21 / 32
第四章
旅路7
しおりを挟む
「お呼びしました?」
と扉を開けて、髪の長い女がひょっこり顔を出した。
「聞いてたの?」
「あ、いえ、盗み聞きしてたわけじゃなくて、たまたま――」
「いいわ、別に。クニークルスの聴力ならわたしたちの会話なんて筒抜けでしょうし」
え、えっと……と髪の長い女は困った様子で首をかしげた。
「朝食は、パンとライスとどっちがいいですか? って聞きに来ただけなんですが――それとも両方にします? 昨日はどっちも平らげてましたよね?」
「僕は両方でいいよ」
「わたしはパンだけにしようかしら? 朝はそこまで大食らいじゃないのよ」
「わかりました。じゃ、そうしますね」
「台所に戻る前に、こっちの疑問に答えてほしいわ」
シュゼットがそう言って引き止めると、髪の長い女は微苦笑を浮かべた。
「一般論ですけれど、フェーレースなら一日の移動距離は五〇〇ウィア(四三三キロ)くらいだと思いますよ。一日に疲労せず移動できる距離がそれくらいだと聞いたことがあります。もちろん個人差はあるでしょうけれど」
「人間の足なら十日以上はかかる距離ね……。ちなみにカニスだと?」
「やろうと思えば二五〇〇ウィア(二一六五キロ)は行けるとか。まぁ彼らの場合は一晩中獲物を追い回すことも多いですから、休み無しで一日中ずっと移動し続けられるんです。そりゃ桁違いの移動距離になりますよ」
「え、本当に一晩中……というか一日中ずっと動き回れるの?」
リックは驚いた様子で眉根を寄せた。髪の長い女はほほえんだ。
「やろうと思ったら、飲まず食わずで睡眠もとらずに、ずっと走っていられるんです。一日でも二日でも。だから、もしカニスが長距離を移動しようと思ったら、きっと睡眠と休息を二日に一回にして、あとはずっと走ってるでしょうね。だからこそ圧倒的な移動距離を誇るんですよ」
「二日に一回ってそんなことできるの!?」
「あ! でもでも! 最高速度はそれほどでもないんですよ! フェーレースの最高速はカニスの三倍以上ですからね!」
慌てたように髪の長い女はそう付け加えた。そうなの? と不思議そうに首をかしげるリックを見て、彼女は意外そうな顔をする。
「あれ……? あんまり興味なさそうですね?」
「え? うん……というか、なんで急に最高速度の話になったの?」
「いえ、その――」
髪の長い女は困った顔でシュゼットを見た。
「カニスとフェーレースって、何かと張り合ってるらしいのよ。表立って敵対しているわけではないんだけど、対抗意識はかなり強いと聞くわ」
「なんで?」
「どちらも同じ狩猟民族だからじゃないかしら? 戦い方も正反対だし」
「フェーレースは自分の肉体のみで戦っている感じなんですよねー。武器とかもいっさい使いませんし。防具も身につけないか、動きやすい革鎧くらいで」
髪の長い女の言葉に、シュゼットもうなずいた。
「カニスは逆に重武装なのよね。全身を分厚い金属の甲冑で包んで、ごつい剣やら槍やら振りまわして戦う。フェーレースは単独で戦うことを好み、カニスは集団で戦うことを好む――どう、見事に正反対でしょ?」
シュゼットが笑って問いかけた。リックは目をぱちくりさせる。
「確かにそうみたいだけど――でも、狩りの獲物はかぶってないんだよね?」
「そっちはかぶってないわ。でも変異種……特に呪言種に関してはそうでもないのよ」
シュゼットは人差し指を立てた。
「フェーレースもカニスも、狩りの邪魔になるって理由で、よく変異種退治をしているの。で、呪術を使う変異種――つまり強大な力を持つ呪言種を仕留めたものは、栄誉ある戦士として讃えられるのよ。フェーレースなら豪腕の戦士、カニスなら練達の戦士隊、だったかしら?」
確認するようにシュゼットは髪の長い女を見た。
「はい、そのとおりです。呪言石を持ち帰ったフェーレースやカニスは、どちらもそういうふうに呼ばれて英雄視されますね」
「呪言石?」
