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国軍少佐期
8 衝突です
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「バッカじゃないの?私は現実にいると分かっているから、ゲームが始まる前に攻略をしたんだよ。横取りできると思ってるあんたの方がお花畑じゃん」
アカネは鼻で笑うと、しっしっと手を払うような仕草をした。
「そっちこそ、現実が分かったならさっさと帰ってよね。イズナ様はあんたなんかとは会わないんだから」
「アカネ。それを決めるのは主様だ。おまえじゃない」
アカネが言い終わるか終わらないかくらいで、トウヤが彼女を止めた。
それから申し訳なさそうに私たちに向き直る。
「悪いな。普段はこんなに好戦的なやつじゃないんだが……」
「いいえ。こちらこそ言い方が悪かったわ」
「詳しいことは分からんが、あんた達のことは俺から主様に伝えておくよ。後日連絡が行くだろうからそれまで待て。ほら、任務に戻るぞ」
「はぁい」
トウヤの言葉には素直に従い、離れていこうとするアカネに、アリアが声をかけた。
「あなたもしかして、『戦乙女が召喚されなければ何の問題も無い』なんて思ってないわよね?」
その言葉に、アカネは苛ついた様子で振り返る。
「事実じゃん。まさか、『あなたの思い通りにはならない』とでも言いたいわけ?」
「そうね。『言いたい』ではなく、それが本当のことだという違いはあるのだけれど」
「何が言いたいわけ?」
「ずっと言っているじゃない。現実を知りなさいって。信じないなら『聖女の召喚なんかやめて!』ってお願いしてみなさいな」
「言われなくてもするわよ!ほんと、わけ分かんない!」
そう叫んで、肩を怒らせたアカネは去って行ったのだった。
宿に戻ると、ユナが布団に飛び込んですぐに不満の声を上げた。
「“アカネ”が可愛くなかった!」
「そうね」
「そこまで悪い子には見えなかったけど、ゲームを知ってるとそのイメージが強くなるからね……」
否定されなかったことで勢いづいたユナは枕を抱えて顔を上げる。
「でしょ!? “アカネ”は無口だけど素直で優しくて、“レミー”と同じくらい好きなキャラだったのに!」
「多分、彼女の元の性格が“アカネ”とは合わなかったんだと思うよ」
「それ以前に、自分を主人公だと勘違いしている節があるわね」
バカらしい、と呆れたように言ったアリアは、背の低いソファに身を沈めた。
「あの子、ご都合主義のラノベと同じことを自分の力で起こせるとでも思っているのでしょう」
「そうだよ! 明らかに避けられてるのに、都合良く解釈しちゃってさ!」
「まあ実際、ある程度のことは思い通りにできるだけのポテンシャルは持っているはずだからね」
『ホリヴァル』はサポーターの能力にも国による特色があるのだ。
華ノ国のアリアは、身分と人脈が大きな武器である。優秀な人材と、それを使うだけの頭脳を持った彼女の情報収集力は4人のサポーターの中で一番だ。
反対に、地ノ国のユナは個人としての戦闘能力が一番の強みだ。この世界で褐色の肌を持つ人間は、魔法が苦手な代わりに非常に高い身体能力を持つ。
豪ノ国のレミーは、万能という名の器用貧乏だと思う。大抵のことは平均以上にできるが、情報収集力ではアリアに、戦闘能力ではユナに負ける。しかし、バランスが良いので扱いやすくはあるのだ。
そして和ノ国のアカネは魔法の天才である。
技術を魔法に頼っているこの世界で、魔法に秀でているというのはほとんどチートだと言ってもいい。その分、コミュ障設定で選択が難しくなっているわけだが。
ゲームキャラなだけあって、なかなかの美人。さらには魔法の天才。
そんな存在に生まれ変わったと思ったら、調子に乗ったとしてもおかしくはないんだよなあ……。
アカネは鼻で笑うと、しっしっと手を払うような仕草をした。
「そっちこそ、現実が分かったならさっさと帰ってよね。イズナ様はあんたなんかとは会わないんだから」
「アカネ。それを決めるのは主様だ。おまえじゃない」
アカネが言い終わるか終わらないかくらいで、トウヤが彼女を止めた。
それから申し訳なさそうに私たちに向き直る。
「悪いな。普段はこんなに好戦的なやつじゃないんだが……」
「いいえ。こちらこそ言い方が悪かったわ」
「詳しいことは分からんが、あんた達のことは俺から主様に伝えておくよ。後日連絡が行くだろうからそれまで待て。ほら、任務に戻るぞ」
「はぁい」
トウヤの言葉には素直に従い、離れていこうとするアカネに、アリアが声をかけた。
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その言葉に、アカネは苛ついた様子で振り返る。
「事実じゃん。まさか、『あなたの思い通りにはならない』とでも言いたいわけ?」
「そうね。『言いたい』ではなく、それが本当のことだという違いはあるのだけれど」
「何が言いたいわけ?」
「ずっと言っているじゃない。現実を知りなさいって。信じないなら『聖女の召喚なんかやめて!』ってお願いしてみなさいな」
「言われなくてもするわよ!ほんと、わけ分かんない!」
そう叫んで、肩を怒らせたアカネは去って行ったのだった。
宿に戻ると、ユナが布団に飛び込んですぐに不満の声を上げた。
「“アカネ”が可愛くなかった!」
「そうね」
「そこまで悪い子には見えなかったけど、ゲームを知ってるとそのイメージが強くなるからね……」
否定されなかったことで勢いづいたユナは枕を抱えて顔を上げる。
「でしょ!? “アカネ”は無口だけど素直で優しくて、“レミー”と同じくらい好きなキャラだったのに!」
「多分、彼女の元の性格が“アカネ”とは合わなかったんだと思うよ」
「それ以前に、自分を主人公だと勘違いしている節があるわね」
バカらしい、と呆れたように言ったアリアは、背の低いソファに身を沈めた。
「あの子、ご都合主義のラノベと同じことを自分の力で起こせるとでも思っているのでしょう」
「そうだよ! 明らかに避けられてるのに、都合良く解釈しちゃってさ!」
「まあ実際、ある程度のことは思い通りにできるだけのポテンシャルは持っているはずだからね」
『ホリヴァル』はサポーターの能力にも国による特色があるのだ。
華ノ国のアリアは、身分と人脈が大きな武器である。優秀な人材と、それを使うだけの頭脳を持った彼女の情報収集力は4人のサポーターの中で一番だ。
反対に、地ノ国のユナは個人としての戦闘能力が一番の強みだ。この世界で褐色の肌を持つ人間は、魔法が苦手な代わりに非常に高い身体能力を持つ。
豪ノ国のレミーは、万能という名の器用貧乏だと思う。大抵のことは平均以上にできるが、情報収集力ではアリアに、戦闘能力ではユナに負ける。しかし、バランスが良いので扱いやすくはあるのだ。
そして和ノ国のアカネは魔法の天才である。
技術を魔法に頼っているこの世界で、魔法に秀でているというのはほとんどチートだと言ってもいい。その分、コミュ障設定で選択が難しくなっているわけだが。
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