この学園には図書委員がいない!

空飛ぶ桂川

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「ここが・・・こうなるから・・・こう・・・?」
「そうそう!合ってる!じゃあ次もその勢いで覚えてこう!」
「うん・・・頑張る・・・。」

「んー・・・これで・・・合ってる?」
「間違ってるぞ。やり直し。」
「えー・・・っと・・・」

図書室でのやりとりから数日後。
俺と桜山の頑張りによって数学・理科・社会・英語の4教科はなんとか平均点がとれるくらいにはなった。
ただ、問題は国語だ・・・。

「じゃあ、この時の作者の気持ちを答えなさいって問題ね!」
「・・・私だったら・・・ここで・・・。」
「いや、楓ちゃん・・・私だったらは考えなくていいから・・・。」
「うー・・・。」
お前が作者ならその作品は多分売れてないぞ。

「難しい・・・。あ、今・・・新しい小説の・・・案が・・・。」
「楓ちゃん・・・?」
「・・・申し訳・・・ない・・・。」
いや、桜山よ・・・笑顔がこえーよ・・・。
とりあえず、この小説書きたくなっちゃう病気をなんとかしないといけないなー・・・でもこれは簡単に治るもんでも無さそうだしなー・・・。

それにしても桜山って鶴里といる時はこんな表情するんだな・・・そりゃそうだろうけど、俺といる時とはまるで違う顔だもんな・・・こいつも悪口言わなけりゃ、やっぱり可愛い・・・いや、何を考えてるんだ俺は!!
こいつはメガネもかけてくれない偽図書委員だというのに!!
危ない・・・突然のことに自分を見失いそうだった・・・。

いや・・・というか今は鶴里の問題を解決せねば!!
治せないなら他の方法をとらなければ・・・ようは小説が好きすぎるあまりこうなってしまうんだから・・・あ!これなら・・・

「鶴里!作者の気持ちを考えるんじゃなくて自分がその作品の登場人物ならどう動くかを考えればいいんじゃないか?」 
「・・・え?」
「なにそれ?どういうこと?」
「最初に作者の気持ちになろうとするから『自分が作者ならどうしたいか』を考えちゃうんだよ。だから『その登場人物ならどう動くかを考えて、その行動をするために作者はどういう気持ちになればいいか』を考えれば少し違う見え方になるんじゃないかな・・・と思って。」
「なるほど・・・じゃあ・・・それで・・・やってみる・・・。」
「・・・・・すごい・・・合ってる・・・。あんた・・・よくそんなこと思いついたわね・・・。」
「普段から小説好きで沢山読んでるんだからその小説のパターンみたいなのも実はわかってるんじゃないかな・・・と思ってさ。」


時間は経ち、再試験の日。
俺たちはいつも通り図書室にいた。
「楓ちゃん、大丈夫かな・・・。」
「やれるだけのことはやったんだし、鶴里も全教科平均点はとれるようになったんだから大丈夫だろ?」

「・・・っていうかさ・・・なんであんたは協力してくれたの?・・・別にあんたは教えても得しないでしょ?」
「損得なんて考えてねーよ。鶴里とだってもう完全な赤の他人ってわけじゃないんだし・・・それに・・・」
「それに・・・なによ・・・?」
「・・・もし、あいつが留年なんてしたらお前、落ち込むだろ?中学からの友達なわけだし・・・お前が落ち込んでたら・・・なんつーか・・・張りあい・・・なくなるしな。」
「・・・なにそれ・・・別に頼んで・・・ないし。」
「頼まれてなくてもお節介すんのが友達だろ?」
「・・・そっか・・・・・あ、ありがとう・・・。」

桜山は口元をカバンで隠しながら小さくお礼を言った。
まったく・・・素直じゃねーな・・・。
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