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おじ様に会えるのは楽しみ。
それでも、幼い彼はそう思っていた。誰かに何か話かけて、返事が返ってくる。それだけで彼は嬉しかった。
勉強を教えてもらえるのも嬉しかった。
おじ様は自分のことを見てくれて、褒めてくれて、知らない事をたくさん教えてくれる。彼は、知識とコミュニケーションに飢えていた。おじ様がプレゼントしてくれる本は、彼を美しい世界に連れて行ってくれた。
だから、裸にされて写真や動画を撮られたり、身体中を舐めまわされたりするのは気持ち悪かったけれど、彼は我慢した。小さな口を顎が痛くなる程開けて、喉の奥に大人の性器を挿入される痛みや苦しさにも耐えた。お尻の穴に指や棒を入れられる時には、あまりに痛くて、彼は空想の世界に逃げ込んだ。
彼は、自分が何をさせられているのか全く理解していなかった。大人の人はみな、子供にこういうことをするのだろうか、と思った。大人の命令を拒否するという選択肢は、彼にはなかった。
「あんた、今年9歳になるから。9歳になったらあんた、おじさんのとこに行くの。そこでおじさんと住むのよ。」
「僕、おじ様の子供になるんですか?」
「まあ、子供ってかなんていうか…
あのおじさんのモノになんのよ、あんた。」
「ママともまた会えますか?」
「おじさんとこ行ったらもう会えないかな。」
「僕…ママと会えないのは嫌です。
今まで通りここに住みたいです。」
「あ、そう。でもあたしはそうでもないのよ、悪いけど。あんたの父親に捨てられないようにあんた作ったけど、かえって逆効果だったし。全く、こんな事なら子供なんて作んなきゃ良かったわよ。
それにこれ、もう決まった事だから。」
「ママ……
いい子にするから、お願いします。」
「え?分かんない?おじさんとこ行くのが良い子って事。良い子にしておじさんの言う事全部聞いたら、ランドセル買ってもらえるかもよ。」
「…ランドセル……」
正直、ランドセルは喉から手が出るほど欲しかった。ランドセルを背負って小学校に行くのは彼の夢だった。でも、母親に会えないのは悲しかった。胸が張り裂けそうに痛んだ。彼は母親を愛していた。
彼女が自分にさほど関心がないのは知っていた。母親に好かれていないことを、悲しくも思っていた。それでも彼は、どうしようもなく母親を愛していた。離れたくなかった。
「お願いします。もっと良い子にするから。僕をここに置いて下さい。何でもします。だから…ママ…お願いします。」
泣いて縋っても、母親は首を縦に振ってはくれなかった。
それから2ヶ月もしないうちに、家に来たおじ様が
「今日、連れて帰る。」
と母に言った。
母親は
「やっとお金用意できたのね。」
と言った。
既に諦めていた彼は黙っておじ様の車に乗った。荷物は段ボール1箱に詰められて後から送られて来たから、彼はその日何も持たずに身一つで家を出た。初めて出た外の風景に、彼は恐怖を覚えて慌てて車に乗り込んだ。母親は見送りもしなかった。車の窓から見る初めての景色にも彼は恐怖を覚えた。
怖いけれど、目が離せなかった。
連れて行かれた家は、大きなマンションの最上階にあった。窓からは街全体が見渡せて、彼は最初恐ろしくて窓に近づく事もできなかった。そんなに高い場所に行ったのは初めてだったのだ。
そこで彼は、着ている服を全部脱がされ捨てられて新しい服を与えられた。そして、新しい名前も与えられた。
「おまえは今日から私の奴隷になるんだ。私の、美しく可愛らしい、小さな奴隷にね。おまえの名前は今日から、『れい』。奴隷の隷だ。従う、という意味があるんだ。私の言うことには全部、従うんだよ。いいね。」
