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ペイン
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ペイン、ごめんね。
本当にごめん。君にばかり辛い思いをさせて。
良いんだよ、ユーキ。ボクはそのために生まれてきたんだから。ボクはペイン。生まれつき痛みには強いんだよ。
でも…
こんなに打たれて。血も出てる。
大丈夫。
それよりさ、早くお話ししてよ。
ペインはボクの膝の上に頭を預けて、丸くなって寝ている。目を瞑り、ボクがお話をするのを待っている。
ボクは、とびきりのお話を語り始める。魔法使いと美しい猫の冒険。猫は、時に辛辣な物言いをするけれど、魔法使いの事を深く深く愛している。冒険の先には決まって両親との再会がある。囚われていた両親を救い出し、魔法で建てた大きな城に住む。もう誰も入ってこない、彼らだけの城。
ボクはペインの柔らかい髪を撫でる。
額にかかった、ゆるい癖のある髪を。ペインは傷が痛むのか、浅い呼吸を繰り返し、時折小さな呻き声をあげる。でも、ペインは決して泣かない。
だからボクは、お話を語りながら、涙が止まらない。ボクはペインのために泣く。ペインが苦しそうにうめき、ボクの手をギュッとつかむ。
ペイン、大丈夫?
うん、やめないで、おはなし。
小さな声でペインが言う。
ペイン、ごめんね。
ボクは何度も心の中で謝る。ボクが弱いから、ペインに何もかも押し付けて。
今度こそ、次こそ我慢して、ペインに頼らずに最後まで耐えようと思うのに、ボクは弱くて、すぐにダメになる。そうするとペインが来て、ボクのかわりに罰を受けてくれる。
ウィッピングボーイっていうんだよ。
ペインが言っていた。
昔、王子様が罰を受ける時、かわりに罰を受ける役。
ボクは王子様じゃないよ。
ドレイだよ。
そう背中に書いてあるでしょう?
そう言うと、ペインはニッコリ笑って言った。
ユーキは王子様だよ。
悪い奴らの陰謀で、今はドレイになっているだけ。
そんなのは嘘だってわかっているけど、嬉しかった。ペインだけは、ボクの事を昔と変わらず人間だと思ってくれているんだ。そう思うと少しだけ勇気が出た。
ボクはペインのためにお話を収集する。
ペインが出てきてボクのかわりに罰を受けてくれている間、ボクはお話しの世界に行く。そこで見聞きした事を、1つも逃さないように、ボクはペインに語って聞かせる。
素晴らしい役割分担じゃない?
とナースは言った。
ペインにとっての栄養はお話しなのよ。
だから、あなたは少しでもたくさんお話しを収集しなさい。
ナースはとても頼もしい。
たっぷりお話しを聞かせたら、ペインはそのうち静かな寝息をたてながら寝入った。浅かった呼吸も少し深くなる。
さあ交代ね。
ナースは言って、ボクはナースの指示に従う。
ナースはペインの体を見て、的確な指示をする。
今回は火傷がひどいわね。
まず冷やしたいけど。
冷凍庫から保冷剤を持ってきて、それとラップも。見つからないように気をつけて行くのよ。
サランラップをどう使うのかボクには分からないけど、言われた通りにする。
ナースは手早くTシャツを着せて、保冷剤をその上から火傷の患部に当てる。
っん…
ペインが顔を顰めて呻き声をあげる。
大丈夫よ。寝ていなさい。
楽になるからね。
ナースが優しく言う。
しばらく冷やすと、ナースはペインのTシャツをまくり、患部にラップを貼る。
ユーキ、保冷剤とラップをしまって、セロハンテープを持ってきて。場所、分かる?