「ああ、言ってなかったかしら? 呪言種を倒すと、呪言石っていうのが手に入るのよ」
銀色をした丸い石で、大きさは鶏の卵くらいだ。
特定の言葉を唱えると、呪術を使用できる。効果は仕留めた呪言種と同じものだ。迂闊に濫用するとすぐに壊れてしまうので、たいていの場合は大切に保管される。
フェーレースやカニスは頑丈な宝物庫を作って、後生大事にしまい込んでいるという。
「そんなのがあるんだ。じゃあ、ひょっとしてロゼールを眠らせた――」
言いかけてから、リックは慌てて自分の口を両手でふさいだ。シュゼットににらまれたからだ。
「ロゼール?」
と髪の長い女は首をかしげた。
「なんでもないわ。ところで朝食はまだかしら?」
髪の長い女は微笑を浮かべた。
「誰にでも、話したくないことはありますからね。朝食は少々お待ちください」
彼女は笑顔で部屋から出て行った。シュゼットはほっと息をつく。
「あまり迂闊に情報を漏らすものじゃないわよ?」
「ごめんなさい……。僕らって魔女の夜会に――」
リックはまた自分の口を両手でふさいだ。シュゼットににらまれたからだ。
「まぁこの里に本名のまま入ってしまったし、空挺手とフェーレースの組み合わせなんて目立つでしょうから、本気で警戒するなら変装して偽名を使うべきなんでしょうけれど」
「次からそうするの?」
「うーん、でも下手にそういう真似をしていると勘ぐられる危険が――というか、たぶん向こうの聴覚の鋭さを考えると、今も聞かれているでしょうし……」
シュゼットはしばらく考えたあと、
「やっぱりこのまま行きましょうか」
「変装も偽名もなし?」
「クニークルスは争いを好まない。自分からごたごたに巻き込まれるような状況は避けるはずだわ。それにわたしたちが滞在するのは一晩だけよ。すぐに出て行くわけだから、なおのこと関わり合いにならないようにすると思う」
「なんかザルっぽい気が……。シュゼットは魔女の騎士を恐れてないの?」
「少なくとも魔術での戦闘なら勝つ自信はあるわ。向こうと違って、わたしは光石さえあれば無制限に戦い続けられるからね」
魔女は光石なしで魔術を使える――ほかの種族にはない利点だ。
だが、同時に重大な欠点でもある。光石が使えないということは、すなわち自前の魔力を消耗しなければ魔術が使えないことを意味する。
魔女は長期戦に弱い。
強力な魔術を連発したら、あっという間に魔力が枯渇してしまう。対してシュゼットたち人間は、光石さえあれば凶悪無比な魔術を遠慮なく放てるのだ。
しかも人間なら威力の増幅までできる。
「それにリックもいるし、逃げきる自信はそれなりにあるわ」
「あんまり当てにされても……」
「自信を持ちなさい。自分の力に疑念を抱いていると、出せる実力も出せなくなるわ。それにさっきの話を鵜呑みにすれば、リックの移動距離は人間の十倍よ? 向こうはわたしたちの目的地を知らないわけだし、どこへ行ったかなんてわからないはず。加えて、こっちは移動する方向をずらしてもかまわないのだから」
もっと言えば魔女の夜会がどの程度、躍起になっているかも現状では不明のままだ。
リックの話を鵜呑みにすれば、単に重罪人の娘だから追っている、というだけの話になる。正直、本気になって捕らえようとしているとは思えない。
フリーダ・ヴァノにしてもアンフィーサ・フリーダにしても、まだ存命で、大陸中を逃げまわっているはずだからだ。
魔女はもともと数が少ない。実働部隊である魔女の騎士も人手不足と考えられる。
何か知っているかもしれないから――という曖昧な理由だけで、わざわざ貴重な人員を割くとは思えない。
そんなことをするくらいなら、最初から本命であるフリーダ本人やアンフィーサ本人の行方を追うだろう。
なにせロゼールは居場所どころか連絡先すら知らないはずなのだ。
シュゼットは当初、ロゼールがフリーダとアンフィーサの居場所を知っているのではないか、とも考えたのだが、すぐに理窟に合わないと打ち消した。
