捨て猫ちゃんとおっさん。

桜屋敷 櫻子

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ある日、起きたらゴミ捨て場でした。

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 あたしは一人、呟いた。





 「どうしたもんかなぁ」





 本当にどうしたものか。あたし、如月 菜摘は「ゴミ捨て場」に座り込んでいた。



 別にそういう特殊な趣味があるわけではない。目覚めたら、真夏の服装で真冬のゴミ捨て場に捨てられていたのだ。寒い。時刻も場所も分からない。唯一の救いは、どうやらこの地域の燃えるゴミの日が今日じゃなかったことだろうか。あたしは生ゴミではなく、資源ゴミに囲まれていた。





 「ちくしょー、あのクソ親め」





 どうしてこうなったのか、については心当たりがあった。いや、確信があった。あたしの両親はいわゆる毒親で、長女であるあたしのことは散々な扱いをするくせに妹二人のことは猫可愛がりしていた。あたしがこういう目に遭うのも初めてじゃない。こういう時の為に、あたしは自宅の住所を教えられていない。電話番号も、だ。



 あたしは一応、まだ未成年だ。あたしが警察や他人様に保護された場合、あたしが自宅の住所や電話番号を知っていたら厄介なことになる。あたしが住所や電話番号を言おうものなら、罰せられるのは親なのだ。勿論、あたしも親から罰せられるが。いつもなら夜間に「捨てて」早朝には「拾う」。それはうちの親が行うあたしへの「躾」の一つだった。



 ……だが。





 「どう考えても、これから日暮れだよねぇ」





 あたしがぼけーっとしている間に太陽が沈み始めた。もしかしたらもしかしなくても、これ、躾じゃないやつ?本気で捨てたやつ?あたしが躾と称して見知らぬ土地に捨てられる時は、夜間に軽い睡眠薬を飲ませられ、ご丁寧に目隠しまでされ、捨てられた先で目を覚ますのがお決まりなのだが……今回に限ってはそれも無かった。



 それはどうしてか。恐らく、あたしは親に強い睡眠薬を盛られ、意識を手放してさっきまで眠っていた。記憶があるのは昨日の夕方まで。今は真冬、あたしはアホだが自ら進んで夏服に着替えるようなバカなことはしない、そんな記憶も無い。下手したら凍死するし。つ・ま・り?





 「……あたし、殺す気で捨てられたのか」





 あたしの身体は冷え切っていた。ガチガチと歯が鳴っている。本当に、どうしたもんかなぁ……。
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