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第2章
第31話 『俺のスキル』
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「ば、バカな。エルフが魔族領に侵入し連れ去ったのだ。そして攫われたのは……魔族の王女カルラ様だ」
ゲイルの強く握りしめられた拳は、怒りでプルプル震えていた。
やはり個体の問題じゃないな。種族的に完全にアウトだ。
「我々は人族に何の恨みもないが、このままだと王女を救うため人族と戦うことになる。エルフの企みだと知っていてもだ」
「なぜアーサーを見張っていたんだ?」
「『剣聖』は人族最強の男だ。王から信頼されているあの男は、今回の件を必ず知っている。だが、直接会うことはできないのだ。『剣聖』が魔族に敵意を持っていた場合、我々と全面戦争になる恐れがあるからな」
ゲイルは俺達を見る。
「だから『剣聖』の屋敷に出入りする人族を狙った。何か知っている可能性にかけたのだ」
「なるほど。けれど、アーサーに協力をお願いしても無理だな。メルキド王はエルフに逆らえない」
「そうか……やはり、力ずくで王女を救出するしかないか」
ゲイルが意思を固めたようにつぶやいた。
ミアが何か言いたそうな表情で俺を見る。
安心してくれ。俺達の行動も決まっている。
「俺達も手伝うよ。エルフに恨みがあるからな」
「ありがとう。だが、今回の救出作戦にタクミ達を組み込むことはできない。メンバー全員の信用を得るには時間が足りないからな。これは俺の勝手なお願いなのだが。もし、俺達の救出作戦が失敗したとき……、い、いやなんでもない。忘れてくれ」
確かに、知り合ったばかりの奴に、大切な作戦を教えるとかないな。
俺はゲイルから離れ、ミアを手招く。
ミアはとてとてと近寄ってきた。
「ミア、ここには俺達2人だけしか居ないから話す。魔族の王女救出作戦が失敗しそうになったら、魔族を助けるぞ。この話は誰にも言わないように」
「ふふふっ。わかりました。ピンチのときは勝手に助けましょう!」
ゲイルはゆっくりと身体を反転させ、俺達に背を向けた。
「……すまない。本当にありがとう。これは俺の独り言だ」
俺とミアは笑った。
◇
あの後、ゲイルは仲間と会うと言ってすぐに別れた。
俺達は今日泊まる宿屋を探すことにした。
ゲイルに案内された酒場から近いところに、いつもより少し高級な宿屋を見つける。
俺達は、奮発してその宿屋に決めた。
王都には今日と明日の二日間しかいないからな。
――そして今、食事を終えたところだ。
「この後、ちょっと相談にのって欲しい」
「相談ですか? わたしなんかで良ければ、どんどん相談してください!」
ミアは嬉しそうだった。
「実は、俺のスキルについて一緒に考えてほしいんだ」
俺は前から疑問だった。
『心の壁』バリア同士がぶつかるとバリアが消える現象『中和』。
ミアの『デフォルメ』スキルを何度試しても、『中和』を外した『心の壁』は作れなかった。
つまりミアの『デフォルメ』スキルでも、『できること』『できないこと』があるのだ。
俺の『改ざん』スキルも同じで、『できること』『できないこと』がきっとある。
ミアに声をかけたのは、スキルの説明には記載されていない『できること』『できないこと』のルール。
この『スキルの隠しルール』を調べるのが目的だ。
それには、ただ1つ注意することがあった。
ミアに余計な先入観を与えてしまうと、ミアの『デフォルメ』スキルに制限を設ける恐れがある。
例えば、象のぬいぐるみに『デフォルメ』スキルを使って、鼻から水を出せるようにする。
俺の予想だと、鼻から出せる水の量は無制限だ。
けれど『デフォルメ』スキルを使う前に、俺が『象の鼻にためられる水の量は10リットルぐらいで、無制限に水は出せないからね』と教えた場合は、鼻から出せる水の量に制限がつくだろう。
俺は、それが怖い。
ククトさんとマルルさんを蘇生したい俺達にとって、それは詰むことになりかねない。
けれど、ククトさんとマルルさんの蘇生に必要なアイテムを探す上でも、『スキルの隠しルール』を見つけたい。
そこで考えたのが、『俺のスキル』について話し合う方法だ。
『俺のスキル』の話だから、ミアのスキルとはまったく関係ないよという理論だ。
大切なのは、ミアがこれから行う実験結果を他人事と思えるかどうか。
これから行う『スキル』の実験結果がどうなろうとも、ミアの『デフォルメ』スキルに結びつけないよう誘導するんだ。
――俺の部屋に移動する。
奮発しただけあって、部屋は広かった。
いつも泊まる格安の宿は、部屋にベッド1つあるだけ。
この部屋には、ベッド以外にも4人がけのテーブルセットが備えられている。
俺達は椅子に座る。
「俺のスキルを今から書き出す。自分でも気づかないことがあるから、思ったまま意見を聞かせてほしい」
俺は自分のスキルを紙に書き出した。
------
スキル
『分析』:対象に触れて情報を取得する。取得した情報は表示できる。対象に触れている時間が長いほど詳しい情報を取得できる。
『改ざん』:触れた対象に書かれてある文字を1文字だけ変更できる。
