7 / 36
少年期
7 新訓練です
しおりを挟む
楽しい買い物の次の日。訓練場に着くと師匠に言われた。
「おいレミー。おまえ一日も休まず訓練してたって本当か?」
「何言ってるんですか?休んでたじゃないですか。丸一日とか、下手したら三日間も眠ったりしてましたし」
「自分で買い物に行ったり、遊びに行ったりは?」
「うーん……師匠にご飯を食べに連れて行ってもらった以外は、昨日レベッカ達に連れて行ってもらったくらいですかね?」
「おいおい……」
師匠は呆れているが、生粋のインドア派をなめないでいただきたい。家にいたい気持ちなら、どっちでもいい派のレミーが外出しようという気持ちに負けるはずがない。お世話になった孤児院には余裕ができた頃から訓練の帰りに寄ったりしている。
もらった休みの日はだらだらしたり、実は読書家のミーニャに借りた本を読んだりして過ごしていたのだ。ごはんは調理場で自分のご飯を作る隊員から貰うのだ。必要も無いのに外出なんてしてたまるものか。
「おまえ、それでも人間か?」
「そこまで言いますか……」
「あのなあ。俺はちゃんと休みをやってるのにレベッカに怒られたんだぞ?『レミー君にもっと休みをあげなさいよ!』とか言われたんだぞ?むしろ私服の一つも買いに行かないとか思わないだろ」
「ええー。支給の分で十分じゃないですか。大体、最強の傭兵ともあろう方がどうして年下の部下に負けてるんですか」
「おまえはまだガキだから分からないんだ。戦う力を持った女がどれほど恐ろしいか……」
……まあ確かに心配させるような言動だったことは反省したいといけないな。
「ま、まあ、今度遊びに行く約束をしているので、その時に誤解を解いておきますよ」
「そうしてくれ……」
おお……師匠がここまで弱っているのを見るのは初めてだ。レベッカには逆らわないようにしておかないとな。
「まあいい。訓練に戻るが、おまえもそろそろ訓練に慣れてきたことだろう」
「まあ、はじめに比べれば」
「そこでだ。そろそろ武器を使っての訓練に移ろうと思うが、武器の種類に希望はあるか?」
来た。
そう思ったのは仕方の無いことだと思う。
私だって何の疑問も持たずに訓練をしていたわけではない。
格闘訓練が始まった当初、「私は格闘家になりたいわけではないんですけど!?」と反駁したが「武器を使う前に体の使い方を覚えろ」と即答されたのだった。
武器の訓練が始まるということは、体の使い方を覚えたというお墨付きをもらったと解釈した。
「そうですね……何が自分に合うのか分からないので何ともいえません。ああでも、遠、中、近それぞれの武器が使えるようになりたいです」
私が“レミー”に持っているイメージは『完璧なイケメン』だが、正直彼女はゲーム内で細かい設定まで語られなかった。
銃は使っていたが、他の武器も使えるようになっておきたい。
「分かった。ちょっと来い」
師匠が訓練場の倉庫で選んだのは拳銃と槍、鞭、そして二振りのナイフだった。槍とナイフは模造品だ。
銃に関しては、この世界には火薬がないので魔力が使用される。省魔力の実弾タイプがメジャーだが、うちの傭兵団で使うのは魔力を直接撃ち出すこともできる新型だ。
武器の訓練は銃から始まった。
「銃のメリットは分かるか?」
「消費する魔力が少なくてすむこと、誰でも使えること、命中精度が高いことです」
「そうだ。それに加えて速射性、連射性が高いこともある」
師匠は目の前にあった拳銃を手に取ると、流れるように的を打ち抜いた。
「魔法に比べたら自由度は低いが、それでも有効な武器であることに変わりはない。とりあえず慣れろ。撃っていたらそのうち上手くなる」
そしてある程度使い方を教えてもらうと、その日のうちに使えるようにはなった。命中精度を上げる練習は個人的にすることになるだろう。
「おいレミー。おまえ一日も休まず訓練してたって本当か?」
「何言ってるんですか?休んでたじゃないですか。丸一日とか、下手したら三日間も眠ったりしてましたし」
「自分で買い物に行ったり、遊びに行ったりは?」
「うーん……師匠にご飯を食べに連れて行ってもらった以外は、昨日レベッカ達に連れて行ってもらったくらいですかね?」
「おいおい……」
師匠は呆れているが、生粋のインドア派をなめないでいただきたい。家にいたい気持ちなら、どっちでもいい派のレミーが外出しようという気持ちに負けるはずがない。お世話になった孤児院には余裕ができた頃から訓練の帰りに寄ったりしている。
もらった休みの日はだらだらしたり、実は読書家のミーニャに借りた本を読んだりして過ごしていたのだ。ごはんは調理場で自分のご飯を作る隊員から貰うのだ。必要も無いのに外出なんてしてたまるものか。
「おまえ、それでも人間か?」
「そこまで言いますか……」
「あのなあ。俺はちゃんと休みをやってるのにレベッカに怒られたんだぞ?『レミー君にもっと休みをあげなさいよ!』とか言われたんだぞ?むしろ私服の一つも買いに行かないとか思わないだろ」
「ええー。支給の分で十分じゃないですか。大体、最強の傭兵ともあろう方がどうして年下の部下に負けてるんですか」
「おまえはまだガキだから分からないんだ。戦う力を持った女がどれほど恐ろしいか……」
……まあ確かに心配させるような言動だったことは反省したいといけないな。
「ま、まあ、今度遊びに行く約束をしているので、その時に誤解を解いておきますよ」
「そうしてくれ……」
おお……師匠がここまで弱っているのを見るのは初めてだ。レベッカには逆らわないようにしておかないとな。
「まあいい。訓練に戻るが、おまえもそろそろ訓練に慣れてきたことだろう」
「まあ、はじめに比べれば」
「そこでだ。そろそろ武器を使っての訓練に移ろうと思うが、武器の種類に希望はあるか?」
来た。
そう思ったのは仕方の無いことだと思う。
私だって何の疑問も持たずに訓練をしていたわけではない。
格闘訓練が始まった当初、「私は格闘家になりたいわけではないんですけど!?」と反駁したが「武器を使う前に体の使い方を覚えろ」と即答されたのだった。
武器の訓練が始まるということは、体の使い方を覚えたというお墨付きをもらったと解釈した。
「そうですね……何が自分に合うのか分からないので何ともいえません。ああでも、遠、中、近それぞれの武器が使えるようになりたいです」
私が“レミー”に持っているイメージは『完璧なイケメン』だが、正直彼女はゲーム内で細かい設定まで語られなかった。
銃は使っていたが、他の武器も使えるようになっておきたい。
「分かった。ちょっと来い」
師匠が訓練場の倉庫で選んだのは拳銃と槍、鞭、そして二振りのナイフだった。槍とナイフは模造品だ。
銃に関しては、この世界には火薬がないので魔力が使用される。省魔力の実弾タイプがメジャーだが、うちの傭兵団で使うのは魔力を直接撃ち出すこともできる新型だ。
武器の訓練は銃から始まった。
「銃のメリットは分かるか?」
「消費する魔力が少なくてすむこと、誰でも使えること、命中精度が高いことです」
「そうだ。それに加えて速射性、連射性が高いこともある」
師匠は目の前にあった拳銃を手に取ると、流れるように的を打ち抜いた。
「魔法に比べたら自由度は低いが、それでも有効な武器であることに変わりはない。とりあえず慣れろ。撃っていたらそのうち上手くなる」
そしてある程度使い方を教えてもらうと、その日のうちに使えるようにはなった。命中精度を上げる練習は個人的にすることになるだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる