『スキルの素』を3つ選べって言うけど、早いもの勝ちで余りモノしか残っていませんでした。※チートスキルを生み出してバカにした奴らを見返します

ヒゲ抜き地蔵

文字の大きさ
58 / 76
第3章

第58話 エンツォとゴン

しおりを挟む
「ところで、どうだこの街は? ここが魔族で一番大きく栄えている街だ。タクミ達は人族、ドワーフ族、魔族の首都を見てきたんだろ」

 ここは中世よりも現代に近いヨーロッパって感じがする。
 スタイリッシュで統一感のある建物が並んでいるのだ。

 俺達がいるこの屋敷もそうだ。
 ここは魔王の別宅という訳ではなく、ここが住まいなのだ。
 つまり、この街には城がない。
 ゲームでお馴染み魔王城は存在しなかった。
 異世界人が魔王を討伐しに乗り込んできたら、さぞ驚くだろうな。

 あとは魔道具だ。
 例えばこの屋敷に石壁のようなものはなく、洒落たフェンスで囲われている。
 王の住まいとしてどうなのかと思ったが、フェンスは魔道具になっており常時結界が張られているそうだ。
 人族の城壁などよりも耐久性も高く、魔法も跳ね返すらしい。

 いろいろと見た目と性能が違いすぎて、慣れが必要だがそのギャップが面白い。
 そう説明すると、魔王とカルラ、ゲイルの満面に笑顔が広がった。

「カルラ、人族と魔族の戦争の話をしないと」

 ミアがカルラに小声で話す。

「そうだったわね。ミアありがとう。お父様、人族への報復は中止してもらえましたか?」

「みんなカルラのこと娘みたいに可愛がってたからな。興奮していて止められなかった」
 
「え? それじゃあ……」
「最後まで話を聞け。オレに隠れて報復行動されるよりは、管理下においた方が安全だ。だからアレッサンドロに指揮を任せ進軍させた。アイツは今でも時間を稼いでるはずだ。カルラは合流して、戦争をやめるようアイツらを説得しろ」

 なるほど。
 確かにその方がコントロールできるな。
 ただの戦闘狂かと思っていたが、さすがは王様ってところか。

「まあ、不幸にも戦争が始まったら、オレが止めにいくさ」

 いやいや、それはマズいだろ!
 魔王が参戦したら火に油だ。
 戦場に冒険者がいたら、ラスボス戦のイベントと勘違いされる。
 ……それもちょっと見てみたいけどな。

「そんなわけで、明日にでもアレッサンドロと合流するため出発してくれ。ゲイルも頼んだぞ」

「わかったわ」
「エンツォ様、お任せ下さい」

「俺からもドワーフ族の大使として話があります。いいですか?」

「ああ。オレにとってはドワーフ族の大使の話よりも、タクミ個人の話の方が興味あるがな」

「俺と今からドワーフ王に会ってもらえませんか?」

「……今からだと? どれだけ時間がかかると思ってるんだ。それは無理だ」

「それなら、俺に1時間ほど付き合ってもらえませんか?」

「面白い。いいだろう。特訓でもするのか?」

 俺は最後の台詞は無視して、ぬいぐるみのポケットから『移動式魔法陣』を取り出し仮置きした。
 俺はタタラさんとドワーフ王に念話して、話をつける。
 急なお願いだったが、二人とも快く了承してくれた。

 まずはミアがお手本として石版に乗り、ゴンヒルリムへと転送した。
 
「それでは、この石版の上に乗ってください」

 魔王はカルラが頷くのを確認し、石版の上に足を踏み入れ姿が消えた。

「ゲイル、ここで石版を見張っていて。お父様だけにすると危険だから、私もついて行くわ」

 そして、カルラと俺もゴンヒルリムへ向かった。

 ◇

 ——ゴンヒルリムの入出管理室。
 
「ここは、まさか……本当にゴンヒルリムなのか」

「そうよ。これはドワーフ族とタクミとミアが開発したものよ」

「し、信じられん。こんな技術が生まれていたとは」

 驚き呆けている魔王を連れて、入出管理棟の応接室に移動する。
 しばらく魔王から質問攻めにあったが、途中からは目を輝かせ移動式魔法陣の運用について案を巡らせているようだった。
 そして、応接室のドアが開き、ドワーフ王が入ってくる。