そう言われて、彼はそこで徹底的に支配されて過ごした。おじ様は、気分次第で彼を甘やかしたり優しく接したりし、称賛の言葉を囁いたり褒美をやったりした。上質なものに触れさせ、美しい文化を味わう機会を与えてくれた。しかし一方で残酷な仕置きをし、激しく折檻したり厳しい叱責や罵倒を与えたりした。恐怖や屈辱を植え付け、彼は自分の所有物に過ぎないのだと徹底的に教え込んだ。そのため彼はいつも気を張り詰めておじ様の顔色を窺い、少しでも意に沿わない事をしないように慎重に行動した。細部に渡って張り巡らされたルールを細心の注意を払って守った。
彼は、本や教科書を与えられ、着心地の良い上等な衣服を着せられ、おじ様直々に、偏ってはいるが高度な教育を施された。完璧な食事のマナーを仕込まれて高級なレストランで食事を楽しみ、クラシックのコンサートや美術館など、文化に触れる機会も与えられた。それらは全部、元の家にいては経験できないものだった。彼は感動した。美しい絵画や音楽は彼の心を震わせ、彼はそれを栄養として吸収しどんどん知識や教養を身につけた。
しかしそれらは、おじ様の一言で急に取り上げられた。
レストランで食事をしている最中に何か一つでも会話の返答や所作を間違えると、おじ様の笑顔がスッと消える。そうすると彼は、背筋が凍るような寒気を覚える。間違えた、何か間違えたのだ。鳥肌が立ち、慌てて許しを懇願するが、許される事はない。
「れい、どうしたの?食べないのかい?口に合わないのかな?」
「いいえ、おじ様。お、美味しいです。」
「じゃあもっとお食べよ。」
「……はい…」
口に運ぶ高価な料理はもう、何の味もしない。恐怖に喉がこわばって、飲み込むのが苦しい。それでも彼は何とか咀嚼し、喉に押し込んで無理やり飲み込む。
「美味しいかい?」
「…はい。美味しいです…
お、おじ様、ごめんなさい。
ゆ、許し…」
「れい、何を謝ってるの?何も怒ってなんかないよ。あ、そうだ。これをおまえに渡すのを忘れていたよ。さあ、トイレに行って、それを装着してきなさい、れい。」
そう言ってポーチに入ったバイブを渡される。楽しい時間は終わった。拷問が始まる。彼はそう悟って、悲しみと恐怖に胸を塞がれる。何を間違えてしまったんだろう。考えても分からない時もあった。彼は黙ってトイレに行って、尻の穴に自らバイブを挿入する。抜けないよう両足に取り付けるベルトが付いていて、彼はそれを慎重に取り付ける。
痛みに手が震え、涙を必死に堪えて、彼は残りの時間を衆目の中で機械に犯されながら過ごす。これから、家に帰ってされるであろう拷問を想像して、彼の心は真っ黒に塗り潰される。
コンサートの途中で、美しい音色にすっかり浸っていると突然トイレに連れ出されて喉の奥を犯される。膝の上においでと言われて、おじ様の膝の上で撫で回されながら読んでいる本を、突然何の理由もなく取り上げられ、訳を教えてもらえないまま1週間、動物のように裸で浴室で過ごさせられる。
特別に誂えられた細長い箱に入れられるお仕置きを、彼は最も恐れた。手を上に伸ばした状態で手錠をかけられて、身動きの取れないほど狭い箱に入れられて蓋をされる。息を吸うための穴はあるが、真っ暗なその中で彼は押し潰されそうな圧迫感に苦しむ。どんなに怖くても身体が痛くても、泣いてはいけない。泣くと鼻水が出てそれが喉に入り込み、窒息しそうになる。恐怖で吐き気がしても、吐く事はできない。いつまでそこに入れられるのかは、おじ様の気分次第だ。
そんな事は日常茶飯事で、彼はいつもビクビクと怯えて過ごし、しかも怯えを顔に出さないように細心の注意を払った。
