『スキルの素』を3つ選べって言うけど、早いもの勝ちで余りモノしか残っていませんでした。※チートスキルを生み出してバカにした奴らを見返します

ヒゲ抜き地蔵

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第3章

第57話 違和感

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「うそだろ。魔王様が『魔刀断罪だんざい』を出したぞ……」
「やりすぎだろ。タクミって奴を殺す気か……」

 この戦いを見守る魔族は、魔王の行動に違和感を覚える。
 
「ちょ、ちょっとお父様、何する気ですか! 止めてください!」

 カルラが慌てて魔王に近寄ろうとする。
 それを尻目に魔王は刀を振り上げた。
 まわりの誰しもが、息を呑む。

 バカ正直に正面からくるとは限らない。
 俺は全方位にバリアを張れるよう警戒する。
 しかし、予想に反して魔王はゆっくりと俺に向かって歩いてくる。
 
「用意はいいか? まずは小手調べだ」

 禍々しい炎を纏った漆黒の刀を、魔王はゆっくりと振り抜いた。
 俺の側面で八角形のバリアが刀を弾く。
 その後も2回、3回と続けて斬りつけてくる。
 剣技の速度は上がり、斬りつけられる回数が増えていく。

 マジか、あのバカ魔王……やばい、SP足りなくなるぞ。
 もう、この段階での反撃は無理だった。
 一瞬でもバリアに隙ができればやられる。

「おい……タクミって奴、全部防いでるぞ」
「そんなことが可能なのか。魔王様の連撃だぞ」
「た、たしかに英雄って言われるだけのことはある」
 
 魔王は突然攻撃の手を止め、観覧席の方に目線を送る。
 その隙に俺は魔王と距離をとる。

 ……や、やっと終わったか。
 実際の時間はわからないが、俺には果てしなく長い時間に感じた。
 急いでステータス画面のSP残量を確認する。
 マズい。あと14しか残ってないぞ。

 魔王はさっきまで、観覧席の何かに注意が向いていたが、どうやらそれも終わったらしい。
 後ずさる俺に、魔王は刀の先端を向ける。

「さてと、これが最後の攻撃だ。しっかり防げよ。今までの硬さだと死ぬからな……」

 魔王の刀に纏う炎が激しさを増し、波打ちながら刀の先端に集まる。
 炎の塊は次第に大きくなり、生き物のようにうねり出した。
 ブッブブブ…… ブブッ……
 なんだあの音。
 恐怖からかスズメバチの羽音を連想してしまう。
 ゾワゾワと全身に鳥肌が立ち、俺の本能が全力で逃げたがっている。
 
 そして、轟音とともに俺に向かって放たれた。

「くそがぁぁぁぁ!」

 『心の壁』バリアを張り、俺は心の底から魔王を拒絶した。
 禍々しい炎の塊がバリアに直撃した瞬間、八角形のバリアが大きく歪む。
 俺が死の恐怖に比例してバリアの厚みも増すが、バリアが真っ赤に点滅を繰り返す。

 マズい。アーサーのときみたいに弾くか。
 けど、結界は解除されている。下手な方向に弾くと死人が出るぞ。
 
 それなら、答えは1つだ。
 俺は魔王めがけて炎の塊を弾き返す。
 シラカミダンジョンで練習したバリアのコントロールが活き、完璧に跳ね返すことに成功した。

 触れるモノ全てを灰にするような炎の塊が魔王を襲う。
 しかし、魔王は慌てることなく漆黒の刀を炎に突き刺した。
 すると炎は元にあった場所へもどるかのように刀身へと移動していく。
 膨れ上がった炎は徐々に刀身に吸い込まれ、元の大きさの炎となった。

 ……なんだあの武器。何もかも異様すぎる。
 魔王は刀を一振りすると、いつの間にか刀は手から消えていた。

「素晴らしい! 最高だったぞ、タクミ! おまえのとオレが認めよう」

 魔王が拍手すると、闘技場全体を揺るがすような盛大な拍手と歓声が鳴り響く。

 ——そんな空気を無視して、カルラが魔王の頬を殴り飛ばした。

「何やってるのよ。いくらお父様でも酷すぎるわ。タクミは私達の恩人よ!」

 殴られた頬を押さえながら、魔王は慌てて弁明する。

「ちょ、ちょっと待て。これにはちゃんと意味がある。とりあえず家に戻ってから説明するから。タクミもすまなかった。最後の攻撃、魔王のオレを殺しにくるなんて根性あるな。気に入ったぜ」

 悪びれもない笑顔でウインクしてくる。
 様になっているのが悔しい。

「よーし、みんな聞いてくれ! 今見たことが真実だ。タクミは強かった。根性もある。そして俺達の仲間を救ってくれた、気持ちの良い奴だ。オレたち魔族はタクミを迎え入れる。今からタクミに手を出す奴は、オレに手を出したと見なすからな!」

 オオーーーーッ!!
 コロッセオが揺れる。
 今日一番の歓声だった。
 
 ◇
 
 ——俺達はカルラの実家の応接室にいる。
 別の言い方をすれば、魔王の屋敷にきていた。

 ここに着くまでは大変だった。
 魔族が手を振りタクミと叫ぶ。人気のハリウッドスターが来日したときのようだった。
 確かに街中でバトルしようぜと言ってくる奴はいなくなったが、今の状況もとても不便だ。

 応接室の扉が開き、魔王が入ってきた。
 身だしなみもピシッと決まり、とにかくオーラが半端ない。
 魔王というより、マフィアのボスって言われた方がしっくりくるな。

「改めて、ようこそ魔族領へ。そして魔族のために力を貸してくれてありがとう。オレたちはタクミとミアを歓迎する」

 魔王が手を伸ばし握手を求められたが、俺の『心の壁』バリアが勝手に発動し握手することはできなかった。
 さすがの魔王も苦笑いをしていたが、身から出た錆だと思って反省してもらいたい。
 
「さあ、お父様そろそろ説明してください。どうしてタクミにのですか?」

「おい。それは誤解だ。では聞くが、『人族最強の剣聖が放った攻撃を全て防ぎ、ドワーフ族ですら神と崇める知識と技術を持つ、そして種族差別することなく仲間の為なら命も投げ出す』そんな奴がこの世にいると思うか?」

「「「「……」」」」
 
「正直言うとな。この報告を受けたとき、おまえ達はタクミに魅了や幻覚のスキルを使われ、洗脳された可能性が高いと思った。その方がまだ現実味のある話だ。オレは精神攻撃耐性のある装備を身につけ、報告が本当なのか試させてもらった」

 ん? そういえばアレはなんだったんだ。
 
「途中で観覧席の方を見ていたのは、なんだったんですか?」

「……気づいてたか。魅了や幻影にかけられていないか、オレと観覧席に忍ばせた複数人でお互いを監視していたのだ」

 なるほどな。
 俺が精神攻撃を仕掛けていると判断した場合、どうなっていたんだろう。
 ……怖すぎるだろ!
 
「それにしたって、街に来て早々にやることですか?」
 
 怒りが収まらないカルラ。
 
「精神攻撃を受けてからでは遅い。それにだ……もし悪意がなかったとしても、何が本当で何が嘘なのかを確かめる必要があった。そうしないと腹を割って話すことなんて無理だからな。違うか?」

「た、確かにそうですが、違うやり方もあったのでは?」

「おまえ達があのもよおしを開いたんだぞ。オレはその機会を利用しただけだ。ただ、ミノタウロスだと力不足でオレが出る羽目になったがな。真っ直ぐにここへ連れてくれば……話し合いで済んださ」

 魔王はニヤリと笑い、カルラとゲイルはうなだれる。

 けど、最後の『話し合いで済んださ』ってのは嘘だな。
 結局は戦いで証明することになっていただろう。
 
 いろいろ思うところはあるが、今ここで大事なのは『納得すること』ではない。『どう付き合っていくか』だ。
 あの2人を救うのが最優先だからな。
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