保健室の秘め事

桜屋敷 櫻子

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秘密の放課後

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 ガチャリ、カラカラカラ。開くはずのない保健室の扉が開いた音がして、私は慌てて、今井先生から離れた。乱されるはずだったスカーフの位置も、きちんと直す。今井先生は、ちょっと待っていてくださいね、と、小声でそう言うと、カーテンの隙間を抜けて、扉の方へ向かった。すると、とても聞き慣れた声が聞こえてきた。そのとても聞き慣れた声の主は、今井先生に文句を言う。





 「今井先生、やっぱり居留守ですか。ここ最近、サボりが酷いんじゃありませんか?」



 「佐藤先生……。勝手に鍵を開けて、ノックもなしに入ってくるなんて、」



 「はいはい、すみませんでした。いや、俺は今井先生に文句を言いに来たわけじゃないんですよ。うちの部のやつが怪我をしたんですけど、ここまで歩いて来れないような、酷い捻挫でして。ちょっと来てくれませんか?」





 少し間が合って、今井先生の溜め息が聞こえた。





 「……わかりました。怪我人は体育館ですよね?準備して行くので、先に行っててください」



 「ありがとうございます。あぁ、あと、」





 今井先生と「佐藤先生」の会話は続く。私は、カーテン一枚に保護されているベッドで、一人、心臓をバクバクさせていた。どうしよう、見つかったらヤバい人が来てしまった。さっきまでのムードなんて、「佐藤先生」の登場でどこかに消えてなくなった。お願いだから、今すぐ保健室から出ていって!「佐藤先生」!!





 「……というわけなんですけど、それはそうと、今井先生?今、ここに女子生徒が一人、来てますよね?誤魔化しても無駄ですよ」





 ぎゃああああ!やっぱり、やっぱり……ゆきちゃんにはバレていたか。私が毎日、お昼休みと放課後、保健室に来ていること……。まぁ、毎日、同じ学校にいたらこうなるよね……。それにしても、忙しい身なのに、気付くのが結構早かった気がする。さすが……「保護者」だ。





 「おーい、雛。いるんだろ?出てこい、怒らないから」





 いや、怒るとか怒らないとかいう問題じゃなくてね?ゆきちゃんに、さっきまで今井先生としていたことがバレたりしたら、私より今井先生がマズいでしょう!?こうなったら、窓から逃げるか!?

 あぁ、ゆきちゃんのものと思われる足音が、ベッドに近付いてくる……。それを止めようとしているのか、今井先生の足音と、声も聞こえる。あぁあ、神様、お助けください!!





 「ちょっと待ってくださいよ、佐藤先生。佐藤先生は佐藤さんの、……佐藤、さん?」



 「あ、気付きました?佐藤 雛は俺が保護者をしている、俺の姪っ子なんですよ」



 「佐藤先生が、保護者を……?」



 「はい。まぁ、色々あって、去年から一緒に暮らしてまして」





 今井先生にバレたー!ていうか、ゆきちゃんがバラしたー……!!嫌だったのに、私がこの高校の体育教諭である、ゆきちゃんこと佐藤 幸の姪で、去年から一つ屋根の下で暮らしているっていう事実は、伏せておきたかったのに……。

 だって、私がゆきちゃんの姪だってわかったら、今井先生、私から離れていきそうで。同僚の姪と「だけ」親しくするなんて、今井先生にとっては良いことないし……。それに、叔父と姪の関係だとしても、若い男女が二人暮らしっていうのが……。
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