いつ取り上げられても良いように、彼は本の内容全てを自分の頭に焼き付けた。音楽も、絵画も、いつでも思い出せるように必死で憶えた。そしていつ終わるのか分からない痛みや苦しみの中で、彼はそれを心の中で再生した。それだけが彼に許された自由だった。物語を頭の中で暗誦し、時には実際に小さな声で唱えた。美しい景色や絵画を細部に渡って思い起こし、必死にそれを見つめて、気が狂いそうな恐怖と闘った。
犯され、痛めつけられ、自分の身体が自分のものではないような気持ちになって、それでも彼はおじ様に愛されたいと願った。優しくされると、それがベッドの中で、性的に蹂躙されている時でも、自分は愛されているのだと思い込むことができた。
知性のない奴隷は美しくない。
そう言われて彼は必死で学んだ。
おじ様が施す教育は難易度が高く、彼はいつも持てる全ての力を使ってそれを理解しようと懸命に努力した。そうしないと、おじ様に見捨てられる。それは彼にとって文字通り死を意味した。記憶力や読解力は、生まれ持った彼の能力だったかも知れないが、そこに彼の必死の努力が合わさって、彼はかなり高度な知識を身に付けた。
11歳の時には彼は因数分解を解いていたし、古代ギリシャの叙事詩を読み、シェイクスピアを暗誦していた。国語辞典をほぼ暗記していて、実際には体験したことのない言葉でもその意味を誦じる事ができた。
知識が増えるのと比例して、彼の心には埋めようのない空白がうまれた。当然だ。知性と隷属は、相容れないものなのだから。その歪みが彼の中でどんどん広がり、彼はその歪みが生み出した空白を物語に逃避する事で見ないようにした。宮沢賢治を、彼は好んで読んだ。その物語の世界の中に、彼は静謐な癒しを得た。そこには、諦念とその先の希望があった。
本当に辛い時、彼は宮沢賢治の物語を声に出して暗誦した。そうすると、暗闇の中にぼんやりと色とりどりの美しい光が浮かんだ。その光景を眺めて、彼は胸の激しい痛みや苦しさをやり過ごした。
それでも、最初の数年は、まだ良かった。
彼が二次性徴期を迎えるまでは。
それでも、幼い彼はそう思っていた。誰かに何か話かけて、返事が返ってくる。それだけで彼は嬉しかった。
勉強を教えてもらえるのも嬉しかった。
おじ様は自分のことを見てくれて、褒めてくれて、知らない事をたくさん教えてくれる。彼は、知識とコミュニケーションに飢えていた。おじ様がプレゼントしてくれる本は、彼を美しい世界に連れて行ってくれた。
だから、裸にされて写真や動画を撮られたり、身体中を舐めまわされたりするのは気持ち悪かったけれど、彼は我慢した。小さな口を顎が痛くなる程開けて、喉の奥に大人の性器を挿入される痛みや苦しさにも耐えた。お尻の穴に指や棒を入れられる時には、あまりに痛くて、彼は空想の世界に逃げ込んだ。
彼は、自分が何をさせられているのか全く理解していなかった。大人の人はみな、子供にこういうことをするのだろうか、と思った。大人の命令を拒否するという選択肢は、彼にはなかった。
「あんた、今年9歳になるから。9歳になったらあんた、おじさんのとこに行くの。そこでおじさんと住むのよ。」
「僕、おじ様の子供になるんですか?」
「まあ、子供ってかなんていうか…
あのおじさんのモノになんのよ、あんた。」
「ママともまた会えますか?」
「おじさんとこ行ったらもう会えないかな。」
「僕…ママと会えないのは嫌です。
今まで通りここに住みたいです。」
「あ、そう。でもあたしはそうでもないのよ、悪いけど。あんたの父親に捨てられないようにあんた作ったけど、かえって逆効果だったし。全く、こんな事なら子供なんて作んなきゃ良かったわよ。
それにこれ、もう決まった事だから。」
「ママ……
いい子にするから、お願いします。」
「え?分かんない?おじさんとこ行くのが良い子って事。良い子にしておじさんの言う事全部聞いたら、ランドセル買ってもらえるかもよ。」
「…ランドセル……」
