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桜亮
幻覚
高校の入学式の日、目の前に翔太がいた。
目の前の翔太を見つめながら、ああ、オレはついに本当に壊れちゃったんだ、と思った。あまりにも熱心に翔太の顔を空想し過ぎて、空想と現実のコントロールができなくなった、ついに幻覚を見るようになった、そう思った。
不思議な事に、目の前の翔太は、いつも空想する10歳の頃の翔太ではなくて、高校生だった。すっかり青年のような顔をしていて、同じ高校の制服を着ていた。
まあでも、きっと脳ってのはそんなくらいの事はできるのだろう。毎日あんなに真剣に翔太の顔を思い浮かべて、翔太が絵を描く姿を思い浮かべ、隣に座っている空想に耽っているから、もう脳は翔太の成長した姿くらいは描けるようになったのだろう。これから毎日、翔太と同じ高校に通う空想に耽っていられたら、どんなに素敵だろうか。そうしたらきっと、辛い事は全部忘れられる。
オレはそう思ってとても嬉しかった。こんなに嬉しい気持ちになったのは、母さんが死んでから初めてだ。
そう思ったのに。
「おい!桜亮!!桜亮だろ?
翔太だよ!覚えてる?会いたかったよ、桜亮。」
空想の中の翔太は必死の形相でそんな事を言った。オレは怖くなった。
これは、本物の翔太なのだろうか。
幻覚ならオレにしか見えないはずなのに、周りの人間は、オレよりも大声でオレに話しかけてくる翔太の方をジロジロと見ている。
翔太?
本物の翔太なの?
声が出ないまま、桜亮は翔太の顔を凝視した。
「そうだよ!俺だよ!翔太だよ!久しぶり!会いたかった…」
翔太が言った。
オレは踵を返して逃げ出した。
動悸が激しくなって、心臓が口から出そうだった。
本物の翔太には、見られたくない。
こんな穢れきった人形のオレは、知られたくない。
オレはもう死んだから。
死んでしまったから。
目の前の翔太を見つめながら、ああ、オレはついに本当に壊れちゃったんだ、と思った。あまりにも熱心に翔太の顔を空想し過ぎて、空想と現実のコントロールができなくなった、ついに幻覚を見るようになった、そう思った。
不思議な事に、目の前の翔太は、いつも空想する10歳の頃の翔太ではなくて、高校生だった。すっかり青年のような顔をしていて、同じ高校の制服を着ていた。
まあでも、きっと脳ってのはそんなくらいの事はできるのだろう。毎日あんなに真剣に翔太の顔を思い浮かべて、翔太が絵を描く姿を思い浮かべ、隣に座っている空想に耽っているから、もう脳は翔太の成長した姿くらいは描けるようになったのだろう。これから毎日、翔太と同じ高校に通う空想に耽っていられたら、どんなに素敵だろうか。そうしたらきっと、辛い事は全部忘れられる。
オレはそう思ってとても嬉しかった。こんなに嬉しい気持ちになったのは、母さんが死んでから初めてだ。
そう思ったのに。
「おい!桜亮!!桜亮だろ?
翔太だよ!覚えてる?会いたかったよ、桜亮。」
空想の中の翔太は必死の形相でそんな事を言った。オレは怖くなった。
これは、本物の翔太なのだろうか。
幻覚ならオレにしか見えないはずなのに、周りの人間は、オレよりも大声でオレに話しかけてくる翔太の方をジロジロと見ている。
翔太?
本物の翔太なの?
声が出ないまま、桜亮は翔太の顔を凝視した。
「そうだよ!俺だよ!翔太だよ!久しぶり!会いたかった…」
翔太が言った。
オレは踵を返して逃げ出した。
動悸が激しくなって、心臓が口から出そうだった。
本物の翔太には、見られたくない。
こんな穢れきった人形のオレは、知られたくない。
オレはもう死んだから。
死んでしまったから。
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