この学園には図書委員がいない!

空飛ぶ桂川

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「じゃあ、コーちゃんは休憩で!」
神沢がそう俺に告げる。
「わかった。じゃあ、どこで着替えれば良い?」
「ん?そのまま行かないの?」
「逆にお化けの格好で校内うろつくと思ったのかよ!着替えさせろよ!」
「だってコーちゃん、制服よりそっちの方が似合ってるよ?」
「学生が学生服よりこっちの方が似合ってたまるか!」

簡易的に用意された更衣室で制服に着替え、廊下を歩きはじめる。
「コーちゃん!向こうにメイド喫茶あるよ!」
「そんなもん1人で行けよ・・・そもそもあのメイド達はメガネをかけてないから興味ねーよ。」
「車道君!あそこでクレープ買えるっすよ!」
「なんで柴田もついてきてんだよ!」
「何言ってるんっすか!車道君がいるところに柴田がいないわけないじゃないっすか!」
「でも柴田さんってコーちゃんと休憩時間被ってなかったような・・・」

「わー!!連れ戻すなーっす!!車道君助けてーっす!!」
柴田はクラスの女子に連行されていった。
俺と神沢は講堂に入って席に座る。
「あれ?車道君と神沢君?」
隣を見ると森下が座っていた。
「森下も来てたのか。」
「あたりまえじゃない!友達の晴れ舞台よ!準備もバッチリよ!」
森下が明らかに高そうな一眼レフを構えてドヤ顔をする。
森下・・・多分、公演中は撮影禁止だと思うぞ?

しばらくするとブザーが鳴り、幕があがる。
シンデレラの劇がナレーションと共にはじまっていく。
舞台ではボロボロの服に身を包んだ桜山がナレーションに合わせて動く。

「・・・私も・・・舞踏会に行きたかったな・・・。」
という桜山の台詞をきっかけに舞台の端から魔法使いの格好をした鶴里が出てくる。
鶴里もいい役もらってるなー・・・。

「あの・・・私が・・・魔法で・・・あなたを・・・舞踏会に・・・連れていって・・・あげましょう・・・。」
・・・いや、声ちっさ!これ、1番後ろの席の人とか聞こえてないんじゃないか!?
隣で「可愛い」という言葉を繰り返しブツブツ唱えている森下の方がよほど声聞こえるぞ!?・・・大丈夫かよ・・・。
「ビビデ・・・バビデ・・・ブー・・・」
という鶴里の呪文をきっかけに照明が落ち、ナレーションが入って、スポットライトが桜山にあたる。

スポットライトに照らされた桜山は真っ白な美しいドレスをまとって少し物憂げな表情で台詞を口にしはじめる。
演技が上手いわけではない。
それでもその桜山の演技に何故だか俺は視線を全く外せず、見惚れてしまった。

・・・この感情はなんだろう。
この・・・今まで感じたことの無い気持ち。


ふと、過去の記憶がよぎる・・・。


・・・ああ・・・そうか・・・。
俺・・・あいつと・・・桜山といるときが・・・1番楽しそうにしてるんだな・・・。
・・・そうか・・・だから森下の告白も断ったのか・・・。

・・・俺は・・・桜山 咲音が・・・好きなのか・・・。
そんなことに今更気づいた俺は・・・そのシンデレラの姿を目に焼き付けていた。
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