仮にどこへ行けば会えるのか、連絡すればいいのか――これがわかっているなら、ロゼールが眠った時点でリックは助けを求めていただろう。
魔女の夜会が一番欲しているのは、ふたりの居場所についての情報のはずだ。それを知らないロゼールたちを捕らえたところで、大した成果は得られない。
そして、魔女の夜会がその点について思い至らないとは考えづらいのだ。
そもそも追われた時点で、魔女の夜会は二人がフリーダかアンフィーサのどちらかと接触することを期待していたはずだ。
ところが、実際は二人きりでの逃亡生活を開始している――魔女の夜会の目論見は外れてしまったのだ。
となると、現在も二人を捕らえるべく人員を割いているかは……だいぶ疑問だった。
「ともかく、わたしたちはわたしたちの目的を果たしましょう」
シュゼットは地図を片づけ始めた。
そして、狙いすましたかのようなタイミングで髪の長い女が台車を押しながらやって来た。
「こちらで食べます? それとも地下のお部屋に?」
「朝食はランタンじゃなくて、太陽の光に照らされて食べたいわ」
「じゃ、ここに並べますね」
ベーコンエッグにレタスとミニトマト、ヨーグルト、かぼちゃとたまねぎのポタージュ、それに焼きたてのパン……リックはこの朝食をぺろりと平らげ、さらにイカとキノコとピーマンをバターで炒めたもの、ゆでたソーセージ、アジの塩焼きまで食べていた。
もちろん、パンだけでなくライスも頬張っている。
「今日はがんばってもらうから、できるだけ食べておいたほうがいいわ」
シュゼットは食後のコーヒーを味わいながら言った。リックはオレンジジュースを飲みながらうなずいた。
食事を終えたふたりは荷物をまとめると、挨拶もそこそこにクニークルスの里を出て行った。
髪の長い女が、もう少しゆっくりしていってもいいんですよ? とさみしそうな顔をしていたが、シュゼットは先を急ぐと言って別れの挨拶を交わした。
と扉を開けて、髪の長い女がひょっこり顔を出した。
「聞いてたの?」
「あ、いえ、盗み聞きしてたわけじゃなくて、たまたま――」
「いいわ、別に。クニークルスの聴力ならわたしたちの会話なんて筒抜けでしょうし」
え、えっと……と髪の長い女は困った様子で首をかしげた。
「朝食は、パンとライスとどっちがいいですか? って聞きに来ただけなんですが――それとも両方にします? 昨日はどっちも平らげてましたよね?」
「僕は両方でいいよ」
「わたしはパンだけにしようかしら? 朝はそこまで大食らいじゃないのよ」
「わかりました。じゃ、そうしますね」
「台所に戻る前に、こっちの疑問に答えてほしいわ」
シュゼットがそう言って引き止めると、髪の長い女は微苦笑を浮かべた。
「一般論ですけれど、フェーレースなら一日の移動距離は五〇〇ウィア(四三三キロ)くらいだと思いますよ。一日に疲労せず移動できる距離がそれくらいだと聞いたことがあります。もちろん個人差はあるでしょうけれど」
「人間の足なら十日以上はかかる距離ね……。ちなみにカニスだと?」
「やろうと思えば二五〇〇ウィア(二一六五キロ)は行けるとか。まぁ彼らの場合は一晩中獲物を追い回すことも多いですから、休み無しで一日中ずっと移動し続けられるんです。そりゃ桁違いの移動距離になりますよ」
「え、本当に一晩中……というか一日中ずっと動き回れるの?」
リックは驚いた様子で眉根を寄せた。髪の長い女はほほえんだ。
「やろうと思ったら、飲まず食わずで睡眠もとらずに、ずっと走っていられるんです。一日でも二日でも。だから、もしカニスが長距離を移動しようと思ったら、きっと睡眠と休息を二日に一回にして、あとはずっと走ってるでしょうね。だからこそ圧倒的な移動距離を誇るんですよ」
「二日に一回ってそんなことできるの!?」
「あ! でもでも! 最高速度はそれほどでもないんですよ! フェーレースの最高速はカニスの三倍以上ですからね!」
