『スキルの素』を3つ選べって言うけど、早いもの勝ちで余りモノしか残っていませんでした。※チートスキルを生み出してバカにした奴らを見返します

ヒゲ抜き地蔵

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第3章

第59話 条件

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 今日、ゾフに着いて一日目とは思えないぐらい濃い一日だった。
 この街に滞在している間は、魔王の屋敷に部屋を用意してもらった。

「明日、魔族軍と合流するために、朝のうちに出発するわ。タクミ達はどうする?」

「もちろん俺とミアも一緒に行くよ」

 俺やミアは戦闘以外でもいろいろと出来ることはあるからな。
 これから明日の計画を立てようとしたとき、魔王が手をたたき全員の視線を集める。
 
「おい。タクミとミアは行かせんぞ。オレが許さん」

 魔王は椅子に深々と腰掛けながら、どうした?と不思議そうな顔をしていた。

「お父様、どうしてタクミとミアの協力を断るのですか?」

「理由は簡単だ。弱いからだ。行けば死ぬぞ」
 
「戦争にならなければ問題ないわ」

「予想外のことが起きたらどうする?」

「私とゲイルが守るわよ。それに……」

 カルラの話を魔王は手で制した。

「オレとの戦闘でわかっただろ。タクミ達は不意打ちや、手数の多い攻撃に弱い。それは己が強いわけではなく、装備の強さで戦っているからだ。違うか?」

 俺とミアは返す言葉がなかった。

「おまえとゲイルが守るだと? 相手は魔物じゃない。頭を使って攻撃してくるんだよ。罠や奇襲、多数で少数を狩る。これは戦術の基本だ。その全てと相性の悪いタクミとミアを連れていってどうする。何か間違っているか?」

 あまりの正論に誰も口を開くことができなかった。
 
「自覚しているならそれでいい。せめてレベルは60ぐらいほしい。今のレベルはいくつなんだ?」

 俺はレベル29、ミアはレベル28だと伝えた。
 それを聞いた瞬間、魔王はガバッと椅子を倒し立ち上がる。
 
「ば、バカな! たったの29だと! ……カルラたちは知っていたのか?」

「はい。それで……タクミからは魔族の特訓に参加させてもらえないかと打診されてました」

 魔王は腕を組みながら考え込んでいるようだ。
 しばらくすると、魔王は俺とミアに顔を向けた。

「いいだろう。魔王軍に従軍することを許してもいい……ただし条件がある。レベルを60以上にしろ。反応速度や動体視力もあがり、不意打ちにも気づけるようになる。攻撃を受けても肉体の防御力や素早さもあがるから、なんとかなるだろう」

「けど、お父様。それだとタクミとミアは明日の出発に間に合いませんわ」

 いや、その心配は不要だ。
 
「……カルラ達に『移動式魔法陣』を持たせるんですね。だからギリギリまで特訓できると」

「話が早い。ただ、ひとつ間違ってるぞ。『ギリギリまで』じゃない。レベル60を超えるまでだ」

「あの……2日、3日でレベル60になれるんでしょうか?」

「知らん。おまえ達次第だな。しかし、オレは十分可能だと思っている。相手が魔物なら、おまえ達は間違いなく強者だ」

 俺は魔王を信用してない。
 けど、今までの経験から俺も間に合うと考えていた。
 そのためには、ある問題を解決する必要がある。

「わかりました。特訓するにあたり1つだけお願いがあります」

「オレはタクミとミアには借りがある。何でも言ってみろ」

「SP回復のアイテムをください」

 そんなアイテムが存在するのか知らないけどお願いした。
 俺とミアが効率良くレベル上げをするには、SPの回復時間が一番の課題なのだ。
 ライトセーバーも『心の壁』バリアも、SPを消費するからな。
 この問題を解決できれば、高速レベル上げが可能になる。

「今から話すことは魔族だけの秘密だ。他言無用だ。ゴンにもしゃべるなよ」

 俺とミアは頷く。

「この世界にSP回復薬は存在しない……ことになっている」

 そう言うと、魔王は右手を軽く振った。
 次の瞬間、青色の液体が入った瓶を2本、右手に持っていた。
 
「これがSP回復薬だ。今、用意できるのは2本しかない。これをやろう。魔族でも貴重なモノだから、簡単に補充はできないと思ってくれ」

 俺はありがたく受け取った。
 よしっ! これでなんとかなりそうだ。
 後で『分析』だな。

「これは何で作られているんですか?」

「ミア、気になるか? 教えてもいいんだが、世の中には知らない方がいいこともあるのだ。それでも知りたいか?」

「悪いこと言わないから止めときなさい。タクミも成分とか調べたらダメよ。絶対に後悔するから」

 魔王とカルラの発言が気になりすぎる。

「一応確認ですけど、これの使い方は飲むで合ってますか?」

「え、ええ。それで大丈夫よ」

 うん。これ以上の追及は止めておこう。
 材料があまりに……な場合、飲めなくなる可能性があるからな。
 あまり時間が無いなか、そのリスクは負いたくない。というか、そんな余裕はない。

 俺達の特訓も明日の朝からになった。
 俺は用意してもらった部屋に戻り、早速SP回復薬に『分析』スキルを使った。
 回復量以外は表示させないように気をつける。

 驚くことに、SP回復量は『95』だ!
 通常のハイポーションのHP回復量が60ぐらい。
 それを考えると凄い。なかなか手に入らないのも頷ける。

 俺は、ぬいぐるみのポケットから洗ってあるポーションの空き瓶を取り出す。
 水で薄めながら、回復量が二桁になるよう調整する。
 よし、あとは『改ざん』スキルで回復量を『10→90』に強化するだけだ。

 これを繰り返し、2本のSP回復薬を18本に増やした。
 食料や水も余裕があるし、これで準備は万全だ。

 ◇ 【エンツォ視点】

『——まだ起きとったのか!? こんな時間に念話してくるとは、急ぎか?』

『ああ、こんな夜更けにすまんな。ゴンよ。おまえカルラに何か言わなかったか?』

『……ドワーフ族に伝わる昔話を少し話したぞ。タクミとミアに説明する必要があったからな』

『やはりおまえの仕業か。カルラが部屋にやってきて、いろいろと質問された。おまえのことだ、カルラから魔族の現状を探ろうとしたのだろうが、カルラに余計な話を聞かせるな』

『魔族については、ワシからは何もしゃべっておらんぞ』

『カルラが知ってしまえば、復讐の連鎖から抜け出せん。過去に捕らわれるのはオレまでだ。それに……タクミとミアだ。あいつらなら、カルラと一緒に違う未来を魔族に用意できる』

『……』

『話は変わるが、タクミとミアに魔族と人族の戦争を止めに行きたいと言われた。もちろん断った。あいつらを絶対に失うわけにはいかないからな』

『素直に言うことをきいたか?』

『オレに隠れてでもカルラ達と行くだろうな。だから、レベル上げの特訓を条件にした。今のレベルだと不意の事故にあうと死にかねん』

『何をさせる気かは知らんが、タクミとミアに怪我させたら、許さんからな!』

『すっかりアイツらのじじいだな。孫扱いするなよ』

『ハッ、どっちがじゃ。おまえほど過保護にしてないわ!』

『くっくくく。ドワーフ族の大使だからな、ちゃんと大事に扱うさ。また何かあれば連絡する』

 ふぅ……それにしても『移動式魔法陣』とはな。
 オレが渇望して手に入れられなかったモノを、こうも簡単に作るとは恐れ入る。
 あの2人がいれば大丈夫だ。
 カルラが知ってしまう前に……オレが幕を引いてやる。
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