正直、ランドセルは喉から手が出るほど欲しかった。ランドセルを背負って小学校に行くのは彼の夢だった。でも、母親に会えないのは悲しかった。胸が張り裂けそうに痛んだ。彼は母親を愛していた。
彼女が自分にさほど関心がないのは知っていた。母親に好かれていないことを、悲しくも思っていた。それでも彼は、どうしようもなく母親を愛していた。離れたくなかった。
「お願いします。もっと良い子にするから。僕をここに置いて下さい。何でもします。だから…ママ…お願いします。」
泣いて縋っても、母親は首を縦に振ってはくれなかった。
それから2ヶ月もしないうちに、家に来たおじ様が
「今日、連れて帰る。」
と母に言った。
母親は
「やっとお金用意できたのね。」
と言った。
既に諦めていた彼は黙っておじ様の車に乗った。荷物は段ボール1箱に詰められて後から送られて来たから、彼はその日何も持たずに身一つで家を出た。初めて出た外の風景に、彼は恐怖を覚えて慌てて車に乗り込んだ。母親は見送りもしなかった。車の窓から見る初めての景色にも彼は恐怖を覚えた。
怖いけれど、目が離せなかった。
連れて行かれた家は、大きなマンションの最上階にあった。窓からは街全体が見渡せて、彼は最初恐ろしくて窓に近づく事もできなかった。そんなに高い場所に行ったのは初めてだったのだ。
そこで彼は、着ている服を全部脱がされ捨てられて新しい服を与えられた。そして、新しい名前も与えられた。
「おまえは今日から私の奴隷になるんだ。私の、美しく可愛らしい、小さな奴隷にね。おまえの名前は今日から、『れい』。奴隷の隷だ。従う、という意味があるんだ。私の言うことには全部、従うんだよ。いいね。」
そう言われて、彼はそこで徹底的に支配されて過ごした。おじ様は、気分次第で彼を甘やかしたり優しく接したりし、称賛の言葉を囁いたり褒美をやったりした。上質なものに触れさせ、美しい文化を味わう機会を与えてくれた。しかし一方で残酷な仕置きをし、激しく折檻したり厳しい叱責や罵倒を与えたりした。恐怖や屈辱を植え付け、彼は自分の所有物に過ぎないのだと徹底的に教え込んだ。そのため彼はいつも気を張り詰めておじ様の顔色を窺い、少しでも意に沿わない事をしないように慎重に行動した。細部に渡って張り巡らされたルールを細心の注意を払って守った。
彼は、本や教科書を与えられ、着心地の良い上等な衣服を着せられ、おじ様直々に、偏ってはいるが高度な教育を施された。完璧な食事のマナーを仕込まれて高級なレストランで食事を楽しみ、クラシックのコンサートや美術館など、文化に触れる機会も与えられた。それらは全部、元の家にいては経験できないものだった。彼は感動した。美しい絵画や音楽は彼の心を震わせ、彼はそれを栄養として吸収しどんどん知識や教養を身につけた。
しかしそれらは、おじ様の一言で急に取り上げられた。
レストランで食事をしている最中に何か一つでも会話の返答や所作を間違えると、おじ様の笑顔がスッと消える。そうすると彼は、背筋が凍るような寒気を覚える。間違えた、何か間違えたのだ。鳥肌が立ち、慌てて許しを懇願するが、許される事はない。
「れい、どうしたの?食べないのかい?口に合わないのかな?」
「いいえ、おじ様。お、美味しいです。」
「じゃあもっとお食べよ。」
「……はい…」
口に運ぶ高価な料理はもう、何の味もしない。恐怖に喉がこわばって、飲み込むのが苦しい。それでも彼は何とか咀嚼し、喉に押し込んで無理やり飲み込む。
「美味しいかい?」
「…はい。美味しいです…
お、おじ様、ごめんなさい。
ゆ、許し…」
「れい、何を謝ってるの?何も怒ってなんかないよ。あ、そうだ。これをおまえに渡すのを忘れていたよ。さあ、トイレに行って、それを装着してきなさい、れい。」
