保健室の秘め事

桜屋敷 櫻子

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保健室の先生

 どうしよう!ヒロが、あのヒロが目の前にいる!いつも主人公を大人の色香で振り回す、あのヒロが!!いや、落ち着け、落ち着くんだ、私。

 目の前のこの人は尋らしいけどヒロじゃなくて尋がヒロの、あれ、あれあれあれ?ぜんっぜん落ち着けない!!



 白衣を着たヒロは、いや、男性は怪しいものを見るかのような目で私を見る。まぁ、確かに怪しいかもしれない。保健室の扉の前で震えながらしゃがみ込み、立ち上がって振り向いたかと思えば、自分の両頬をつねり出した女子生徒。



 状況から察するに、男性は保健室の先生なのだと思われる。耳にかけられた、ちょっと遊んでいそうな茶髪が、黒縁眼鏡の奥の切れ長な瞳が、高身長ですらっとした体型が!そして、白衣が!!男性のなにもかもが、ヒロを連想させた(ヒロも保健室の先生なのだ)。



 とにかく、保健室の先生(仮)は、漫画の世界から飛び出してきたヒロかと思うほど、ヒロにそっくりで、「保健室の秘め事」の登場人物の中でヒロが一番好きな私はもう、テンションが上がり過ぎて今度こそ鼻血を出しそうだった。





 「君、大丈夫ですか?顔が真っ赤ですが。新入生、ですよね?具合が悪くて保健室に?」





 ……はっ、いけない、ヒロ(のそっくりさん)に出会えた感動で返事をするのを忘れていた。





 「あ、あああ、あのあの、にゅ、にゅにゅ入学式の途中で、きき気分がわるわるわる悪くなっちゃって……!」





 にゅにゅ入学式、わるわるわる悪く、って、どれだけ吃るんだ、私。ヤバい、脚が震え出した。もう鼻血がどうとか恥ずかしいとか、そういう次元じゃなくてヤバい。

 どうしよう、この保健室の先生(仮)とお近付きになりたい、いや、ならないという選択肢はない。こんな素敵な出会いをスルー出来るほど、私はクールじゃない。



 はぁ、と、保健室の先生(仮)が溜め息を吐く。え、私、なにか変なことでも言った?





 「あの、保健室のせんせ、い……?ですよね?」





 私は恐る恐る、保健室の先生(仮)に確認を取る。気のせいだろうか、保健室の先生(仮)の雰囲気が、冷たくなったような。はぁ。もう一度、溜め息を吐かれる。





 「そうですよ、僕は養護教諭です。仕方ないですね、気分が悪いと聞いてしまったからには、放置出来ません。中へどうぞ」





 あれ?あれれれ?先生、なんだかご機嫌斜め?先生は白衣のポケットから鍵を取り出し、保健室の鍵を開けた。開けた?

 今さら気付いたのだが、保健室の扉には「留守です」というプレートが掛けられていた。気分が悪すぎて、今まで気付かなかった。私、無人の保健室に入ろうとしていたのか。ますます怪しい女子生徒じゃないか。
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