149 / 152
148話 異世界に転生した私
しおりを挟む夏の暑い日、水道をひねっても水はもう出ない。
2人目の母様は2年前からいないし、父様は3日前から帰ってこなかった。
暗い闇のなかで女神さまが私に欲しい物を問いかけた。
「―――水が、欲しいです」
眩しい光につつまれ気が付いたら知らないオジサンに手を握られていた。
自己紹介しろというので名前を名乗る。
え、女神さまは? 場所も今いるのはどこなのだろうか?
「俺はカドマツ、今日からきみの父親だ」
「へ?」
「あ、おなかとか空いてないか?」
「喉が――」
乾いてない?さっきまですごく喉が渇いていたハズなのに。
「あーそっか、それで【水】かぁ」
「え?」
「水筒あって良かった、ほら喉かわいたならこれやるよ」
「はい……」
また新しいお父様がやってきたのか。
今度はお金がある人だといいな。
せめて水道代ぐらいは払える人で。
「それじゃあ国に戻るか」
「外国人さん?」
「ああ異世界に転生したことも分かってないのか」
「異世界?」
「【スキルカード:フレンド ティラノ】終わったよ、そっちはどう?」
「四天王は片付いたわ」
「迎え、頼むよ」
水はもらえた、けど。
「……おなかすいた」
「【スキル:かき氷】」
突然の吹雪のなか、女性が私を抱きしめてきた。
カミノという王国に連れてこられた。
本当に一瞬、瞬きすらしてない。
「アタシは後始末があるから、行くわ」
「こっちは任せてくれ」
カドマツさん、いやお父様は色々と説明してくれた。
日本ではなくてスキルという魔法だらけの不思議な世界。
ペンギンは喋るし二足歩行の犬も喋った。
「こ、こわくないぞー? 俺はおすわりできる賢いワンちゃんだ」
お座りってこんな風に体育座りなのか。
何か違うような気はしたものの敵というわけではなさそうだ。
少なくとも前の父さまよりはいい人(?)そう。
「あれお前のペット」
「ぺ、ぺっと!?」
「お手してみろ」
「お、お手」
してくれた。
「な? 怖くないだろ!? 俺はウルフ、お前のペット」
「本当なんだ……大きい」
「今日からお前は王子様だからペットも大きいんだよ」
「え!?」
お父様の言葉は本当で豪華なお城に案内された。
部屋は暗かったけれど私が光にあたれない病気を患ったから仕方ないのだそうだ。
たくさんのパンとミルクが運ばれてきた。
「好きなだけ食べて良いぞ」
「いただきますッ!!」
夢みたいなたくさんのご馳走パンなんて久しぶりに食べられた。
どれも美味しくて、牛乳だって久々だった。
お父様はそれから毎日たくさんのご飯に水、それから――
これは服屋にお父様と出かけた話。
「ここの服ぜんぶで」
「そんなに……いいのでしょうか?」
「だって何着せても可愛いし」
新しいお父様はとても甘やかしてくれた。
それに、何より嬉しかったのが褒めてくれたことだった。
ずっと生きているだけで邪魔だと言われるのが普通だと思っていた。今のお父様は一度もそんなことは言わなかったのだ。
会議中のお父様にクッキーを持っていったら――
「お父様――メイドたちとクッキーを焼いたので食べませんか?」
「俺のために!? 会議は中止だ!!」
「クッキーは会議の後でも構いませんよ?」
「リュウのために作られた国だからいいんだよ」
お父様は作ったクッキーを美味しそうに食べてくれた。
頭を撫でられてそれがとても嬉しい、どんなことでも嬉しいのに。
頬にキスしてくれようとして、やめられてしまったので少しショックだった。
「レイニー……おやすみ」
お父様は時々私をレイニーと言い間違える。
レイニーについて聞いた。
少し考えてからお父様は答えた。
「……お前、かなぁ」
という解答で私には納得できなかった。
だから様々な人物たちにレイニーについて聞くことにした。
でも、どこにいるかは全員答えがバラバラ。
時々お城にくるお父様の愛人(?)のティラノさんに聞いた時は――
「彼ならもう亡くなっているわ」
「え」
「墓に連れて行くことならできるわよ」
お墓にはレイニーという人のお化けが出た。
私に『あなたが探しているのは私ではないです』と教えてくれた。
そして部屋にある宝箱についても聞いた、レイニーさんからの贈り物らしい。
「あった!!」
カミノ城でお父様がくれた私専用の部屋、その奥に秘密の部屋があり宝箱にかくされたカードを見つけた。
「【スキルカード:タイム】……えーと、過去に戻れる!?」
でも直接はレイニーさんに会えないらしく手紙を書いて送ることに。
結果としては不審者だと思われてウルフに捕まったけどなんとか手紙は送れた。
約束の場所は城の一番上、ただ景色がいいだけの場所。
「―――レイニーさん約束の時間なのに」
「きてるよ」
「え?」
お父様は泣きながら私を抱きしめた。
私を育てることはレイニーとの約束であること、そして私が記憶を失ったレイニー本人であることをお父様は語ってくれた。
二人で経験した冒険をベッドで話し始めた。
「レイニーと出会って数分で俺は全裸になった」
「……え?」
1
あなたにおすすめの小説
クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?
ばふぉりん
ファンタジー
中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!
「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」
「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」
これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。
<前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです>
注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。
(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜
あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。
その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!?
チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる