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国軍尉官期
10 面会です
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国軍本部。
国軍四隊の本局に四方を囲まれるようにして建つその建物内を、私とアリアは並んで歩いていた。
「ずっと思っていたけど、この世界の生活って快適よね」
「確かに。まあ、魔法がありますからね」
この世界の文化は魔法に依存している。
火薬や電気回路どころか科学の概念すらないのに、魔法という謎の技術が文明レベルを底上げしているのだ。
CPUやそれを含めた基盤の代わりに魔方陣で道具を制御して、電池の代わりに魔石を、電源の代わりに人の持つエネルギーを使ってそれらを動かす。
そのせいか、(というよりはゲームの設定がそうだからだろうけど)建物はほぼ木や石しか使っていないのに対して、利便性は現代日本にも匹敵するほどだった。
「さて、着きましたよ」
指定された応接間の前で立ち止まり、アリアに声を掛けてから、その扉をノックする。
「赤獅子隊所属大尉、レミーであります。面会希望のアリア・ドメージュ様をお連れしました」
「ご苦労。入室を許可する」
返事があって中に入ると、そこにはロペス大将と1人の少将の他に政務官と、なぜか国主のアーロンまでいた。
慌てて膝をつき頭を下げようとしたが、アーロンに速攻で止められた。
「公式の場ではないし、礼はよい」
「失礼しました。それでは紹介から入りましょう。こちらが華ノ国のご令嬢、アリア様です」
「ご紹介にあずかりました、アリア・ドメージュと申します。最強と名高いアーロン様のお目にかかれて光栄ですわ」
アリアが挨拶をすると、アーロンは頷き、着席を促す。
アリアがアーロンの向かいに座り、私はアリアの斜め後ろに立った。
「さて、俺の面会要請が来たのがこいつと話してた時だったんだが、こいつにも同じ要請があったと聞いてな。お互い忙しいし、まとめて会ってしまおうかと、俺から提案したわけだが、何か不都合はあるか?」
面白がるような表情の裏で、油断なくこちらを見据えるアーロン。
彼は時々こういう『気まぐれを装った特攻』をすることで、多くの謀反人の企みを潰している。
脳筋国家の国主をしているくせに、食えないやつなのだ。
とはいえ、今回に限ってはありがたいことでもあったのだが。
「いいえ。むしろお目にかかるのにもっと時間が掛かるかと思っていたので、ありがたいことですわ」
「ほう?急ぎの用だったのか?」
アリアが本気で嬉しそうに言い、アーロンは先を促した。
「そうお思いになってよろしいかと。緊急ではありませんが、早い方が良いことですもの」
「詳しく聞こうか」
「ええ、そのつもりで来ましたのよ」
アリアが華ノ国にいた頃から、国内外で“聖女”や“戦乙女”の召喚の動きがあったこと。
それに合わせて華ノ国の一部の貴族が不審な動きを始めたこと。その全てを事前に止めることが難しいこと。
そして、戦争の予兆があること。
彼女は情報源、主に『ホリヴァル』についてはぼかしたり、上手く言い換えたりして説明していた。
「戦争が起こるのか?」
「可能性が高いとだけ言っておきますわ」
それを聞いたアーロンは、少し考えるそぶりを見せて、アリアに聞いた。
「それで、アリア殿は俺に何を望む?」
国軍四隊の本局に四方を囲まれるようにして建つその建物内を、私とアリアは並んで歩いていた。
「ずっと思っていたけど、この世界の生活って快適よね」
「確かに。まあ、魔法がありますからね」
この世界の文化は魔法に依存している。
火薬や電気回路どころか科学の概念すらないのに、魔法という謎の技術が文明レベルを底上げしているのだ。
CPUやそれを含めた基盤の代わりに魔方陣で道具を制御して、電池の代わりに魔石を、電源の代わりに人の持つエネルギーを使ってそれらを動かす。
そのせいか、(というよりはゲームの設定がそうだからだろうけど)建物はほぼ木や石しか使っていないのに対して、利便性は現代日本にも匹敵するほどだった。
「さて、着きましたよ」
指定された応接間の前で立ち止まり、アリアに声を掛けてから、その扉をノックする。
「赤獅子隊所属大尉、レミーであります。面会希望のアリア・ドメージュ様をお連れしました」
「ご苦労。入室を許可する」
返事があって中に入ると、そこにはロペス大将と1人の少将の他に政務官と、なぜか国主のアーロンまでいた。
慌てて膝をつき頭を下げようとしたが、アーロンに速攻で止められた。
「公式の場ではないし、礼はよい」
「失礼しました。それでは紹介から入りましょう。こちらが華ノ国のご令嬢、アリア様です」
「ご紹介にあずかりました、アリア・ドメージュと申します。最強と名高いアーロン様のお目にかかれて光栄ですわ」
アリアが挨拶をすると、アーロンは頷き、着席を促す。
アリアがアーロンの向かいに座り、私はアリアの斜め後ろに立った。
「さて、俺の面会要請が来たのがこいつと話してた時だったんだが、こいつにも同じ要請があったと聞いてな。お互い忙しいし、まとめて会ってしまおうかと、俺から提案したわけだが、何か不都合はあるか?」
面白がるような表情の裏で、油断なくこちらを見据えるアーロン。
彼は時々こういう『気まぐれを装った特攻』をすることで、多くの謀反人の企みを潰している。
脳筋国家の国主をしているくせに、食えないやつなのだ。
とはいえ、今回に限ってはありがたいことでもあったのだが。
「いいえ。むしろお目にかかるのにもっと時間が掛かるかと思っていたので、ありがたいことですわ」
「ほう?急ぎの用だったのか?」
アリアが本気で嬉しそうに言い、アーロンは先を促した。
「そうお思いになってよろしいかと。緊急ではありませんが、早い方が良いことですもの」
「詳しく聞こうか」
「ええ、そのつもりで来ましたのよ」
アリアが華ノ国にいた頃から、国内外で“聖女”や“戦乙女”の召喚の動きがあったこと。
それに合わせて華ノ国の一部の貴族が不審な動きを始めたこと。その全てを事前に止めることが難しいこと。
そして、戦争の予兆があること。
彼女は情報源、主に『ホリヴァル』についてはぼかしたり、上手く言い換えたりして説明していた。
「戦争が起こるのか?」
「可能性が高いとだけ言っておきますわ」
それを聞いたアーロンは、少し考えるそぶりを見せて、アリアに聞いた。
「それで、アリア殿は俺に何を望む?」
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