていうけど、広いな」
「そうですね」

 長い亀裂ではあるのだがもバカみたいに広い。
 谷というよりは超広いアリジゴクとかそういうイメージだ。
 あたり一面に草が生えているしまだ景色は穏やかで美しい。

「2枚目、通りますよ」
「……そうだな」
「水で抱えます」

 レイニーの水で持たれた、ねぇ何で仕留めたエモノみたいに持つの?

「不服そうですね」
「お姫様抱っことまでは言わないからさ……もっとこう、人を運ぶ時の持ちかたで――」
「この世界ではこう運ぶので」
「そうなの?」
「ニカナではこういう運ばれ方の人をたまに見ましたので」
「それ死刑囚かなんかじゃないか……?」

 ともかく持ちかたは変えてもらった。
 球体の水に俺が浮いてゆっくり下へ降ろす形式へ。
 服がびしょ濡れになっているが、悪くない。
 本当に多いなと思いつつも100枚目のバリアを通り抜けた。

「おっ?」
「……カドマツ様はここで待機です」
「俺は絶対にここを動かん、だから俺が餓死する前に片づけて帰ってこい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?

ばふぉりん
ファンタジー
 中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!  「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」  「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」  これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。  <前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです> 注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。 (読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪
ファンタジー
   日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。    そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。  しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。  高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。    確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。  だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。  まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。  ――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。  先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。    そして女性は信じられないことを口にする。  ここはあなたの居た世界ではない、と――  かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。  そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。

処理中です...