『なりすまし』:ステータスの表示内容を偽りの情報に変更できる。
------
ミアは少し考えた後、頷き顔を上げた。
目がキラキラしている。
あの表情は何か思い付いたに違いない。
「『改ざん』スキルって凄すぎです。漢字1文字の名前……例えばですけど、石を猫にできるんでしょうか?」
まさか無生物から生物に変えるなんて発想が斬新すぎる。
いきなりぶっこんで来たな。
「さすがに俺のスキルでは無理じゃないかな」
これできると神になれそうだけど……
ゲイルの強く握りしめられた拳は、怒りでプルプル震えていた。
やはり個体の問題じゃないな。種族的に完全にアウトだ。
「我々は人族に何の恨みもないが、このままだと王女を救うため人族と戦うことになる。エルフの企みだと知っていてもだ」
「なぜアーサーを見張っていたんだ?」
「『剣聖』は人族最強の男だ。王から信頼されているあの男は、今回の件を必ず知っている。だが、直接会うことはできないのだ。『剣聖』が魔族に敵意を持っていた場合、我々と全面戦争になる恐れがあるからな」
ゲイルは俺達を見る。
「だから『剣聖』の屋敷に出入りする人族を狙った。何か知っている可能性にかけたのだ」
「なるほど。けれど、アーサーに協力をお願いしても無理だな。メルキド王はエルフに逆らえない」
「そうか……やはり、力ずくで王女を救出するしかないか」
ゲイルが意思を固めたようにつぶやいた。
ミアが何か言いたそうな表情で俺を見る。
安心してくれ。俺達の行動も決まっている。
「俺達も手伝うよ。エルフに恨みがあるからな」
「ありがとう。だが、今回の救出作戦にタクミ達を組み込むことはできない。メンバー全員の信用を得るには時間が足りないからな。これは俺の勝手なお願いなのだが。もし、俺達の救出作戦が失敗したとき……、い、いやなんでもない。忘れてくれ」
確かに、知り合ったばかりの奴に、大切な作戦を教えるとかないな。
俺はゲイルから離れ、ミアを手招く。
ミアはとてとてと近寄ってきた。
「ミア、ここには俺達2人だけしか居ないから話す。魔族の王女救出作戦が失敗しそうになったら、魔族を助けるぞ。この話は誰にも言わないように」
「ふふふっ。わかりました。ピンチのときは勝手に助けましょう!」
ゲイルはゆっくりと身体を反転させ、俺達に背を向けた。
「……すまない。本当にありがとう。これは俺の独り言だ」
俺とミアは笑った。
◇
あの後、ゲイルは仲間と会うと言ってすぐに別れた。
俺達は今日泊まる宿屋を探すことにした。
ゲイルに案内された酒場から近いところに、いつもより少し高級な宿屋を見つける。
俺達は、奮発してその宿屋に決めた。
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――そして今、食事を終えたところだ。
「この後、ちょっと相談にのって欲しい」
「相談ですか? わたしなんかで良ければ、どんどん相談してください!」
ミアは嬉しそうだった。
「実は、俺のスキルについて一緒に考えてほしいんだ」
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ミアの『デフォルメ』スキルを何度試しても、『中和』を外した『心の壁』は作れなかった。
つまりミアの『デフォルメ』スキルでも、『できること』『できないこと』があるのだ。
俺の『改ざん』スキルも同じで、『できること』『できないこと』がきっとある。
ミアに声をかけたのは、スキルの説明には記載されていない『できること』『できないこと』のルール。
この『スキルの隠しルール』を調べるのが目的だ。
それには、ただ1つ注意することがあった。
ミアに余計な先入観を与えてしまうと、ミアの『デフォルメ』スキルに制限を設ける恐れがある。
例えば、象のぬいぐるみに『デフォルメ』スキルを使って、鼻から水を出せるようにする。
俺の予想だと、鼻から出せる水の量は無制限だ。
けれど『デフォルメ』スキルを使う前に、俺が『象の鼻にためられる水の量は10リットルぐらいで、無制限に水は出せないからね』と教えた場合は、鼻から出せる水の量に制限がつくだろう。
俺は、それが怖い。
ククトさんとマルルさんを蘇生したい俺達にとって、それは詰むことになりかねない。
けれど、ククトさんとマルルさんの蘇生に必要なアイテムを探す上でも、『スキルの隠しルール』を見つけたい。
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大切なのは、ミアがこれから行う実験結果を他人事と思えるかどうか。
これから行う『スキル』の実験結果がどうなろうとも、ミアの『デフォルメ』スキルに結びつけないよう誘導するんだ。
――俺の部屋に移動する。
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------
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------
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