そう言ってポーチに入ったバイブを渡される。楽しい時間は終わった。拷問が始まる。彼はそう悟って、悲しみと恐怖に胸を塞がれる。何を間違えてしまったんだろう。考えても分からない時もあった。彼は黙ってトイレに行って、尻の穴に自らバイブを挿入する。抜けないよう両足に取り付けるベルトが付いていて、彼はそれを慎重に取り付ける。
痛みに手が震え、涙を必死に堪えて、彼は残りの時間を衆目の中で機械に犯されながら過ごす。これから、家に帰ってされるであろう拷問を想像して、彼の心は真っ黒に塗り潰される。
コンサートの途中で、美しい音色にすっかり浸っていると突然トイレに連れ出されて喉の奥を犯される。膝の上においでと言われて、おじ様の膝の上で撫で回されながら読んでいる本を、突然何の理由もなく取り上げられ、訳を教えてもらえないまま1週間、動物のように裸で浴室で過ごさせられる。
特別に誂えられた細長い箱に入れられるお仕置きを、彼は最も恐れた。手を上に伸ばした状態で手錠をかけられて、身動きの取れないほど狭い箱に入れられて蓋をされる。息を吸うための穴はあるが、真っ暗なその中で彼は押し潰されそうな圧迫感に苦しむ。どんなに怖くても身体が痛くても、泣いてはいけない。泣くと鼻水が出てそれが喉に入り込み、窒息しそうになる。恐怖で吐き気がしても、吐く事はできない。いつまでそこに入れられるのかは、おじ様の気分次第だ。
そんな事は日常茶飯事で、彼はいつもビクビクと怯えて過ごし、しかも怯えを顔に出さないように細心の注意を払った。
いつ取り上げられても良いように、彼は本の内容全てを自分の頭に焼き付けた。音楽も、絵画も、いつでも思い出せるように必死で憶えた。そしていつ終わるのか分からない痛みや苦しみの中で、彼はそれを心の中で再生した。それだけが彼に許された自由だった。物語を頭の中で暗誦し、時には実際に小さな声で唱えた。美しい景色や絵画を細部に渡って思い起こし、必死にそれを見つめて、気が狂いそうな恐怖と闘った。
犯され、痛めつけられ、自分の身体が自分のものではないような気持ちになって、それでも彼はおじ様に愛されたいと願った。優しくされると、それがベッドの中で、性的に蹂躙されている時でも、自分は愛されているのだと思い込むことができた。
知性のない奴隷は美しくない。
そう言われて彼は必死で学んだ。
おじ様が施す教育は難易度が高く、彼はいつも持てる全ての力を使ってそれを理解しようと懸命に努力した。そうしないと、おじ様に見捨てられる。それは彼にとって文字通り死を意味した。記憶力や読解力は、生まれ持った彼の能力だったかも知れないが、そこに彼の必死の努力が合わさって、彼はかなり高度な知識を身に付けた。
11歳の時には彼は因数分解を解いていたし、古代ギリシャの叙事詩を読み、シェイクスピアを暗誦していた。国語辞典をほぼ暗記していて、実際には体験したことのない言葉でもその意味を誦じる事ができた。
知識が増えるのと比例して、彼の心には埋めようのない空白がうまれた。当然だ。知性と隷属は、相容れないものなのだから。その歪みが彼の中でどんどん広がり、彼はその歪みが生み出した空白を物語に逃避する事で見ないようにした。宮沢賢治を、彼は好んで読んだ。その物語の世界の中に、彼は静謐な癒しを得た。そこには、諦念とその先の希望があった。
本当に辛い時、彼は宮沢賢治の物語を声に出して暗誦した。そうすると、暗闇の中にぼんやりと色とりどりの美しい光が浮かんだ。その光景を眺めて、彼は胸の激しい痛みや苦しさをやり過ごした。
それでも、最初の数年は、まだ良かった。
彼が二次性徴期を迎えるまでは。
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