元・宿屋の娘は美人冒険者の恋路を応援したい

紫野

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宿屋の娘は美男美女に付き合ってほしい

12 優しい世界(笑)

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「まあ、でもある程度は大丈夫だと思いますよ」

 回復魔法使いの希少性について理解した上で、言っておく。

「体術も多少は使えますし、結界魔法もあります。この町の冒険者さんの多くと知り合いなので、変な勧誘はそこまでないでしょうし、何より、このパーティーからメンバーを奪おうとする人ってそうはいないと思いますよ?」

 パーティーメンバーは、すでに伝説扱いの冒険者リリーに、実力は折り紙付きのテオフィルスとラスター。全員上位冒険者だ。
 そこらの二流冒険者の集まりとは話が違う。
 むしろ、私の方が場違いじゃないだろうか。

「ですから、パーティーの話をしましょうよ!」
「そうね。大事なマリアちゃんを奪うなんて、私がさせないわ!」

 リリーさんがぎゅっと私を抱きしめた。なんだろう、私とは明らかにサイズが違うんだなと実感しました。羨ましいな。
 というか、パーティーの話をしましょうよ!



「──と、いう感じで、はじめはマリアちゃんが戦闘に慣れるまで近場での仕事になるけど、その後はどうする?この町を拠点にする?旅に出る?」

 はじめはパーティーの方針から話し合う。パーティー内の決め事、個人で受ける仕事、収入についてなど、決めることはたくさんあった。
 パーティーの目的は、より安定した仕事ができるように固定メンバーで仕事をするということが多いが、このパーティーについては未熟な私のために手伝ってもらうようなものだ。

 正直なところ、はじめは旅に出たいと思っていたが、長くこの町で冒険者をしている二人を簡単に連れ出すのもためらわれた。


「行ってこい」

 私が悩んでいると、後ろから声を掛けられた。父さんの声だ。

「でも、いいの?」

 振り返ると、父さんだけでなく、母さんもいた。母さんは亜麻色の髪をふわりと揺らして、楽しそうに微笑む。

「旅は良いわよー。色んな知らないものが見れて、きれいなものを見て、びっくりするようなことに出会って、学ぶことがたくさんあるの!」
「子は冒険をして成長する。いろいろな経験をして、成長してこい」
「そして時々、顔を見せに帰ってきてね」

 二人は送り出す気満々だ。

「でも、皆は町を出ても良いの?」

「私は元々旅してたわけだし、当然オーケーよ」
「俺も、いつか外に出ようとは思っていたからね」
「嫌だったらもっと前に言ってるぞ」

 当然といった三人の言葉に、なぜか満足そうな両親。

「じゃあ、旅に出るってことで、いつ出発するかな?」

 テオさんがまとめにいって、話し合った結果、私の能力の確認が終わって冒険者の仕事に慣れてきたら出発するということになったのだった。



 余談ですが、その日リリーさんと両親が仲良くなったようで、よく「良いご両親だねー」と言われるようになりました。

 違いますから!うちの両親はお花畑なだけですから!それが成り立ってるのは、それだけの実力と人望があっただけですから!
 むしろいい人はあなた方でしょうが!


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