救い

ken

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夕方

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途中で一度だけ起きて、空腹を紛らわす為に砂糖水を飲んだ。水道水にスプーン一杯の砂糖と塩をほんの少し入れて、よく混ぜて飲む。薄っすら甘くて、美味しい。昔、熱が出るとお父さんが作ってくれた。
お父さん、ぼくも早くお父さんのところに行きたい。お母さんを守ってって最後にお父さんが言ったから、だからぼく、頑張ってる。頑張っても頑張っても、全然終わらないけど、頑張ってる。お父さんみたいに死ぬまで頑張らないと、いけないんだよね?死ぬまで頑張ったら、ぼく、お父さんとまた一緒にいられるのかな。お父さん、辛いよ。苦しいよ。助けて欲しい。涙が出そうになって、慌てて目を瞑る。何も考えてはダメ。眠るんだ。すぐに夕方になるから。そうしたら、また頑張らないといけないんだから。おとつい、おちんちんに何かを刺されてから、おしっこをする時に激痛がする。血が混ざる時もある。それも、気にしちゃいけない。ぼくの身体はもう、ぼくのものではないのだから。

迎えに来る4時の1時間前に、携帯の目覚ましが鳴る。ああ、もう夕方。ぼくはのろのろと起き上がり、シャワーを浴びる。肛門が痛むのを堪えて、指を差し入れてシャワーのお湯を中に入れる。入れては出し、入れては出し、何度か繰り返して肛門の中をキレイにする。ゆっくりと指を入れて中を揉みほぐし、2本の指を中から押し広げる。傷が痛くて呻き声が出るが、ここは家だから我慢はしない。お客様の前では我慢しないといけないから、家では我慢せず痛い痛いと泣く。そうするとほんの少し、気持ちが落ち着く。辛いけど解しておかないとまた酷く痛めつけられるかも知れないから、我慢して解す。昨日のようにならないように、ローションも塗っておく。準備ができたらアパートの階段に座って、迎えの車を待つ。

小学生が家に帰って行く。キャッキャと笑いながら通り過ぎる。ぼくもつい数年前は、何も知らずにこうやって友達と帰っていた。帰る先は家ではなくて養護施設だったけれど、施設にも友達がいたし、先生達も優しかった。毎週末にはお父さんも来てくれたし、幸せだった。どうしてこんな事になってしまったのだろう。ぼくはぼんやりと過去を思い浮かべる。でももう、遠い昔の事のように思い出は鮮明ではない。

迎えは4時過ぎに来た。森田さんじゃなければ良いな、と思っていると森田さんだ。こうじゃないと良いな、そう思う事ばかりが起こる。本当に、ゴミみたいなぼくの人生。
「おはようございます。お願いします。」
森田さんの機嫌を損ねないように、慎重に挨拶をする。
「てめーザーメン臭えぞ。しっかり身体洗ったのか!?」
「…はい、洗いました。」
「染み付いてんだな、ザーメンがもう身体に。汚ねえやつ。」
「すみません…」
森田さんはまだ機嫌が悪い。
ぼくは後ろの席でギュッと縮こまる。消えてしまいたい。
「てめー昨日は何人に突っ込まれたんだよ?」
「ご、5人です…」
「何回出されたんだっけ?」
「わ、忘れました…」
「あ?思い出せよ!?聞いてんだろ?
なんだ?舐めてんのか??」
「す、すみません…20回位か、もっとか…そ、そのくらいです。」
「後ろだけで?」
「は、はい。」
「口は?」
「……く、口は…口も…そのくらい…」
「え?20回もザーメン飲み込んだの?汚ねえ~、マジで汚ねえ。もう便器じゃんマジで。ねえ、ザーメンって美味しいの?」
「……」
「てめー!何無視してんだよ、あ??舐めてんのか?ぶち殺すぞ!」
「あ!ごめんなさい!
答えます!殴らないで!!
ごめ、ごめんなさい!!」
「答えろ。ザーメンはうまいんですか?」
「お、美味しくないです。」
「どんな味?」
「…えと、生臭いっていうか…
苦くて酸っぱくて、臭いです。」
「何で飲むのそんな汚ねぇもん。」
「…えと、飲めって言われるから…」
「ちげーだろーがよ!!!あ!
おめーが汚ねぇもん飲む便器奴隷だからだろ!?」
信号で止まるたびに後ろを振り向きバシバシと頭を叩かれる。
「あっ!痛い!ごめんなさい。
は、はい。便器だからです。」
機嫌が悪いと森田さんは、ネチネチと口でぼく達の事を辱め、苛む。ぼくは心を無にしてひたすらに森田さんが機嫌を損ねない返事をし続ける。森田さんは身体を売ってるぼく達を蔑んでいるから。みんな森田さんの送迎は嫌がっているけれど、選り好みする事はできない。

マンションの一室が待機室兼事務所で、そこでぼく達は待機している。待機室は2部屋あって、どちらもそんなに変わらない。メークできるスペースがあって、女の人達はそこでメークする。男の子は少なくて、ぼくとあと2人の3人だけだ。1人は高校生で、もう1人はぼくより下の小学6年生。女の子の中にも数人小学生がいる。でも、小学生の子が待機室にいる事は少ない。ぼく達は『ウリモノ』と呼ばれている。『ウリモノ』には2種類あって、自分でお金を稼ぎたくて来ている子と、事情があって来ている子。ぼくのように。
自分で来ている子は、来る日を自分で決められる。NG項目も自分で決められて、お客様を断る事もできる。お金は毎日稼いだ分の半分をもらえる。ただし、待機室にいて1人もお客様がつかなかったら、使用料3千円払わないといけないらしい。
事情があって来ている子は、その事情に応じて来る日を店長に決められるし、NG項目も自分では決められない。基本的にお客様は断れないし、お金はもらえない。
ぼくは毎日のように来ないといけない。それだけ多額な債務がある、という事。NG項目はぼくの場合ほとんど許されていない。基本は本番ゴム無し中出しOKで、即尺、飲精、全身舐めもしないといけない。他にも、複数プレイや玩具使用、拘束や水責めもオプションで付けられるし、床はもちろん尻の穴や便器も、何でも言われたら舐める。撮影もやらないといけないし、SMのオプションを付けられたら、酷い怪我になるようなもの以外は暴力にも耐えないといけない。
つまり、最底辺の『ウリモノ』だ。
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