うん、分かる。ボクがしまったから大丈夫。
ボクは慎重に部屋を出て、ラップを元あった場所にしまい、保冷剤を冷凍庫に入れる。セロハンテープを持って戻ると、ナースは新聞紙で鞭で打たれた切り傷を抑えて止血していた。ボクはナースの指示でラップをセロハンテープでとめる。
セロハンテープをしまって、最後はナースが子守唄を歌ってくれる。
ナースの子守唄はとても心地よい。
ボクはペインの横に寝転び、ペインの手をギュッと握って目を瞑る。ナースが僕たちに毛布をかけてくれる。
ボクはペインの痛みを思ってまた少し泣く。泣きながら、眠る。
本当にごめん。君にばかり辛い思いをさせて。
良いんだよ、ユーキ。ボクはそのために生まれてきたんだから。ボクはペイン。生まれつき痛みには強いんだよ。
でも…
こんなに打たれて。血も出てる。
大丈夫。
それよりさ、早くお話ししてよ。
ペインはボクの膝の上に頭を預けて、丸くなって寝ている。目を瞑り、ボクがお話をするのを待っている。
ボクは、とびきりのお話を語り始める。魔法使いと美しい猫の冒険。猫は、時に辛辣な物言いをするけれど、魔法使いの事を深く深く愛している。冒険の先には決まって両親との再会がある。囚われていた両親を救い出し、魔法で建てた大きな城に住む。もう誰も入ってこない、彼らだけの城。
ボクはペインの柔らかい髪を撫でる。
額にかかった、ゆるい癖のある髪を。ペインは傷が痛むのか、浅い呼吸を繰り返し、時折小さな呻き声をあげる。でも、ペインは決して泣かない。
だからボクは、お話を語りながら、涙が止まらない。ボクはペインのために泣く。ペインが苦しそうにうめき、ボクの手をギュッとつかむ。
ペイン、大丈夫?
うん、やめないで、おはなし。
小さな声でペインが言う。
ペイン、ごめんね。
ボクは何度も心の中で謝る。ボクが弱いから、ペインに何もかも押し付けて。
今度こそ、次こそ我慢して、ペインに頼らずに最後まで耐えようと思うのに、ボクは弱くて、すぐにダメになる。そうするとペインが来て、ボクのかわりに罰を受けてくれる。
ウィッピングボーイっていうんだよ。
ペインが言っていた。
昔、王子様が罰を受ける時、かわりに罰を受ける役。
ボクは王子様じゃないよ。
ドレイだよ。
そう背中に書いてあるでしょう?
そう言うと、ペインはニッコリ笑って言った。
ユーキは王子様だよ。
悪い奴らの陰謀で、今はドレイになっているだけ。
そんなのは嘘だってわかっているけど、嬉しかった。ペインだけは、ボクの事を昔と変わらず人間だと思ってくれているんだ。そう思うと少しだけ勇気が出た。
ボクはペインのためにお話を収集する。
ペインが出てきてボクのかわりに罰を受けてくれている間、ボクはお話しの世界に行く。そこで見聞きした事を、1つも逃さないように、ボクはペインに語って聞かせる。
素晴らしい役割分担じゃない?
とナースは言った。
ペインにとっての栄養はお話しなのよ。
だから、あなたは少しでもたくさんお話しを収集しなさい。
ナースはとても頼もしい。
たっぷりお話しを聞かせたら、ペインはそのうち静かな寝息をたてながら寝入った。浅かった呼吸も少し深くなる。
さあ交代ね。
ナースは言って、ボクはナースの指示に従う。
ナースはペインの体を見て、的確な指示をする。
今回は火傷がひどいわね。
まず冷やしたいけど。
冷凍庫から保冷剤を持ってきて、それとラップも。見つからないように気をつけて行くのよ。
サランラップをどう使うのかボクには分からないけど、言われた通りにする。
ナースは手早くTシャツを着せて、保冷剤をその上から火傷の患部に当てる。
っん…
ペインが顔を顰めて呻き声をあげる。
大丈夫よ。寝ていなさい。
楽になるからね。
ナースが優しく言う。
しばらく冷やすと、ナースはペインのTシャツをまくり、患部にラップを貼る。
ユーキ、保冷剤とラップをしまって、セロハンテープを持ってきて。場所、分かる?
うん、分かる。ボクがしまったから大丈夫。
ボクは慎重に部屋を出て、ラップを元あった場所にしまい、保冷剤を冷凍庫に入れる。セロハンテープを持って戻ると、ナースは新聞紙で鞭で打たれた切り傷を抑えて止血していた。ボクはナースの指示でラップをセロハンテープでとめる。
セロハンテープをしまって、最後はナースが子守唄を歌ってくれる。
ナースの子守唄はとても心地よい。
ボクはペインの横に寝転び、ペインの手をギュッと握って目を瞑る。ナースが僕たちに毛布をかけてくれる。
ボクはペインの痛みを思ってまた少し泣く。泣きながら、眠る。
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