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国軍少佐期
7 対面です
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和ノ国は、至る所に観光地がある。
華ノ国も同じだが、土地を細かく分けた、貴族による領地制であるために、収入源として観光に力を入れる土地も多いのだ。
和ノ国に来る人々は地ノ国とは異なり、馬車でゆっくりと観光する者が多かった。
「ああ、何ということかしら!煮物に味噌汁、白いごはん。団子にせんべいに……ああ、和菓子もこんなに……!」
「うん、和食って時々恋しくなるんだよね!」
「アリアもユナも、はしゃぎすぎてはぐれないようにね」
もちろん私たちも例外ではなく、近代的でおいしい和食を堪能しながら、ゆっくりと首都に向かっていた。
急ぐ必要など無い。アカネのことはこれまで放っていたわけだし、今更少し遅くなったくらいでどうこうなることはないのだから。
そんなこんなで、観光地の一つである温泉街で羽を休めていたのだが……
「こんにちは。“アリア”に“ユナ”に“レミー”。私に会いに来たんでしょう? 3人の中で誰が転生者なのかしら?」
そう言いながら、首都にいるはずのアカネが現れた。
ユナといいアリアといい、どうして首都に着く前に会うのだろうか?
敵意が滲んだ彼女の態度を見て、私とユナがアリアをかばうような位置に動く。
するとアカネは目を細めて自信たっぷりに言った。
「なるほど。アリアがそうなんだね。でも残念。うちのキャラは攻略済みだから、横取りなんてできないよ」
見当外れの発言に、アリアは呆れと同情が入り混じったような顔をした。おそらく、私も同じような顔になっていることだろう。
ちなみにユナは私同様、表向きはアリアの護衛としてここに来ている。事前に「指示があるまで話さない」という約束をしているので黙っているが、ゲームとは違うアカネの様子には目に見えて落胆していた。
「“イズナ皇子”は頭の良い人だから、先に攻略してしまえばざまぁなんてあり得ないしね」
「報告通りのお花畑ね」
「なに?負け惜しみ?」
どや顔で話していたアカネだったが、アリアの言葉を聞くと表情を険しくする。
続けて何かを言おうとしたアカネが口を開いたところで、別の声が響いた。
「おいアカネ。任務から離れすぎだぞ」
そう言って現れたのは、濃紺の髪を短く切りそろえた、15歳くらいの快活そうな男の子だった。
「あっ、トウヤ君!もしかして、私のことが心配できてくれたの?」
「んなわけねえだろ」
「ふふっ、言わなくても分かってるわ。心配してきてくれたんでしょう?」
「いや、命令……」
台詞だけなら、素直系女子とツンデレ男子がいちゃいちゃしているように聞こえなくもない。実際、攻略対象としての“トウヤ”はツンデレの傾向がある。
しかし今は完全に、しつこい女子と嫌がる男子の図であった。
触れることすら避けられてるのに、よくもまあ諦めずにアタックできるものだ。
「それで?あんたたちはこいつと知り合いなのか?」
彼女から逃げたかったのだろう。トウヤはアカネと話していた私たちに水を向けた。
それに答えたのはアリアだった。
「いいえ。でも、こちらは彼女のことを知っているわ。わたくし達は、アカネに現実を教えるために来たんですもの」
華ノ国も同じだが、土地を細かく分けた、貴族による領地制であるために、収入源として観光に力を入れる土地も多いのだ。
和ノ国に来る人々は地ノ国とは異なり、馬車でゆっくりと観光する者が多かった。
「ああ、何ということかしら!煮物に味噌汁、白いごはん。団子にせんべいに……ああ、和菓子もこんなに……!」
「うん、和食って時々恋しくなるんだよね!」
「アリアもユナも、はしゃぎすぎてはぐれないようにね」
もちろん私たちも例外ではなく、近代的でおいしい和食を堪能しながら、ゆっくりと首都に向かっていた。
急ぐ必要など無い。アカネのことはこれまで放っていたわけだし、今更少し遅くなったくらいでどうこうなることはないのだから。
そんなこんなで、観光地の一つである温泉街で羽を休めていたのだが……
「こんにちは。“アリア”に“ユナ”に“レミー”。私に会いに来たんでしょう? 3人の中で誰が転生者なのかしら?」
そう言いながら、首都にいるはずのアカネが現れた。
ユナといいアリアといい、どうして首都に着く前に会うのだろうか?
敵意が滲んだ彼女の態度を見て、私とユナがアリアをかばうような位置に動く。
するとアカネは目を細めて自信たっぷりに言った。
「なるほど。アリアがそうなんだね。でも残念。うちのキャラは攻略済みだから、横取りなんてできないよ」
見当外れの発言に、アリアは呆れと同情が入り混じったような顔をした。おそらく、私も同じような顔になっていることだろう。
ちなみにユナは私同様、表向きはアリアの護衛としてここに来ている。事前に「指示があるまで話さない」という約束をしているので黙っているが、ゲームとは違うアカネの様子には目に見えて落胆していた。
「“イズナ皇子”は頭の良い人だから、先に攻略してしまえばざまぁなんてあり得ないしね」
「報告通りのお花畑ね」
「なに?負け惜しみ?」
どや顔で話していたアカネだったが、アリアの言葉を聞くと表情を険しくする。
続けて何かを言おうとしたアカネが口を開いたところで、別の声が響いた。
「おいアカネ。任務から離れすぎだぞ」
そう言って現れたのは、濃紺の髪を短く切りそろえた、15歳くらいの快活そうな男の子だった。
「あっ、トウヤ君!もしかして、私のことが心配できてくれたの?」
「んなわけねえだろ」
「ふふっ、言わなくても分かってるわ。心配してきてくれたんでしょう?」
「いや、命令……」
台詞だけなら、素直系女子とツンデレ男子がいちゃいちゃしているように聞こえなくもない。実際、攻略対象としての“トウヤ”はツンデレの傾向がある。
しかし今は完全に、しつこい女子と嫌がる男子の図であった。
触れることすら避けられてるのに、よくもまあ諦めずにアタックできるものだ。
「それで?あんたたちはこいつと知り合いなのか?」
彼女から逃げたかったのだろう。トウヤはアカネと話していた私たちに水を向けた。
それに答えたのはアリアだった。
「いいえ。でも、こちらは彼女のことを知っているわ。わたくし達は、アカネに現実を教えるために来たんですもの」
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