異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価

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148話 異世界に転生した私

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 夏の暑い日、水道をひねっても水はもう出ない。
 2人目の母様は2年前からいないし、父様は3日前から帰ってこなかった。
 暗い闇のなかで女神さまが私に欲しい物を問いかけた。

「―――水が、欲しいです」

 眩しい光につつまれ気が付いたら知らないオジサンに手を握られていた。
 自己紹介しろというので名前を名乗る。
 え、女神さまは? 場所も今いるのはどこなのだろうか?

「俺はカドマツ、今日からきみの父親だ」
「へ?」
「あ、おなかとか空いてないか?」
「喉が――」

 乾いてない?さっきまですごく喉が渇いていたハズなのに。

「あーそっか、それで【水】かぁ」
「え?」
「水筒あって良かった、ほら喉かわいたならこれやるよ」
「はい……」

 また新しいがやってきたのか。
 今度はお金がある人だといいな。
 せめて水道代ぐらいは払える人で。

「それじゃあ国に戻るか」
「外国人さん?」
「ああ異世界に転生したことも分かってないのか」
「異世界?」
「【スキルカード:フレンド ティラノ】終わったよ、そっちはどう?」
「四天王は片付いたわ」
「迎え、頼むよ」

 水はもらえた、けど。

「……おなかすいた」
「【スキル:かき氷】」

 突然の吹雪のなか、女性が私を抱きしめてきた。
カミノという王国に連れてこられた。
 本当に一瞬、瞬きすらしてない。

「アタシは後始末があるから、行くわ」
「こっちは任せてくれ」

 カドマツさん、いやお父様は色々と説明してくれた。
 日本ではなくてスキルという魔法だらけの不思議な世界。
 ペンギンは喋るし二足歩行の犬も喋った。

「こ、こわくないぞー? 俺はおすわりできる賢いワンちゃんだ」

 お座りってこんな風に体育座りなのか。
 何か違うような気はしたものの敵というわけではなさそうだ。
 少なくとも前の父さまよりはいい人(?)そう。

「あれお前のペット」
「ぺ、ぺっと!?」
「お手してみろ」
「お、お手」

 してくれた。

「な? 怖くないだろ!? 俺はウルフ、お前のペット」
「本当なんだ……大きい」
「今日からお前は王子様だからペットも大きいんだよ」
「え!?」

 お父様の言葉は本当で豪華なお城に案内された。
 部屋は暗かったけれど私が光にあたれない病気を患ったから仕方ないのだそうだ。
 たくさんのパンとミルクが運ばれてきた。

「好きなだけ食べて良いぞ」
「いただきますッ!!」

 夢みたいなたくさんのパンなんて久しぶりに食べられた。
 どれも美味しくて、牛乳だって久々だった。
 お父様はそれから毎日たくさんのご飯に水、それから――

 これは服屋にお父様と出かけた話。

「ここの服ぜんぶで」
「そんなに……いいのでしょうか?」
「だって何着せても可愛いし」

 新しいお父様はとても甘やかしてくれた。
 それに、何より嬉しかったのが褒めてくれたことだった。
 ずっと生きているだけで邪魔だと言われるのが普通だと思っていた。今のお父様は一度もそんなことは言わなかったのだ。

 会議中のお父様にクッキーを持っていったら――

「お父様――メイドたちとクッキーを焼いたので食べませんか?」
「俺のために!? 会議は中止だ!!」
「クッキーは会議の後でも構いませんよ?」
「リュウのために作られた国だからいいんだよ」

 お父様は作ったクッキーを美味しそうに食べてくれた。
 頭を撫でられてそれがとても嬉しい、どんなことでも嬉しいのに。
 頬にキスしてくれようとして、やめられてしまったので少しショックだった。

「レイニー……おやすみ」

 お父様は時々私をレイニーと言い間違える。
 レイニーについて聞いた。
 少し考えてからお父様は答えた。

「……お前、かなぁ」

という解答で私には納得できなかった。
 だから様々な人物たちにレイニーについて聞くことにした。
 でも、どこにいるかは全員答えがバラバラ。
 時々お城にくるお父様の愛人(?)のティラノさんに聞いた時は――

「彼ならもう亡くなっているわ」
「え」
「墓に連れて行くことならできるわよ」

 お墓にはレイニーという人のお化けが出た。
 私に『あなたが探しているのは私ではないです』と教えてくれた。
 そして部屋にある宝箱についても聞いた、レイニーさんからの贈り物らしい。

「あった!!」

 カミノ城でお父様がくれた私専用の部屋、その奥に秘密の部屋があり宝箱にかくされたカードを見つけた。

「【スキルカード:タイム】……えーと、過去に戻れる!?」

 でも直接はレイニーさんに会えないらしく手紙を書いて送ることに。
 結果としては不審者だと思われてウルフに捕まったけどなんとか手紙は送れた。
 約束の場所は城の一番上、ただ景色がいいだけの場所。

「―――レイニーさん約束の時間なのに」
「きてるよ」
「え?」

 お父様は泣きながら私を抱きしめた。
 私を育てることはレイニーとの約束であること、そして私が記憶を失ったレイニー本人であることをお父様は語ってくれた。
 二人で経験した冒険をベッドで話し始めた。

「レイニーと出会って数分で俺は全裸になった」
「……え?」
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