「エンツォ、えらく久しぶりだ。元気にしてたか?」

「ゴン。久しぶりだな。オレが知らない間に、何が起きてるんだ? えらく楽しそうじゃないか。オレにも一枚かませろ」

「ワッハハハハ。お主もタクミとミアに感化されたか? 閉鎖的な魔族がえらい積極的ではないか」

 なんだこの2人、かなり仲がいいぞ。
 このやり取りを見る限り、2人の仲は上辺だけの関係ではなさそうだ。

「なんか凄く仲がいいですね。エンツォさんとゴンさんでバチバチやり合うかと思ったんですが……」

「ミアもそう思った? ドワーフと戦闘狂って合わないと思ってたんだけど意外だ」

「あの2人は、古くからの付き合いらしいわ。私も詳しくは知らないけど」

 その後、俺が魔王と戦った件も話題にあがった。
 俺達の素性を確認するためと説明していたが、俺が死んだらどうするつもりだったんだ?

「エンツォさん、最後の攻撃を俺が防げなかったら、どうなっていたんですか?」
 
「そのまま死んでたさ……っていうのは冗談だ。『魔刀断罪だんざい』の炎は自由に動かせるのだ。バリアの耐久力を確かめたら炎は刀に戻すつもりだったぞ」

「おい、エンツォ! 『魔刀断罪』を使ったのか!」

「ああ、オレにはそれでしか確認できなかったからな。『剣聖』と同じ威力の攻撃など、我ら魔族には呪いがあるから無理だ。もし攻撃できたとしても、制御できなければ危険だからな。あと、ミノタウロスの件はと思うので、本人に聞いてくれ」

「それは……」
「魔物との力比べは、俺からカルラにお願いしたことです。カルラは魔族が納得し、俺が怪我しない最適な魔物を選んでくれた。最後のがなければ、特に問題はなかったです」

「た、タクミ……」

 カルラ、気にするな。
 俺がだけだ。

「問題はなかったみたいだな。それにしても魔族から信用を得られたのは大きいぞ! 大使に選んだワシの目に狂いはなかった。ワッハハハハ」

 魔王のヤツ、俺がカルラをかばうのを確信して、安全面の責任をカルラに振ったんだ。
 俺本人の口から、問題なかったと言わせるために……なかなか手強いな。

 その後、ドワーフ族と魔族の間で、技術と軍事同盟が結ばれることになった。
 
 ◇

 ——魔王の屋敷に戻ってきた。
 
「それにしても、この『携帯念話機』はすごい発明だ。本当にオレが1つもらっていいのか?」

「ええ、各種族の王には俺が人となりを確認してから渡すつもりでした」

「ということは、オレはおまえのお眼鏡にかなったわけか!?」

「いえ。正直渡すつもりはありませんでした。ただ、ドワーフ王から自分が保証人になるので渡して欲しいと頼まれたので」

「……まあ、今日の今日だ。信用されないのは致し方ない」

 なんだ、俺の発言に凹んだのか?
 カルラは唇をぎゅっと結び笑いを堪え、ゲイルはうつむき肩を震わせていた。
 ドワーフ王の反応を見る限り、悪者って感じはしないんだよな。

 『移動式魔法陣』は魔王に預けた。
 とりあえず仮設置用の建物を準備するそうだ。
 将来的には新しい街を作り、交通と物流の拠点にするらしい。
 転送魔法陣を利用するには『ゴンヒルリムの通行証』が必要なので、その運用方法もドワーフ王と詰めていくことになるだろう。

「あんなに楽しそうなお父様を見るのは久しぶりよ。魔族は他の種族と交流がないから、魔物を育てて競わせるか、力比べぐらいしか娯楽がないのよ。今度からは街を発展させたり、他種族と交流したりと楽しみが増えるわね」

「そのためにも、他の種族にバトルを挑まないルールを作らないとね!」

 そうだ。ミア。もっと言ってやれ。
 カルラが「そうよね。みんな脳筋だから困るわ」みたいなことを言っているが、カルラもそこに含まれているからな。
 
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

処理中です...