慌てたように髪の長い女はそう付け加えた。そうなの? と不思議そうに首をかしげるリックを見て、彼女は意外そうな顔をする。
「あれ……? あんまり興味なさそうですね?」
「え? うん……というか、なんで急に最高速度の話になったの?」
「いえ、その――」
髪の長い女は困った顔でシュゼットを見た。
「カニスとフェーレースって、何かと張り合ってるらしいのよ。表立って敵対しているわけではないんだけど、対抗意識はかなり強いと聞くわ」
「なんで?」
「どちらも同じ狩猟民族だからじゃないかしら? 戦い方も正反対だし」
「フェーレースは自分の肉体のみで戦っている感じなんですよねー。武器とかもいっさい使いませんし。防具も身につけないか、動きやすい革鎧くらいで」
髪の長い女の言葉に、シュゼットもうなずいた。
「カニスは逆に重武装なのよね。全身を分厚い金属の甲冑で包んで、ごつい剣やら槍やら振りまわして戦う。フェーレースは単独で戦うことを好み、カニスは集団で戦うことを好む――どう、見事に正反対でしょ?」
シュゼットが笑って問いかけた。リックは目をぱちくりさせる。
「確かにそうみたいだけど――でも、狩りの獲物はかぶってないんだよね?」
「そっちはかぶってないわ。でも変異種……特に呪言種に関してはそうでもないのよ」
シュゼットは人差し指を立てた。
「フェーレースもカニスも、狩りの邪魔になるって理由で、よく変異種退治をしているの。で、呪術を使う変異種――つまり強大な力を持つ呪言種を仕留めたものは、栄誉ある戦士として讃えられるのよ。フェーレースなら豪腕の戦士、カニスなら練達の戦士隊、だったかしら?」
確認するようにシュゼットは髪の長い女を見た。
「はい、そのとおりです。呪言石を持ち帰ったフェーレースやカニスは、どちらもそういうふうに呼ばれて英雄視されますね」
「呪言石?」
「ああ、言ってなかったかしら? 呪言種を倒すと、呪言石っていうのが手に入るのよ」
銀色をした丸い石で、大きさは鶏の卵くらいだ。
特定の言葉を唱えると、呪術を使用できる。効果は仕留めた呪言種と同じものだ。迂闊に濫用するとすぐに壊れてしまうので、たいていの場合は大切に保管される。
フェーレースやカニスは頑丈な宝物庫を作って、後生大事にしまい込んでいるという。
「そんなのがあるんだ。じゃあ、ひょっとしてロゼールを眠らせた――」
言いかけてから、リックは慌てて自分の口を両手でふさいだ。シュゼットににらまれたからだ。
「ロゼール?」
と髪の長い女は首をかしげた。
「なんでもないわ。ところで朝食はまだかしら?」
髪の長い女は微笑を浮かべた。
「誰にでも、話したくないことはありますからね。朝食は少々お待ちください」
彼女は笑顔で部屋から出て行った。シュゼットはほっと息をつく。
「あまり迂闊に情報を漏らすものじゃないわよ?」
「ごめんなさい……。僕らって魔女の夜会に――」
リックはまた自分の口を両手でふさいだ。シュゼットににらまれたからだ。
「まぁこの里に本名のまま入ってしまったし、空挺手とフェーレースの組み合わせなんて目立つでしょうから、本気で警戒するなら変装して偽名を使うべきなんでしょうけれど」
「次からそうするの?」
「うーん、でも下手にそういう真似をしていると勘ぐられる危険が――というか、たぶん向こうの聴覚の鋭さを考えると、今も聞かれているでしょうし……」
シュゼットはしばらく考えたあと、
「やっぱりこのまま行きましょうか」
「変装も偽名もなし?」
「クニークルスは争いを好まない。自分からごたごたに巻き込まれるような状況は避けるはずだわ。それにわたしたちが滞在するのは一晩だけよ。すぐに出て行くわけだから、なおのこと関わり合いにならないようにすると思う」
「なんかザルっぽい気が……。シュゼットは魔女の騎士を恐れてないの?」
「少なくとも魔術での戦闘なら勝つ自信はあるわ。向こうと違って、わたしは光石さえあれば無制限に戦い続けられるからね」
