この学園には図書委員がいない!

空飛ぶ桂川

文字の大きさ
16 / 65

glass:16

しおりを挟む
日本には晴耕雨読という言葉がある。
晴れの日は外で活動し、雨の日は室内で読書をしろ・・・みたいな意味の言葉だ。

梅雨の時期も終わりに近づいているというのに、ここ数日間は雨が続いている。
今日は図書委員の担当で放課後に桜山と図書室にいるわけだが、人がほとんど来ない。
雨の日は室内で読書しろ・・・なんてものはもはや古い言葉なのかもしれない。

ほとんど来ない・・・という言葉を使ったのは今現在、1人だけ図書室にいる俺たち以外の人間がいるからだ。
とはいっても晴れてる日でも読書をしているような文芸部の女子生徒が1人いるだけである。

「・・・なあ、鶴里。お前、そういえば追試の結果は大丈夫だったのか?」
「・・・あ、あの・・・おかげ様で・・・。」
「そうか。なら良かったよ。」
「わ、私は楓ちゃんなら大丈夫だと思ってたけど。」
嘘つけ。心配してたじゃねーかよ。

「・・・お、お二人には・・・お世話に・・・なったので・・・お礼といっては・・・なんですが・・・こ、これ・・・。」
そう言って鶴里は一冊のノートを俺に渡した。
表紙には『お礼の小説』と書いてある。
お礼に自分の書いた小説を渡すとかいかにも鶴里らしい。
俺と桜山は隣同士に座り、小説に目を通す。

・・・・・・・・・・。
内容は俺と桜山をモチーフにしたであろうキャラクターの恋愛小説だった。

「・・・いや、なんだこれは!!どういうお礼の気持ちでこうなるんだよ!!」
「か、楓ちゃん!お礼の気持ちは嬉しいけど、なんでこんなの書いちゃったの!?」
「・・・あ・・・いや・・・2人・・・すごい仲がいいので・・・両想いだと・・・思って・・・。」
「そんなわけねーだろ!俺は初めて付き合う女の子はメガネの美少女って決めてんだよ!」
「そ、そうよ!だ、誰がこんな奴と!・・・確かに悪い奴では・・・無いけど・・・。」
「ん?最後なんて言った?」
「な、なんも言ってないわよ!!」
「じゃあ、なんでそんな動揺してんだよ。どうせ悪口だろ?」
「べ、別に悪口なんて言ってないわよ!失礼ね!」
みたいなやりとりをしていると鶴里がクスクスと笑いだす。

「ちょっと!楓ちゃんも何笑ってんの!?楓ちゃんが変な小説書くからこんな感じになっちゃったのよ!」
「・・・い、いや・・・2人は・・・本当に・・・仲良しだなと・・・思って・・・。」
「いや、まあ確かに仲が悪いってわけでは無いけど、鶴里・・・さすがにこの小説は勘違いが過ぎるぞ?」
「そ、そうよ!変な勘違いしちゃダメだよ!・・・も、もう!」
そう言うと桜山はため息をつき椅子に座り本を読みはじめる。

鶴里には俺と桜山がそういう関係に見えるんだな・・・。
まあ確かに可愛いし、口は悪いが本当は友達思いの良い奴だし、多分こいつと仲良くなって色々な部分を知れば惹かれる男も沢山いるんだろうな・・・でも俺はこいつに恋愛感情は芽生えないだろうし、こいつも俺に対してそういう感情にはならないだろうな・・・。

なんてことを思いながら本を読んでいる桜山を見る。
桜山は視線に気づいたのか本から目を離し俺を見る。
そして、俺と桜山の目が合う。
・・・っ!?
・・・思わず目を背けてしまった。なんでこいつなんかにこんなにドキドキしなきゃいけないんだよ。

これはもう完全に鶴里の小説のせいだ・・・。
今日はあいつを呪ってやろう・・・。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...