こんなサポキャラはいかがですか?

紫野

文字の大きさ
19 / 36
国軍尉官期

10 面会です

しおりを挟む
 国軍本部。
 国軍四隊の本局に四方を囲まれるようにして建つその建物内を、私とアリアは並んで歩いていた。


「ずっと思っていたけど、この世界の生活って快適よね」
「確かに。まあ、魔法がありますからね」

 この世界の文化は魔法に依存している。
 火薬や電気回路どころか科学の概念すらないのに、魔法という謎の技術が文明レベルを底上げしているのだ。
 CPUやそれを含めた基盤の代わりに魔方陣で道具を制御して、電池の代わりに魔石を、電源の代わりに人の持つエネルギーを使ってそれらを動かす。

 そのせいか、(というよりはゲームの設定がそうだからだろうけど)建物はほぼ木や石しか使っていないのに対して、利便性は現代日本にも匹敵するほどだった。


「さて、着きましたよ」

 指定された応接間の前で立ち止まり、アリアに声を掛けてから、その扉をノックする。

「赤獅子隊所属大尉、レミーであります。面会希望のアリア・ドメージュ様をお連れしました」
「ご苦労。入室を許可する」

 返事があって中に入ると、そこにはロペス大将と1人の少将の他に政務官と、なぜか国主のアーロンまでいた。
 慌てて膝をつき頭を下げようとしたが、アーロンに速攻で止められた。

「公式の場ではないし、礼はよい」
「失礼しました。それでは紹介から入りましょう。こちらが華ノ国のご令嬢、アリア様です」
「ご紹介にあずかりました、アリア・ドメージュと申します。最強と名高いアーロン様のお目にかかれて光栄ですわ」

 アリアが挨拶をすると、アーロンは頷き、着席を促す。
 アリアがアーロンの向かいに座り、私はアリアの斜め後ろに立った。

「さて、俺の面会要請が来たのがこいつと話してた時だったんだが、こいつにも同じ要請があったと聞いてな。お互い忙しいし、まとめて会ってしまおうかと、俺から提案したわけだが、何か不都合はあるか?」

 面白がるような表情の裏で、油断なくこちらを見据えるアーロン。
 彼は時々こういう『気まぐれを装った特攻』をすることで、多くの謀反人の企みを潰している。
 脳筋国家の国主をしているくせに、食えないやつなのだ。

 とはいえ、今回に限ってはありがたいことでもあったのだが。

「いいえ。むしろお目にかかるのにもっと時間が掛かるかと思っていたので、ありがたいことですわ」
「ほう?急ぎの用だったのか?」

 アリアが本気で嬉しそうに言い、アーロンは先を促した。

「そうお思いになってよろしいかと。緊急ではありませんが、早い方が良いことですもの」
「詳しく聞こうか」
「ええ、そのつもりで来ましたのよ」


 アリアが華ノ国にいた頃から、国内外で“聖女”や“戦乙女”の召喚の動きがあったこと。
 それに合わせて華ノ国の一部の貴族が不審な動きを始めたこと。その全てを事前に止めることが難しいこと。
 そして、戦争の予兆があること。

 彼女は情報源、主に『ホリヴァル』についてはぼかしたり、上手く言い換えたりして説明していた。


「戦争が起こるのか?」
「可能性が高いとだけ言っておきますわ」

 それを聞いたアーロンは、少し考えるそぶりを見せて、アリアに聞いた。

「それで、アリア殿は俺に何を望む?」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

処理中です...