元・宿屋の娘は美人冒険者の恋路を応援したい

紫野

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宿屋の娘は美男美女に付き合ってほしい

14 初クエスト

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「実はこれ、指定依頼なんだ」
「指定依頼?」
「受けるのに特別な条件がある依頼ね。そこにある受付から受けられるわ」

 リリーさんが指さす先を見ると、掲示板の隣に小さな受付があった。

「そう。さっき声を掛けられてね、受けてくれないかって頼まれたんだ」
「それならそうと、先に言えばよかっただろ」
「パーティーでの初依頼だから、全員が受けたいと思った依頼を受けたかったんだ」

 照れたようにそんなことを言うテオさんに、リリーさんは頬を染めて見とれている。
 きっと彼女の中でテオさんは、天使だか聖人だかになっていることだろう。いいぞーもっとやれー。


「何言ってんだ。ガキじゃないんだから、頼まれた仕事はできるだけしないとだろ」

 あっ確かに。

 ラスターさんのツッコミに、現実に引き戻される。そうか、受付のお姉さんだってできる人にしか頼めないから、軽い気持ちで断るべきではなかったか。
 そう考えると、テオさんはちょっと子供っぽいところがあるのかな?ゲームの印象とは違うところもあるようだ。

 リリーさんは、少ししゅんとしたテオさんを見て悶えている。
 あれ?ここまで分かりやすい反応してたっけ?


 そんなこんなで、初クエスト依頼は、薬師のドーマさんの素材採集への同行および護衛になったのだった。


「はじめまして、ドーマさん。テオフィルスといいます。今回は俺が護衛チームのリーダーになります」
「ラスターだ」
「リリーです」
「マリアです。よろしくお願いします」

 私たちは次の日、依頼の打ち合わせのために、依頼者である薬師のドーマさんに会っていた。
 渋いグレーヘアーに眼鏡をかけた、壮年の男性で、権威ある薬学者でもあるそうだ。いかにも頑固そうな見た目のドーマさんは、私たちを見ると苦い顔になった。

「あんたらが依頼を受けてくれるパーティーか。上級冒険者がいてパーティーを指名したはずだが、こんなに若いのが来るとは……上級はあんたか?いくら上級冒険者といえど、女子供を守りながら護衛なんてできるのか?」
「はい。俺も上級冒険者ですが、テオフィルスとリリーも同じ上級です。マリアだって守られなきゃいけないほど弱くはありませんよ」

 ドーマさんに声をかけられたらスターさんは、苦笑いしながらも反論してくれた。声には強い意志が感じられて、なんだか感動した。
 ドーマさんはその様子をじっと見ていたかと思えば、ふっと表情を柔らかくした。

「そうかそうか。どうやらおまえさんは、仲間を本気で信頼しているようだ」

 突然の変化に呆気にとられた私たちに、ドーマさんはからからと笑いながら言った。

「試すようなことを言って悪かったな。行き先は危険地帯だし、なによりベスター領内とはいえ二日はかかるのだから、信頼のあるチームでないと任せたくなかったのだ」

 私たちを見回すと、さっきまでの頑固そうな様子が嘘のように茶目っ気たっぷりに笑う。

「おまえさん等は合格だ。ぜひ、護衛に付いてきてほしい」


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