魔女は光石なしで魔術を使える――ほかの種族にはない利点だ。
だが、同時に重大な欠点でもある。光石が使えないということは、すなわち自前の魔力を消耗しなければ魔術が使えないことを意味する。
魔女は長期戦に弱い。
強力な魔術を連発したら、あっという間に魔力が枯渇してしまう。対してシュゼットたち人間は、光石さえあれば凶悪無比な魔術を遠慮なく放てるのだ。
しかも人間なら威力の増幅までできる。
「それにリックもいるし、逃げきる自信はそれなりにあるわ」
「あんまり当てにされても……」
「自信を持ちなさい。自分の力に疑念を抱いていると、出せる実力も出せなくなるわ。それにさっきの話を鵜呑みにすれば、リックの移動距離は人間の十倍よ? 向こうはわたしたちの目的地を知らないわけだし、どこへ行ったかなんてわからないはず。加えて、こっちは移動する方向をずらしてもかまわないのだから」
もっと言えば魔女の夜会がどの程度、躍起になっているかも現状では不明のままだ。
リックの話を鵜呑みにすれば、単に重罪人の娘だから追っている、というだけの話になる。正直、本気になって捕らえようとしているとは思えない。
フリーダ・ヴァノにしてもアンフィーサ・フリーダにしても、まだ存命で、大陸中を逃げまわっているはずだからだ。
魔女はもともと数が少ない。実働部隊である魔女の騎士も人手不足と考えられる。
何か知っているかもしれないから――という曖昧な理由だけで、わざわざ貴重な人員を割くとは思えない。
そんなことをするくらいなら、最初から本命であるフリーダ本人やアンフィーサ本人の行方を追うだろう。
なにせロゼールは居場所どころか連絡先すら知らないはずなのだ。
シュゼットは当初、ロゼールがフリーダとアンフィーサの居場所を知っているのではないか、とも考えたのだが、すぐに理窟に合わないと打ち消した。
仮にどこへ行けば会えるのか、連絡すればいいのか――これがわかっているなら、ロゼールが眠った時点でリックは助けを求めていただろう。
魔女の夜会が一番欲しているのは、ふたりの居場所についての情報のはずだ。それを知らないロゼールたちを捕らえたところで、大した成果は得られない。
そして、魔女の夜会がその点について思い至らないとは考えづらいのだ。
そもそも追われた時点で、魔女の夜会は二人がフリーダかアンフィーサのどちらかと接触することを期待していたはずだ。
ところが、実際は二人きりでの逃亡生活を開始している――魔女の夜会の目論見は外れてしまったのだ。
となると、現在も二人を捕らえるべく人員を割いているかは……だいぶ疑問だった。
「ともかく、わたしたちはわたしたちの目的を果たしましょう」
シュゼットは地図を片づけ始めた。
そして、狙いすましたかのようなタイミングで髪の長い女が台車を押しながらやって来た。
「こちらで食べます? それとも地下のお部屋に?」
「朝食はランタンじゃなくて、太陽の光に照らされて食べたいわ」
「じゃ、ここに並べますね」
ベーコンエッグにレタスとミニトマト、ヨーグルト、かぼちゃとたまねぎのポタージュ、それに焼きたてのパン……リックはこの朝食をぺろりと平らげ、さらにイカとキノコとピーマンをバターで炒めたもの、ゆでたソーセージ、アジの塩焼きまで食べていた。
もちろん、パンだけでなくライスも頬張っている。
「今日はがんばってもらうから、できるだけ食べておいたほうがいいわ」
シュゼットは食後のコーヒーを味わいながら言った。リックはオレンジジュースを飲みながらうなずいた。
食事を終えたふたりは荷物をまとめると、挨拶もそこそこにクニークルスの里を出て行った。
髪の長い女が、もう少しゆっくりしていってもいいんですよ? とさみしそうな顔をしていたが、シュゼットは先を急ぐと言って別れの挨拶を交わした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる